春ゆきてレトロチカ 感想

ゲーム「春ゆきてレトロチカ」をクリアしたので、感想を書きます。
ゲーム性について語ると個人的に難しいので、演出・ストーリーに焦点を当てます。

「実写映像」を用いた面白さ

本作は実写映像を用いたミステリADVアドベンチャーであり、現代(2022年)を背景としながらも、劇中劇のような形で大正・昭和(バブル期)を舞台とした物語が展開されていく。
主人公のミステリ小説家・河々見はるかが科学者の四十間永司から依頼され、四十間家にまつわる謎、四十間家で起こった事件の解明に迫る。

劇中劇パートは現代編パートと同じ役者が起用され、役者さんの演技の多彩さも楽しむ事が出来ます。また、時代ごとのメイクや衣装、小道具なども凝っており、巨大な四十間家の屋敷などは「どうやってこのセッティングを用意したんだ…」と感服させられました。もしもイラストのみであれば、時代ごとの雰囲気の違いをここまで出す事が出来なかったのではないでしょうか。このような時代劇的な演出は、映像ならではのものであり、見ていて楽しいと感じました。

また、映像ならではという事で、登場人物たちの言動や証言だけでなく、動画内の音や背景に見られるささいな気付きも後々の推理に繋がってくる点が、実写映像を用いたミステリゲームならではの面白さであったと思います。
制作者のインタビュー内で「無駄な部分は削りに削った」と有ったように、映像を片時も見逃す事はできません。意外と「この演出は何だ?」と思った所が後々大切になってくるため、何度も驚かされました。

ミステリー・謎解きが好きな人、タイトルに有るようにレトロ感のする雰囲気が好きな人にはかなりおすすめできるゲームですので、もし未プレイの方が居たらここで画面を閉じて実際にプレイするのをおすすめします。

以下、ネタバレ有の感想が続きます。


新本格ミステリ好きにはたまらない

新本格ミステリというか、叙述トリックですね。私、叙述トリックが大好きなので、特に如水の正体とか…発狂しながらプレイしていました
新本格ミステリ=綾辻行人だとおもっているので、十角館の殺人のアレとか、Anotherのあの人の事とか思い出してもう…最高でした。基本的に新本格ミステリ(叙述トリック)って結構映像にはできない部分が有るのですが、それを役者に複数役担当させる事で可能にさせているのが…素晴らしいですね。「あ~コスト削減か」と思わせつつ、ちゃんと意味が有るという。。恐れ入りました。

ラブコメかと思いきや百合かと思いきや母娘の壮大な愛の物語

あ~~~如水さん!!!女だったか…有難うございます!!!赤椿は「あきらかにこの医者あやしい…」と思っていたためちょっと驚き薄れていたのですが、如水&佳乃のバディの事をずっと闇の騎士と姫的な感じだとおもっていたので…お、お姉様。。てか、如水時代の明里さん格好良すぎる。一生見れる。あの妖艶な感じで男口調なの…???DLCでallパート明里さんバージョン作ってくれ。。絶対に買う。
そしてママなのか…ママぁ!!!ここも結構肝を抜かれた所で、「両親が殺され」的な言葉に「あ~幼少期に焼き討ちされたのか」などと思っていたのですが、まあ…娘と旦那は助かってるから、嘘は言ってないよね…。
可愛い女の子を守るお姉さん、娘を守るために正体を隠しながら奔走する母親…胸に沁みます。全部映像見返そうかと思った。現代編の明里さんも、「あれ如水だ」と思いながら見ていると、確かに同年代にしてはちょっとママ味感じますよね。。本当にこの局面は度肝を抜かれた。そして個人的にピークだと思いました。

何か増えるトキジクイーター

ただ…ただ、トキジク食者は2人で良かったなと。これは個人的な好みなのですが、大きめのトリックは2回まで。。赤椿、如水の2回で十分だったのではないかと思います。弥生さんが訳ありげに出てきた時、「実は佳乃の子孫とかなのかな…」と思ったのですが、本人なのか。とはいえ、弥生さんが赤椿を庇った理由に繋がったため、そこは良いと感じたのですが。

そもそもこの物語を見ていく上で、「不老不死ではなく、自然な死を受け入れ、子孫に遺志を継いでいく」という所がテーマなのかなぁと感じていたため、主要関係者全員が不老不死なのは…すこしズレを感じました。年齢を超えた母娘の関係は見ていて感動しましたが、やっぱり不老不死は二人で良かったなぁ。。

物語のテーマとは?

やや繰り返しとなりますが、最終的に不老不死の実・トキジクを捨て、四十間家の悪しきしきたりを終結させるためには、不老不死の2/3が死んで終わるのはちょっと…
そもそも、本編からこの物語は「不老不死の愚かさ」「自然な死を受け入れ、人間らしく生きる素晴らしさ」「復讐の愚かさ」みたいな所が結論になるのかな~と思っていたので、ちょっと外れたのが個人的に引っかかります。如水さんや赤椿には殺し合いの復讐を捨てて生きてほしかったし、如水が必死に守ろうとしていた佳乃には子孫を残し、「自然な生物の生と死のすばらしさ」とかそこから生まれる幸福とかを体現してほしかった。。

最後に佳乃(弥生)が如水(明里)に呼びかける所は泣けましたけれどもね。
演者さん…改めて凄すぎる。演技を見ていて、佳乃と如水、というか、母と娘なんだって、心の底から思ったので。

でも、せっかく佳乃の小説を如水が読んで、今如水は編集者なんだから、100年の時を経て出版されて欲しかったなぁ~~というか、明里が如水だと分かった所でもう絶対出版されて時を経て夢が叶うENDだと思っていたので何だか…良かったんか?全員死亡で。それで良かったんか?

おわりに

などと…少々心に引っかかった部分を書き出してしまいましたが、先に書いたように、映像・ミステリトリック部分は素晴らしいし、面白かったと思います。
また、もしレトロチカをプレイ済でパラノマサイトを未プレイであるならば、全力でおすすめします。私のミューズ・激マブのマダム…が居るだけでなく、本当にストーリーもシステムもとんでもなく面白いです。早く続編出ないかな。ホラーが苦手な方にもおすすめなので、ぜひ。


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