いろんな鑑賞方式を試しています
ホームページやブログで短歌のいろいろなコレクションをやっています。
こちらでも少し紹介します。
1 同じ特徴のある歌を集める
・歌を集めて鑑賞や考察を加えています。
古漬が古墳にみえるくらいには疲労していた 皺皺のレシート
吉野リリカ 「かばん」2024年7月号
人間臭いを人間魚雷と聞きまちがえて島の漁師が戦争をする
山下一路『スーパーアメフラシ』
シートベルトをシューベルトと読み違い透きとおりたり冬の錯誤も
内山晶太『窓、その他』
くしゃくしゃの紙を広げて雪山の立体地図と見間違えたい
ながや宏高2015/3「かばん新人特集号」
オカリナの音がなければ全力で爪を噛んでるやうに見えた、と
光森裕樹『うづまき管だより』
はやく家に帰ろう街の電柱がみんなアルデンテに見えてくる
虫武一俊『羽虫群』
などなど。
つむじから風は螺旋に身をくだり足にはぼろぼろのコンバース
山田航 「かばん」(新人特集)2010
年寄や子らの手をひきてあてどなく春はぼろぼろになりて去ぬらむ
前川佐美雄『大和』
空白の多いアルバム ぼろぼろの家族を螺旋の金具が綴じる
田中槐 『退屈な器』
エアコンのスイッチ押せば冷風のかはりに出づるぼろぼろの蝶
嶋田恵一 「かばん新人特集号」2015
などなど。
生まれ変はつたやうに銀河の濃き夜を子らに大きな水車が回る
渡辺松男『雨(ふ)る』2016
銀河とは誰の観覧車であろう回転をして止むことのなし
松木秀『色の濃い川』
あさがほの黒くしづもる種のなかうづまき銀河は蔵はれてあり
春野りりん『ここからが空』
ナポリタン巻く一瞬に生む銀河 君は銀河を幾度も食べる
折田日々希「かばん」2024年7月号
などなど。
2 マッチング方式
似た特徴の持つ歌をマッチング。比較鑑賞によって、より理解を深めます。
単に似ているというだけでなく、似て非なるところを詳しく考察します。
マッチング方式にもいくつかあり、交霊式、お迎え式など、場の設定を工夫しています。また、考察も、単純に私が語るのでなく、座談会の体裁をとるなど、いろいろ試行しています。
▼てのひらにおとうとの棲む丘はあり手を叩こうとすれば手をふる
土井礼一郎『義弟全史』
▲ひとりっ子のわたしがときどき来る丘のむこうにまんがの妹がすむ
杉山モナミ「かばん」98年3月
▼ひとつだけほんとの父を入れてあるマッチ箱からとりだすマッチ
土井礼一郎『義弟全史』
▲偽物のわたしを抱いて偽物のママが眠っているマッチ箱
木村友 2017・11東京文フリ:フリーペーパー
などなど。
▲わが屋戸のいささ群竹吹く風の音もかそけきこの夕べかも
ルビ:屋戸【やど】
大伴家持『万葉集』
▼頬杖をついて居眠るアパートの外に小さな世界が集う
土井礼一郎『義弟全史』
▲アンパンの幸福感をふくらます三分の空気と七分のアンコ
杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』2010
▼はらわたを開けばピンポン球ほどの水胞としてしあわせはある
土井礼一郎『義弟全史』2023
などなど。
3 虫食い方式
コレクション系の変形鑑賞。
以下の歌で「●●●」と示した部分には同じ語が入ります。
などとして、まずは作者名も隠して読み比べます。
(作者名はあとから明かす。)
たましいに●●●はなくて天国の子はもうどんな服でも似あう
亜細亜とふ思案の底のゆふやみに数知れぬ●●●擦れあふ
なめくじのつどい闌なる庭に●●●●●ってみんな寒そう(ルビ:闌【たけなわ】)
冷え症の足をさすって物語る●●●の宇宙でのあたたかさ
などなど
他にもいろんなことやってみてます。
お時間あったら立ち寄ってみてください。
高柳蕗子