伊東のTUKUNE 16話 レッドヘアーコミニュケーションズ
▼前回
https://note.com/fuuke/n/n8f0d426cd61b
▼あらすじ
進学した僕はなんとなく不良になり、恥ずべき人生を送っていた。ある日の帰り道、僕は村上紫という少女に出会う。そしてなぜか紫の兄としてアルバイト面接の同伴者にさせられ、お礼にしゃべるハムスター♀をもらった。彼女は生命を何らかの波動で視認するらしい。
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僕が髪色を変えているのは果たして「悪しき先入観」を持たれるべきだから、だと思っていたからなのだろう。
しかしながら当時の僕がそのような哲学的な概念を理解できていたとは思えない。自発的にそのような生き様を取捨選択していたのではないか……
僕が髪色を変える時、必ず「普通じゃない色」にしている。すなわちその頃の僕の世代にありがちな少し黒髪と見分けがつく程度の茶色とか、なんかそのあたりのものではないということだ。
飛び抜けて明るい金色が一番わかり易いだろうか。南極の太陽に照らされた氷河のような金色のことだ。
僕の髪も同じように太陽に照らされて、何らかの反射をすれ違う人々にもたらしたことだろう。それはある種の壁である。僕はいつしか壁を造ることに邁進していたのか。
その壁を通り抜けて、乗り越えて僕の元に訪れようとする者がいたのであれば、その訪れとは本物であると思っていたのだろうか。いや、思いたかったのだろうか。
でもそんなの普通の不良がいだいているような、本当は誰かに構って欲しくて気違いな振る舞いをしてしまっていたというような回願なんて、到底許されることではない人権蹂躙などのもとに起こされる自己実現しか招かないと僕は信じており、僕がそのような発露であったとすることには些かの不服が残る。
だから僕はひと目見て気違いだと思われるべき格好をしているべきだと思っていたんだろうし、むしろいまでもそうしている、それが今でも続いているように思えている。たかが焼き鳥屋にたむろしている僕と同レベルの気違い共と顔見知りになり、絡まれずに好き放題自分の金(あるいは保護者の金)で鳥を惨殺してかっぴらいたものを食うという行為に当時の僕は一縷の望みを見出していたのだから。
このハムスターも金色に見える。それは町が夕暮れの中にあるからだろう。明るくない中で見るハムスターはどんな色だったか。僕は忘れてしまっていた。それでも彼女は回るのをやめなかった。
▼次回
▼謝辞
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