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伊東のTUKUNE 22話 動かない身体だけのとんぼについて
▼前回
https://note.com/fuuke/n/n8d1cfd07fc5b
▼あらすじ
進学した僕はなんとなく不良になり、恥ずべき人生を送っていた。ある日の帰り道、僕は村上紫という少女を助けたことでお礼にしゃべるハムスター♀をもらった。果たしてハムスターとは「貰って」よいものなのだろうか。すると僕は自己の髪に宿った人形のことを思い出した。
▼
この、髪から生えてきた人形とはどのようなものなのだろうか。切り落とした人形を見ていると、まるで僕の手の中にあることは間違いなんじゃないかと思えるようになってきた。
だって身体しかないとんぼの人形だ。うねうね動いてこそ当然なように思えるのだが、ずっと止まっている(だってそれは単に髪が絡まっただけなんだし、僕が勝手に人形扱いしているから当たり前だ)。
僕は呪いの人形をそのへんに置いた。いつか焼こうとした。焼けばいいだろうと。
しかしいつしかその人形がなくなっていて、僕は髪を染めることにした。脱色だったかもしれないが忘れた。
まるでその時の僕とは「仕方ないか」とでもいうように人形がなくなったから髪に色をつけたような人だったように思える。
その後、僕の生活は何事もなかったかのように平穏を取り戻していた。しかしある日、夢の中に人形が出てきた。
人形は生き生きと動き出し(おぞましい話だ)、僕に語りかけてきたのだ。
「僕を忘れないで」。
目が覚めた時、僕はその夢のリアルさに震えた。夢なのに、あまりにも鮮明で、まるで別の現実を見たかのようだった。
翌日、僕の部屋の隅に小さなとんぼの形をした「影」がちらついた。
影なのでそれは単なる見間違いだろうと思ったが、その影は日々の生活の中で徐々に明確な形を成していった。
そして、まるで僕を見つめ返すかのように、その場に留まっていることに気がついた。僕は驚きと恐怖で固まった。それは、まさしく失ったはずの人形の形をしていた。
僕は恐る恐る人形の影に近づき、手を伸ばした。しかし、指が触れる寸前で、影はいつも煙のように消え去る。
ある時同じことを繰り返していたら、消えた影の下から字が浮かび上がってきた。奇妙な字体で書かれている。
「色を変えることで、見えないものが見えるようになるかもしれない」。
その文を読んだ僕は、何か大きな謎に巻き込まれているんじゃないかと思い始めることになる。
僕はその文を覚えてしまい(今こうして話せているんだから、嫌が追うにも覚えてしまったのだ)、毎日そのことを考えてしまうようになった。
やがて、僕は髪の色を変えたこと、そして人形を失ったことが、ただの偶然ではなく、何か深い意味を持っているのではないかと考え始めた。
▼次回
▼謝辞
(ヘッダ画像をお借りしています。)
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