日本ハイドロ液化水素ポンプ結社
日経スペシャル 関西リーダー列伝~キーパーソンの成功秘話~を見ました。今回はその感想の続きです。見た回は「#3 岩谷産業株式会社 牧野明次会長」。
前回
https://note.com/fuuke/n/n1abfa697abe9
番組概略を簡単に説明すると、牧野自身の人生が語られる。そこには現在岩谷が誇る商業用液化水素プラント建設に至る劇的なドラマがあった。
ハイドロエッジ
ハイドロエッジとは岩谷の商業用液化水素プラント(工場)。大阪堺市にあります。
工場の案内は牧野自らが担当するという力の入れようだった。牧野の肝いりで建設されたのがハイドロエッジ。牧野の社長就任は2000年、ハイドロエッジ運転開始は2006年。当時は反対が多かった。
奥にある液化水素のプラントでは、3000㍑/1h生産できる。これが3つある。トータルでは世界最大規模となったそう。大きさは甲子園球場と同じくらいで、国内で必要な液化水素の半分をハイドロエッジが賄っている。
単純計算で3000L×24h×3台。メンテナンスとかもあるでしょうし実際は全く違うかも知れませんが、1日に生産される216000リットルの液化水素量こそが日本に必要な半分なのだとわかりました。
ここまでの説明を、見た目的には何も資料を使わず説明しただけでなく、牧野は運搬用タンクローリーのどのポンプが非常に低音だから触ってはいけないと記者へ促せるレベルにまで認識できている。ただこれも番組の最後で述べている、先頭に立つ者に必要な「説明して説得できる生き方」に類するものであると考えられます。牧野はこれまで社長からの無茶な命令を無茶なやり方で達成してきた(要約)と話しますが、周りが納得しなければ実現できなかったはず。
水素は-253℃で液体になり、気体のときに比べると1/800の体積になるらしい。これは牧野が留学……海外の企業に出向した際に得た知識です。これがなければおそらく水素の運用なんてできたものではない。気体のままで現在と同じ生産力を求めるのであれば、甲子園球場の800倍の大きさの施設が必要となる。
ハイドロエッジと同じ大きさだという甲子園の面積は38500m²。200m×200mの大きさだとすると直径160kmの施設が必要になります。大阪を端っことすると愛知や岐阜、逆を端にすれば岡山、香川、鳥取のいずれかまでまたがる施設が必要です。その範囲にはおそらく人は住めない。雇用は充実するかも知れないけど全く現実的ではないですね。
その冷やし方の節約方法も際立っている。輸入したLNG(液化天然ガス)は-163℃の状態。このLNGを使って窒素を冷やすと-196℃の液化窒素ができる。この液化窒素の冷気を液化水素に渡しつつ、初めてここで電気クーラーを使うと、-253℃になる。
普通は電気クーラーで冷やさないといけない。しかし多分莫大な電気代がかかる。アメリカで得た知識で水素の値段を下げることに成功したということでした。
水素コスト高
ただ、それでもまだ水素はコスト高であるらしい。その原因のひとつに日本の電気代の高さがあると牧野は話す。構想として「2030年に値段を1/3とする」ということを岩谷は考えているらしい。
このコスト減のために岩谷は、現状乾燥すると自然発火してしまうし燃やすとCO2や不純物がたくさん出てしまうため何の役にも立たないとされている褐炭水素に注目していて、オーストラリアのビクトリア州にある採掘場で実証実験をおこなっている。日本政府、豪州政府、岩谷、川崎重工が協力している。
オーストラリアで褐炭を水素の原料つまり褐炭から液化水素が造れれば、国家間の取り引きで値がつかない状態が脱却できるだけでなく(安いままで良いんでしょうけど需要が顕在化してしまえば値をつける層が登場することは避けられないでしょう)水素低価格化が実現できるという。
牧野が最終的に液化水素プラントの設立に拘ったのは先代会長、岩谷創業者との関わりがデカかった。つまり叩き上げで赤の他人として岩谷に入社したけど先代の想いを遂げるほどの活躍を果たした。
次回はそちらを参照します。お読みくださりありがとうございました。