第7京浜アリオリオ
ぼくが生きているのは仮想世界のはずなのだが凄まじかった。ヘッダ画像をお借りしています。具体的には、いつもなら20kmを自転車で移動するところだがそれができなかった。運転なんて何年ぶりだよって話だ。あの変差路をよく無事に通り抜けられた。いかれてんのかって自分でも思う。
車を使ったのは背負えない物を買う必要があったからだった。QOLを上げるためにどうしても新しい寝具が必要だと気づいた。それも「クソ重い寝具」だ。今使っているセミロングが劣化して、それがはっきりわかった。これまで本来の用途ではないものを使って無理やり暖をとっていたけど限界だ。
そこでA店とB店という、ぼくが日用品を買う際に唯2つアレが使える二つの店のどちらで追加の寝具を買うか迷った。A店には約5000円で洗える寝具が売っているのを知っていた。別にそんなものを買うことはないだろうと思っていたけど、状況が変わった。こんなところでこの記憶が役に立つとは。
まずAに行こうとしたが、立体駐車場が狭い。料金体系もよくわからない。寝具一枚買うだけで駐車料金がどれだけかかるのか自信が持てなかった。そこで近くのCに車を停めて充電器を買い、その足でA店まで数キロ走って寝具を買い、重い荷物を抱えてC店まで戻る。そしてまたCに入り、別の充電器を買ってそのまま帰る――というプランも考えたがやめた。C店の駐車場はタダだけど何か得体のしれない力がぼくの中でそれを咎めた。
同時に別なことが思いついていた。別市にあるクソ巨大なE店に行くことだ。A店の5000円の寝具よりも、丸洗いできて安いものがあるんじゃないかと思ったから。
でもそんなことなかった。冬に寒い部屋で使う用とか、暖かくする予定の部屋で使う用とかバリエーションは豊富だったが、プライベートブランドですら9000円から17000円もした。自己の残額を見て冷えた。いつも適当にしか入れていないし5000前後で買えると踏んでいたからなのだが13000円しかない。セミロングとかロングにするつもり満々だったが自動的に手が出せなくなった。
結局、既存の上に載せて使う方法で我慢するしかなかった。結果的にいえば、これは多分正しかった。なぜなら洗濯機が7kg以上なら洗えるとのことだったが、それでもギリギリだったから。
セミロングやロングを買ってしまっていたら、今こうして洗い終わって干すこともできなかっただろう。素人が手洗いして部屋中が水浸しになるところだった。
道中もものすごかった。あたりが一瞬で暗闇に包まれ、車が多い時間帯になってしまった。ナビが「この先何百キロ渋滞です」と言うがそれが指示通りに進んだら渋滞なのか、道を真っ直ぐ行くと渋滞なのか、わからない難題があった。
そして当該の交差点に着くと「ここを右です」「ここを左です」とナビが言う。でももう車線変更できない場所でそんなこと言われて何ができるだろう?
車に慣れていない奴だったらパニックになるに違いない。多分恐ろしく車速が出せる地方とか、そうじゃない場所とかのタイミングの違いとかにナビ会社も対応できないから中庸を出してるんだろうが、それならカスタマイズしてくれないものか
一応300メートル手前でどの交差点をどちらに曲がるかは教えてくれるけど、その瞬間に目の前に信号がいくつもある場合がものすごくある。この信号で曲がらなきゃいけないんじゃないかと錯覚して慌ててしまう。実際にはその交差点はまだ先なんだけど。
さらに、一体どんな信号処理をしているんだという交差点もある。通常の二股の信号じゃなく分岐路が多すぎて、その全部の信号を待っているんじゃないかという感じだ。道の一本を潰すなりしないと一生渋滞が起き続ける地帯なんじゃないかと思える。その道はバスまで通るんだからなおさら。
交差点のだいぶ手前で救急車のサイレンが聞こえた。実際はかなり前から聞こえていたけど、交差点の前なら止まらなくても良いはずだ。でも対向車線もかなり車が多くて、どうすればいいかわからなかった。なのでハザードを出して止まった。すると後ろの車もぼくを追い越したり「動けや」みたいなクラクションを鳴らすのではなく、同じように止まってハザードを点けた。
何年ぶりの運転で意外なことばかり起こる。道が暗くなると信号のない横断歩道が怖すぎる。なのに止まらない車が多すぎる。減速すらしない車が多すぎる。
「赤信号をみんなで渡れば怖くない」みたいなクソみたいな常識があるけど、横断歩道に人がいたら絶対に止まらなきゃいけないって常識が守られていないのはこれと同じだと思う。近い将来carにAIが搭載されて、視覚範囲で横断歩道の両脇に人がいたのに減速すらしなかった運転者の罰則が自動でつく未来が来るんじゃないか。
買ったばかりの寝具を干していると、これからいくつか絶対に発生すると決まっているクソ面倒なこともどうでもよくなる。クソならクソのまま終わったとしても、「ここに戻ってくればいい」からだ。
この環境があるという冬に向けての心理的な安全基地を手に入れられたことで、まだ未使用状態なのにぼくのQOLは爆発的に上がっている。あとはぼくが急死しないことを祈るばかりだ。
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