気になる変化の兆し(筧)
※以下は2024年3月のメルマガ記事を引用したものです。現在とはタイムラグがあることをご了承ください
昨月、このメルマガで話題にしたのは、「変化の兆し」とそれが示唆する未来社会です。
今回は、その変化を私、筧の視点から深堀してみたいと思います。この変化の兆しとは、未来の変化を形作る要素。その方向性が今、チラリと見えはじめています。
身近な例から考えてみましょう。クラフトビールです。もはや特別な存在ではなく、コンビニでさえも手に入る時代。ここから生じたのかもしれないと個人的には感じている「クラフト〇〇」という言葉。最近では「クラフトインターネット」なんて新語も目にします。これらは、私たちがモノやサービスに新しい価値を見出そうとしている兆しでは。クラフトの概念が放つ、手触り感や手作りの温もりは、単なる経済合理性を超えた、個々の創造性と自由意志の現れなのかもしれません。
この流れは、クラウドやサブスクが日常化する中で、私たちの所有感が薄れていく中でのある種の反動としても理解できそうです。37signalsのCEO、ジェイソン・フリードが「ONCE」で提唱する「一度の購入で永久に使えるソフトウェア」、これはポストSaaS時代への扉を開く動きでは。ただのトレンドではなく、テクノロジーをどう使い、どうコントロールするか、私たちの新たな姿勢の現れであり、自由意志の具体的な発露とも深く結びついているようにも感じます。
自由意志とポストSaaSを結びつけてみれば、所有の価値の再評価や、自らがクラフトする欲求へと直結していきます。だが、東京大学の暦本教授のカメレオンマスク実験が示すように、他者に従う楽しさと自由意志の負担という二面性も。自分ひとりですべてを作り上げるのは難しい。他者の意向や仲間を集めること自体も簡単ではない。
ここに、生成AIの出番がありそうです。AIで生み出された作品は自分のものという感覚が希薄になるけれども、AIの力を借りて「自分なりに実現したい形があって、でも自分ひとりではできないこと」を成し遂げる。これにより、クラフトするハードルがグッと下がります。
自分が何を生み出しうるのかという感覚と、自分で何かを作りたいという欲求を生成AIで結びつける「クラフト感覚」が新しい感覚として認知され、それが個性や価値観、スキルの新たな表現方法となる社会が訪れるかもしれません。
◼︎おまけ◼︎
筧がとらえた未来社会イメージを画像生成AIで作ってみました!
筧 大日朗 DAINICHIRO KAKEI
代表取締役副社長
つくりたい未来は、未来思考で自分たちの想いを自分たちで創造する社会。富士ゼロックス株式会社にてソフトウエア開発に従事した後、2007年よりKDI (Knowledge Dynamics Initiative)にて知識経営リサーチ・コンサルタント。知識経営視点でのワークスタイル/ワークプレイスデザイン、R&Dプロセスデザイン、デザイン思考による新サービス開発、未来シナリオを基点とした事業革新といった変革活動の推進と支援を手掛けてきた。2012年10月より株式会社フューチャーセッションズに参画し、2019年8月より現職。人や組織の間にある変化を阻む慣行軌道・意思決定・行動変容の問題を解決する方法論やプログラム開発をリードし、創造的な組織への変革を推進する事業開発・組織開発・地域開発プロジェクトを多数手がけている。
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