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2020年から描く30年の未来編 :ダイジェスト

 『フューチャー・リテラシー -- エントロピーに抗う相互作用の歴史からヒトの未来を読み解く --』という書籍執筆のための記事の
四章【活・織】:2020年から描く30年後の未来」のダイジェスト。

本書は、「未来を読み解いて、コンセプトを紡ぎだす」方法を提案することが主題。
本節では、本書で提案する手法を使って30年後の未来を読み解いたコンセプト・サンプルを提案する。

企業のネットが星を被い、電子や光が駆け巡っても
国家や民族が消えてなくなる程
情報化されていない近未来

志朗正宗「攻殻機動隊:THE GHOST IN THE SHELL(1991)」より

4.1 では現在の常識的とされる未来を示し、4.2でそれをインプットとして未来を読み解いたコンセプト・サンプルを提示する。導出したコンセプトの是非が議論の対象ではなくそれを導くプロセスが重要でだ。

もし4.2で示したコンセプト・サンプルが読者にとって既知の常識であるならば、それを4.1に組み込んであらたなプロセスを組み直していただきたい。

4.1 計画されている30年後の「未来の種」

 各所で計画されている「未来の種」について紹介。
(4.2節で未来を読み解くための前提・背景として整理。計画されている未来は、現状の延長線で比較的容易に描くことができる。)

現実世界にあるすべてのヒト、場所、モノをデジタル世界=デジタルツイン(デジタルの双子)に投影するミラーワールドでは、合わせ鏡のように現実世界とデジタルツインが相互作用し、爆発的なスピードで共進化を繰り返す。  

デジタルツインとサービスネットワーク

4.1.2 計画されている未来サービス2050

ヒト、クルマ、ロボット、都市、家、工場、産業がミラーワールドに組み込まれていく。計画されている未来サービスの例を示し、それがもたらす変化を概観する。

4.1.3 ミラーワールドをけん引するメディア
:スマートグラス

当初は、ごくわずかな利用者しか注目せず、周囲のほとんどの人たちにはなぜそれを欲しがるのか理解できない。ところが一旦普及すると、手足と同じように手放せない存在となる

そして、

  「未来を変えるヒントは必ず今ここにある」 


4.2 コミュニケーション・インフレーション 
 -- 「知」の断片化がもたらすヒトの「未来」--

『前編:
「相互作用」と「コミュニケーション」の歴史
一章 【範・縁】:「ミクロ・マクロ・ネットワーク」138億年』
を基礎知識として

『二章 【型・編】:未来を読み解く散策法』
を活用して、
30年後の未来を読み解き、コンセプト・サンプルを構築する。

未来を読み解く際に、特に活用しているのが次の2つ。

文化とヒト、集団規模とコミュニケーションの相互作用が編む共進化のサイクルが集団に優位な文化をうみ、集団の規模を拡大し、新しい文化の創造がコミュニケーション能力を高め、文化とヒトの共進化を加速する。相互に「依存」し「促進」しあう、集団規模・コミュニケーション能力、文化、ヒトの共進化サイクルが驚異的なスピードで加速する。

誤解をおそれずに単純化すると、
『集団の規模を大きくしてコミュニケーションを活性化すると、ヒトが進化して新たらしい文化が生まれる。その逆も真。』ということ。

近年は、ヒトの遺伝子による進化よりも、文化の記憶=文化遺伝子(ミーム)によるヒトの進化が顕著。

文化の対象: 道具、技術、知識、ノウハウ、社会習慣・規範、宗教、芸術

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルは、アイデアやコンセプトを構築する際のチェックリストとして利用。

未来を読み解く際に特に注目しているのは、それが「孤独」ではないということ。

一つは、
それが登場するためには、原因と歴史があるということ。
今、何かが起こっていて、それは過去の何かとつながっている。
そういう流れを感じ取らなければいけない。

一つは、
それが単品で動作しているのならば、いずれネットワークとして、生態系としてフィードバックループを形成するようになるということ。

例えば、「アレクサ」が単品で登場しただけでは、まだまだ足りないように思う。「アレクサ」どうしがつながって、その向こう側の人たちと間接的にコミュニケーションするようになって、初めて「アレクサ」の生態系ができあがる。

一つは、
それが既存のネットワークをプラットフォームとして動作しているということ。そして、それは過去からの歴史の上になりたっている。

ヒトと文化に大きな影響を与えるような「未来」は、たくさんのモノたちとのつながりのなかで誕生する。

4.2.1 課題設定
:情報世界におけるヒトと文化の共進化

記憶能力を「情報世界」にアウトソースしたヒトは、次に何をアウトソースするのだろうという未来のお話。

まずは、最初の課題設定。
「情報世界」を産業構造にみたて、「情報世界」におけるコミュニケーションを活性化させるための課題を設定。

課題1:
ヒトの連想記憶をメタファーとして、「情報世界」におけるヒトのコミュニケーション能力(=情報探索能力)をたかめる道具(情報流通サービス)を提案する。

4.2.2 連想探索を支援する
:コネクティブ・ブレイン

 4.2.1 の「課題」からスタートして、ミンスキーの連想記憶のモデル(知識のライン)を参考に、アイデアを言葉(ネームとクレーム)で表現。

・ネーム(呼称): コネクティブ・ブレイン
・クレーム(短文): 
 「情報世界」におけるヒトたちの営みにより変化するコンテンツ間のつながり=連想記憶と、それが描く巨大な脳をヒトの情報探索に活用する。

続いて『コネクティブ・ブレイン』コンセプトを提案し、製品を具体化するためのヒントを記載。

『連想探索を支援する コネクティブ・ブレイン』コンセプト:
 複数のヒトの連続するコンテンツ閲覧を「コンテンツ間のつながり=知識ライン」として記憶し、知識ラインをたどる間接的なコミュニケーション=連想による情報探索を可能とする情報流通サービス。

4.2.3 課題設定:次世代の思考を支援する

 文字によって論理的思考を育てたヒトが文字を読まなくなったとき、どのような思考を育てるのだろうというお話

2番目の課題設定。インターネット、SNSが普及した現代、長い文章を読めなくなり、深く思考ができなくなったことに注目。ヒトの未来の思考は「同時思考(=時分割マルチタスク思考)」へと向かっていると仮定し、

同時思考(時分割マルチタスク思考):
 『コンテンツを分節・断片化して時分割マルチタスクで瞬時に情報を判断・選別して記憶し、同時並行的に切り替えながら、ごく短時間の非線形な論理を働かせて思考する』

新しい時代のヒトの思考法とコミュニケーションを支援する道具を課題として設定。

課題2:
○メタコンテンツ編集環境

 分節・断片化と統合・編集を時分割で繰り返す同時思考を支援する「メタコンテンツ編集環境」を提案する。

○メタコンテンツの単位コンテンツ
 「メタコンテンツ編集環境」の前提となる、扱いやすい「単位コンテンツ」を提案する。

4.2.4 非線形思考を描く筆とパレット:メタプロセッシング

4.2.3 の「課題」からスタートして、『ヒトの思考の組み立て方』モデルを参考に、コンテンツの分節・断片化を標準化する情報単位として情報ブロックを定義して、

情報ブロック:
・デジタルネイティブにとって、集中して作成、閲覧できる情報量のコンテンツの単位

・コンテンツとして意味をなす程度に分節・分断化する
 - 1段落のテキスト
 - 1カットの図、挿絵、動画
 - 1フレーズの音楽

アイデアを言葉(ネームとクレーム)で表現。

ネーム(呼称): メタプロセッシング
クレーム(短文):
 ヒトの分節・断片化と統合・編集による非線形な時分割マルチタスク思考を、情報ブロックを単位とするメタコンテンツ編集手段としてアウトソースする。

続いて『メタプロセッシング』コンセプトを提案し、製品を具体化するためのヒントを記載。

『情報ブロック編集を支援する メタプロセッシング』コンセプト:
情報ブロックを単位として作成された既存のコンテンツから使える情報ブロックを借用して修正、自身の情報ブロックを追加しつつ「分節・断片化」と「統合・編集」を繰り返しながら新たなメタコンテンツを作成することを支援する情報流通サービス。

4.2.5 「仮想世界経済」の誕生

衣食住にお金がかからず、「リアル世界」での収入が極端に低下した未来の経済はどのように変化するのだろうというお話

「課題設定」「アイデア編集」「コンセプト編集」というアイデアプロセッシングの手順を崩して、直感により設定した課題(仮説)にいたる物語を紡いでみる。

課題(仮説)設定:
「仮想世界」の経済コミュニケーションを循環させる

資本主義社会による低賃金化と低コスト化は「リアル世界」を消費低迷へと導き、メタネイティブたちによる、

 『生きがいや、レクレーションや、贅沢は「仮想世界」で!』
というライフスタイルが誕生する。

メタネイティブたちによる「仮想世界」経済とはどのようなものになるのか?

4.2.6「仮想世界」経済から「マルチバース」経済循環へ

●「仮想世界」経済

 ヒトは欲求の充足を求めて働き、遊び、行動する。「仮想世界」は衣食住と分離した欲求充足世界であり、自己実現と承認、娯楽を利益として求めて生活する。

「仮想世界」の住人は、希少性や芸術性、娯楽や実験環境、労働力の価値をトークンに翻訳して循環させる。

●「マルチバース世界
 (リアル世界、情報世界、仮想世界)」経済

 「リアル世界」、「情報世界」、「仮想世界」の中に小世界が重ねられ「マルチバース世界」となり、ヒトは時分割で世界にまたがって存在してゆく。
衣食住をとっぱらうと、リアルも含めた「マルチバース世界」全体が仮想になっちゃうというお話し。

「マルチバース世界」経済圏では、ヒトの有限時間の獲得にこそ価値がある。

「マルチバース世界」では、「リアル世界」の国家貨幣も、「情報世界」のアクセス数や評価も、「仮想世界」が発行したトークンも欲求充足度=共通トークンに翻訳して流通し、マルチバース世界や個人の仕組みや行動を調整する「欲求充足経済」を展開する。

欲求充足経済:
 「マルチバース世界」にまたがり、欲求充足の全体最適を求めて多元世界の経済が絡み合い、主従を変え、経済ネットワークを多重にはりめぐらし、その形を変え続ける多重動的経済。

 2021年、ヒトは交通と通信のインフラの発展により物理空間の距離を超えてコミュニケーションすることにより、グローバルな文化を形成した。

 2050年、ヒトは自身の興味によって「マルチバース世界」を切り替えて時分割マルチタスクでコミュニケーションすることにより所属する集団を多元世界へと広げ、「欲求充足経済」による新たな文化とヒトの共進化を加速する。

「フューチャーリテラシー」全体目次はこちら
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未来創造につながるコミュニケーションの歴史編

物理世界では「相互作用」,生命世界では「コミュニケーション」が「個」をつなぎ,ネットワークのパターンを描く。相互作用,コミュニケーション,ネットワークの視点から宇宙・生命・社会のビッグストーリーを俯瞰し,未来を読み解く材料とする。


未来を読み解くためのアイデア・プロセッシング編

未来創造の方法について、推論・類推の方法、オリジナルモデル、アイデアプロセッシングについて解説。






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