未来を読み解くための類推
「類推」とは、「類似」にもとづく思考であり、知っていることを知らないことに「喩えて」考えることだ。それ以前には全く気づかれることのなかった構造を創発する認知メカニズムであり、創造的活動の源泉となる。
●類推
類推を形式的に説明すると次のようになる。
そして、脳内での「類推」のプロセスは次のように進められる。
「類推」は、ヒトの生活のさまざまな場面で、経験を再利用することにより、新たな知識の獲得や発見、仮説の生成、物事の再吟味などにおいて、強力なパワーを持つメカニズムだ。喩えて「対応づけ」られる「ターゲット」の理解、解決、学習で利用され、文学、哲学、科学などの学問、教育、法律、政治、ビジネスなどの社会生活の中でも用いられる。
●「喩え」て考える
「アナロジーとメタファー」は、学問としては修辞学に分類されるが、本書では、「類推」において「喩えて」考える際の、喩え方として扱う。
ヒトは「未知」のものを発見したときに、足りない「語彙」を補うために「類似」を探し「喩え」により理解する。
〇「アナロジー」で喩える
「アナロジー」は直接喩えることで、「AはBのように~だ」という具合に使う。AとBの構成要素と対応関係が明確な場合に使い、よく私たちが使う「喩え」はアナロジーで、似たものどうしを見比べて、連想により考えを深める。例えば、電流と水流のアナロジーでは次のように対応づけられる。
「アナロジー」の組み立てるときの思考を追うと次のようになる。
「似ている」と思うにも、「借りてくる」ためにもそれぞれの知識がベースとなる。「当てはめる」際に、すべての要素が具体的に対応づけられるときもあれば、一部だけ対応することもある。例えば、『植物が水を吸い上げる水流を電流に対応させると何になるだろう?』と連想を続けていくと対応関係がゆらぐ一方で「イメージ」がふくらみ、新しい発想を生み出すこともある。
〇「メタファー」で喩える
「メタファー」は暗喩であり「イメージ」との対応で喩える。「人生とは旅だ」という喩えで「旅」は具体的な何かをさすのではなく、「旅」にいだく「イメージ」を共有する。
普段使っている言葉はすでに知っていることしか表現できない、アイデア発想のためには「言語の先取りとしてのメタファー」や「絶対的なメタファー」を飼い慣らしておくことが有効だ。
「喩え」を道具として「未知の未来」を読み解くときに、極力言葉にしないようにして「イメージ」を膨らませ、言葉=論理におとして「実体」を与え、「メタファー」と「アナロジー」と「実体」とのあいだを行き来し散策しながら考えをまとめることで、飛躍的に発想を広げることができる。
〇連想
「類推」に似たものとして「連想」がある、「連想」は複数のカテゴリーを意識せずに渡り歩く。
ヒトは、「連想」により、一瞬にして知識の中からカテゴリーを意識せずに関連するモノを検索する能力がある。
〇ヒトエンジンの活用
ヒトは、経験の中から、導き出すときに都合のいい特徴だけ抜き出してくるフィルタリング能力をもっている。この曖昧さを発揮するのが生活の場であり、曖昧性を排除しようとするのが数学や科学だ。
フューチャーリテラシーでは、ヒトエンジンのフィルタリング能力を積極的に活用して未来を読み解き、後に科学的なロジカル思考によりその道筋を確かなものとする。(後者は、本書の主題ではなく、ビジネス本なりですでに習得している、もしくは習得することを前提とする)
「未知の未来」を読み解く際に「喩え」や「連想」は強力な道具となる。「喩え」の能力が実世界で生存戦略として選択される前提には、ヒトが住む世界が類推可能なほど同じリズムを刻んでいるということだ。
本書「フューチャー・リテラシー」は「未来」を読書に喩えてイメージする試みであり、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルは喩えて考えるのためのガイドライン(補助器具)、前編は過去の物語を「イメージ」に落とし込み「喩え」の語彙を増やすためのサンプルだ。
そhして、「驚くべき事実」と「仮説」を設定しネットワークに喩えて未来を読み解くツールが、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルだ。
参考書籍:
[1] 鈴木宏昭(2020), "類似と思考 改訂版", 筑摩書房
[2] 松岡正剛(2019), "先夜千冊エディション 編集力", 角川ソフィア文庫
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