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「未来を読み解く」ためのお勧め本/『人工知能のための哲学塾 :未来社会編 〜響きあう社会、他者、自己〜』

今回は、「「未来を読み解く」ためのお勧めの11冊」追補本を紹介します。

はじめに

2020年に出版された本なのですが、ChatGPT、Midjourneyが注目され、「個」としてのAIが急加速する今日、2023年だからこそ、立ち止まり、「AIを他者」としてとらえ、新たなインフラとして、AIとヒト、AIどうしのコミュニケーション・社会について考察することが必用となる。

本書は、AIのコミュニケーション・社会を考えるためのヒントがちりばめられており、他に類を見ないガイドラインとしての必読書となるでしょう。

(Amazonの2件のテキスト評価は、★1と★3ですが、これはガチの哲学書として読んではいけない。むしろ、哲学や人文科学などになじみのないAI研究者や応用を考えている経営者・技術者、学生などが、これをきっかけとして思考を発展させるための入門書としてとらえるべきです)

研究者や技術者は、それを深めるために対象を「個」としてとらえがちなのですが、世の発展はそれをネットワーク、コミュニケーション、社会ととらえたとき、爆発的に進化することになります。

●多分野の学説を哲学でつなぐ

 哲学といってもかまえる必用はありません。平易な言葉で記述されており、理解しやすい。社会学、文化人類学、心理学など、幅広い学説と人工知能の間をつなぐ「ハブ」として西洋・東洋哲学を用いていて気軽の読み進めることができます。

●「理解」「社会」「文化」「愛」「幸福」の五つのテーマを通じて「AIとのコミュニケーション」を考える

 「他者としての人工知能、関係性」という視点から「人工知能のコミュニケーション・社会」とは何かについて考察を進めていく。そして、つど「計算への還元可能性」にたちかえり、マルチェージェントや社会シミュレーションなどへ置き換えて議論を進めています。技術系の人間としては、ここで現実にたちかえることができ、ふと安心してしまう自分がいます ^^;

●「他者」としての人工知能、関係性を考える

 「人工知能が人間を受け入れる」とは、人間と人工知能の間に、ある循環が形成される状態だという。「人工知能の個というローカルな内部構造」と「社会の大局構造」がどのように循環するか。グローバルなものとローカルなものが循環的につながっているという動的な複雑系の思想を人工知能社会へとつなげます。

●人工知能における文化と知識は何か

 「人工知能にも寿命があるから、知識や経験を文化として残した方がいい」という。ふとここでページをめくる手が止まる、「人工知能にも寿命がある」のか?と。たぶん「寿命がないものとして孤高の道を進む人工知能」と「あえて寿命、アポトーシスを設定することにより文化を介して集団とコミュニケーションしながら社会をつくる人工知能」に分岐していく道があるのだろう。など、つど立ち止まり、読者も「問いを設定」しながら、頭を整理しながら読み進めていくことが楽しい。

●本文に続く、三宅さん、大山さんのトークが興味深く楽しい

 本書の最大の読みどころはラスト、著者2人のトークにある。

「歪みがあることで個としての人工知能のほうにフィードバックされた、そこに個としての人工知能の変容が現れる。それがインタラクションによって全個体と場に還元される。これは新しい人工知能の創り方かなと」
「人という個がインタラクションする場そのものが人工知能となる」
「人間同士がインタラクションする状態を、僕は人工知能によって冷ましたいと思っている」

次作では、インターネット、googleやSNSによるヒトのコミュニケーションや思考、文化、社会の変化をもとに、AIをインフラとすることにより変容する未来についての考察をぜひお願いしたい。

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