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フューチャーリテラシー :「可能性の未来」を読み解くために

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本マガジンでは、2022/12/12に出版した、『フューチャーリテラシー Futures Literacy :過去から未来へ,「可能性の未来」を読み解くために』についての情報を掲…
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2021年3月の記事一覧

●生物の実験場となったカンブリア爆発はなぜ起こったのか

 宇宙と地球と生命の相互作用が大量絶滅と突然変異のうねりをつくり、数十種だった大型の生物がいっきに1万種以上に広がる「カンブリア爆発」が起こった。 ●急激な生命進化の3つのパターン  急激な環境変化に伴う生命進化には3つのパターンがある[1]。  カンブリア紀直前の1.5億年間に3つのパターンのすべてが絡み合う急激な環境変化が微生物を襲った。 ●7~6億年前: 全球凍結と超大陸の分裂が引き金となる生命の大進化 ■全球凍結  銀河衝突による超新星爆発の影響で磁場が弱体化し

●脳誕生への道:微生物のコミュニティ

 38億年前、核のない単細胞の原核生物=細菌(古細菌、真正細菌)が誕生した。最も単純な生命である細菌はコロニーをつくり、細菌間のコミュニケーションにより協調して環境に適応しながら生存競争を生きのびたのだった。 ●細胞間での最初の情報交換=遺伝子交換 生命初のコミュニケーションは、細胞間での遺伝子の交換だ。細菌は、細胞分裂により増え続ける。細胞核が存在しないため、細菌間での遺伝子の交換が発生しやすく短期間に遺伝子が伝搬する。遺伝子の交換は、細菌の接合による交換だけでなく、死に

分子生成の連鎖が、循環する地球システムをつくった

 水のないドライな地球に降り注いだ大量のウェットな隕石がきっかけとなり、化学反応の連鎖がはじまる。分子生成の連鎖はやがて、循環するダイナミックな地球システムをつくってゆく。 ●ドライな岩石惑星「地球」と月の誕生 :45億5000万年前 大気も水ない鉄とケイ酸塩を主成分とするドライな岩石惑星「地球」が誕生、その直後の微惑星との衝突により月が生成される。鉄などが重力で沈み込み表面を固い地核で覆われるが、重力的に安定した均衡状態となり磁場は発生ていない。 ●ドライな地球にウェッ

産業革命はなぜ18世紀にイギリスで始まったのか【後編】: 情報ネットワーク・黒死病・イギリス

  領土の限界という【巨大な壁】の内側であがきながら、封建制度、重商主義を基盤とする交通ネットワークが商業ネットワークを、商業ネットワークが情報貨幣ネットワークを支え、初期の情報ネットワークが各ネットワークをつなぎ、相互作用しながら拡大して、産業革命を支える統合ネットワーク・プラットフォームを準備する。 ●【巨大な壁】の内側で広がる情報ネットワーク〇膨大な利益を生む錬金術、情報貨幣ネットワーク 異なる商品価値を仲介する必要から生み出された貨幣は、重商主義を経て交換を大規模化

産業革命はなぜ18世紀にイギリスで始まったのか:封建社会の壁と交通・経済のネットワーク

 上下水道や舗装道路など進んだ技術を利用していた古代ローマが産業革命を起こさず、18世紀のイギリスでなぜ産業革命という急激な変化が起こったのだろうか。  古代ローマや18世紀のヨーロッパ諸国においても奴隷などの安価な労働力を有する国々は、機械による自動化という発想すらなかった。一方、18世紀の世界の中心だったイギリスは「高賃金の労働者」と「低コストのエネルギー(石炭)」を保有していたため、蒸気機関などを使った機械による自動化のメリットがあり、後に産業革命と呼ばれる急激な発展

古代都市を循環させる貨幣情報ネットワーク

 集落から古代都市へと人口を広げたとき、人々の分業をつないだのは言葉や文字によるコミュニケーション、そして新たな収穫の分配の仕組みだった。 集落の拡大と食糧の分配 ヒトが狩猟採集を家族から集落で協力して行うようになったとき、家族のために持ち帰る獲物は集落の共有するものとなった。やがて農耕生活により集落の規模が大きくなり分業が広がるようになると、首長が調停者となり作物を集め再配分する習慣、争いを避け友好を深めるための部族間での贈り物を授受する習慣が生まれる。 都市国家を支え

国家の形成に向けた、専門分業と集落間の生存競争

 ヒトはコミュニケーションによりつながり、分業して助け合い仕事を効率化するコミュニティ=分業ネットワークの形成を生存戦略とする。仕事が複雑化するにつれて分業が進み、コミュニケーションの技術と文化を編みだし、周囲の統合と専門分業のリズムを刻みながら巨大化してゆく。 ●家族社会の形成 :440万年前~ 無毛の顔と白目により表情をゆたかにして感情と情愛を交換するコミュニケーションにより、育児と採集を分業して助け合う家族を形成する。 ●草原への進出と集団防衛 :370万年前~ や

1万年前になぜ農耕民が誕生したのか

 小規模な狩猟採集民が農耕生活に移行し、人口を巨大化していったのは、気候変動などにより定住生活に誘われ、そこから抜け出せなくなった定住化と農耕の罠にはまったためだった。 ●気候変動と農耕コミュニティの形成 【豊かな狩猟採集民】 1万5000年前までのヒトは、0~20人程度の小集団で獲物を追って移動する狩猟採集により生活していた。最終氷期の1万4000年前頃、気候が湿潤になるにつれて、森がそばにあり海・河川・湖が近く天然の動植物が豊富な地域に定住し、周囲の獲物と植物を採集す