カンコツがある限り・・
カンコツを作業現場から一掃することは、自社の独自性を失う事と思考するリーダーは多い。機械の確度・精度が現状とはけた違いに低かった時代に、発展する自動車等の部品が求める確度・精度をカンコツで獲得された現場の職人の皆様の努力は称賛に値する。
金属は温度が変化すればその体積が変化する。そして変化するだけでは無く、化学的反応性も変化する。被加工物と刃物との凝着具合が加工の進行とともに変化し、その状況に応じて手動旋盤・フライスの刃具の切り込み具合や接触確度を微妙に変えていく妙技は、正にカンコツと言って良い。俗人の極致で、教えて伝えられる技術では無い。故にカンコツによる仕上がり形状が差別化要因となり、受注獲得に直結した。
この工作機械の物理的「くせ」は現時点でも変わるものでは無い。しかし、そのカンコツ制御をNC制御に組み込み、更にはAI制御に落とし込むことによって、定量化された自社技術の獲得に繋がる。「時間が無いから」「やり方を変えることをTier上位が認めないから」という言い訳は、自社の未来を失う能動的意識であると理解するべきである。職人の経験値全てをつまびらかに定量化することで、現状の他律機能の根源を知ることが出来る。他社と共有するのは他律機能が生み出すアウトカムズであって、要素技術では無い。要素技術は他社との差別化の根源であるから、それは自社に閉じておけば宜しい。