「写真」と「絵画」のはなし
こんにちは。
二日です。
前回は2回に分けて、「好きなもの」について話をさせて頂きました。
今回は、タイトルの通り、「写真」と「絵画」についての話を書いていこうと思います。
初めに言っておきますが、私は趣味で写真を撮っていると言っても、ただ写真を撮るのが好きなだけで、どんな写真家がどんな写真を撮っているとか、「良い」写真がどんなものかとか知りませんし、なんなら所謂有名な写真家という人が誰なのかもよく知らないというくらいには、写真に関して無知ですし、絵画についても同様に、というか絵画の方がもっと知らないことが多い分野です。なので、これから書くことは、無知な私なりにあれこれ考えていることであるということだけ頭の片隅に置いて頂けるといいかと思います(それと、途中で「ですます」と「だである」が混ざっちゃってます。違和感を与えるかもしれないので先に謝ります。すみません)。
大学生になって写真を撮るようになってから、いや、それよりももっと前、小学生の頃、まだ私の将来の夢が画家になることだった頃から度々考えていたことなのですが、「写真」という表現媒体と「絵画」という表現媒体は、どちらが「優れている」のか。かなりの愚問です。もちろん答えは、「みんな違ってみんないい」です。普通に考えれば。
ですが、私はそう思ってはいても、そうではないような気もしています。結論から言うと、「絵画」の方が「優れた」表現媒体だと思います。理由は、「絵画」の方が表現の自由度が圧倒的に高いことにあります。「写真」で表現できるものは、どこまで行っても「ノンフィクション」、「実際に存在する景色」まで。それに対して「絵画」は、実際の景色を描くこともできれば、空想の世界を描くこともできる。さらには現代アートのような一見すると何を描いているのかわからないものから、それこれ「写真」のような超リアルなものだって描ける。「写真」で出来ることは、極論ですが、「絵画」でもできるのです。
それに作品の価値という面で見ると、フィルム写真だろうとデジタル写真であろうと、「写真」は全く同じものを何枚でも複製可能であるのに対し、「絵画」は全てが一点ものであり、仮にオリジナルとかなり似せたものを描いたとしても、そこにははっきりと価値に差が生まれる。今はデジタルでイラストを描く人も増えてきて、一見全く同じものが複製可能かのように感じられるが、逆にデジタルイラストの文化が進んだからこそ、データそのものに価値が付けられるような時代になっている。
さらには作者のオリジナリティ、独創性という点においても、「絵画」のほうがよりはっきりとそれを反映させることができるだろう。数ある色の中から作者自らが選んだ色は、それが作者のオリジナリティに直結する要素であり、筆や鉛筆、タブレット用のペンの動かし方には作者のクセも現れる。何人もの人に同じモチーフで描いてもらった時に、その全てがどの絵とも全く異なるものになる。他方、写真においては、色んな人が同じモチーフで撮影したとしても、そこに写されるモノの色や形は変わることがなく、個人によって変わる要素と言うと、下手したら構図くらいしかないのではないかと思う(言い過ぎかもしれないですが)。ちなみに「写真」は、カメラで撮って即完成ということはほとんどなくて、多くの場合撮影データを編集(色味やコントラストなど様々なパラメータを調整すること)することで、より綺麗な写真にするのですが、そこで「人それぞれにオリジナリティのある雰囲気にできる」という考えもできるのですが、個人的には、この「編集」という行為を行った時点で、純粋に「写真」とカテゴライズすることにはかなり抵抗があるので、ここでは別物として扱います(このあたりのテーマでまたnote書けそうですね)。
このようなことから、私は表現媒体として「写真」より「絵画」の方が優れているように感じてしまうのです。
それに私は、もともと(と言っても小学生の頃ですが)絵を描く方が好きでしたし、絵の仕事に憧れていたので、絵を上手く描けるようになりたかったのですが、その時や、その時の感覚がまだ少し残ってる今でも、「見たまま」を一瞬で紙に起こすことができる「写真」が、ズルいものだと思っている節があり(もちろん絵は見た通りに描くことが全てではないことはわかっているのですが)、そういう印象からも、「絵画」の方が「上」(本当は「上」も「下」も無いのに)だと思ってしまうのかもしれません。
そうは言っても、やはり見たものをそのまま写せて、綺麗に撮れたときの喜びや楽しさもあるので、写真は写真で面白いし、そう思っているから大学でカメラを始めたわけですし、そこからしばらく写真を趣味で続けているわけですが、前にも描いたように、大学3回生になって、「作品」というものにこだわるようになると、一時期写真で「作品」を作ることに対して、後ろめたさのようなものを感じていました。それは先程述べた、写真の「ズルさ」からくるもので、やはりの写真の特性上、いくら写すものを意図を持って変わったものにしようと、セッティングさえ完了してしまえば、シャッターボタンを1回押すだけで、一瞬で「画」が出来上がってしまいます。それが、なんかこう、「作品」を作るのにラクしているように感じられ、「写真」を撮る行為が「絵画」を上手く描くための練習をサボる怠慢な行為のように思えて、そのことが引っかかっていました。「どうせ実際の景色や見たままの風景以外のものを撮るなら、『絵画』の練習をして『絵画』で表現した方がいいんじゃないか」という感じです。
ですが、ある写真展でお話させていただいた方(その展示に出展されていた)がおっしゃられた言葉によって、「写真」で表現することへの「後ろめたさ」に対して、ある意味開き直ることができました。その方は、「自分は絵が描けたら、写真ではなく絵でこんな作品(その時展示していたその方の作品)を作っていただろうが、絵が上手く描けないからカメラをやっている」とおっしゃっていました。別になんてことはないのですが、当時の自分には「許せていなかった感覚」を持つ人が目の前にいて、そう考えても良いんだと思えました。
ここでやっと「写真」と「絵画」を表現媒体としてある程度対等に考えられるようになったのですが、それでもまだ多少は「絵画」の方が〜みたいな考えを持っているので、「写真で出来ることは絵画で出来る」という考えは抜けません。「写真」が「絵画」に比べて優れている「何か」を見つけて、それを活かした表現方法でなければ、「作品」としての「写真」は、一生「絵画」の下位互換のままな気がしました。
では「写真」にあって「絵画」には無いものとは何なのか。それは、当たり前ですが「現実にその景色が存在していたという事実」です。
「絵画」で表現されているものは、どんなに綺麗なデッサンや風景画であろうと、あくまでも「人間」というフィルターを通した「空想」であり、実際のそれが、その色で、形で存在していたという証明ではないのです。「絵画」の「長所」である「『想像次第で』どんな物でも描ける」ということが場合によっては「短所」にも捉えられるように、逆に「写真」の場合は、短所である「『現実にあるものしか』表現できない」ということが「長所」になるのです。つまり「写真」の最大の強みは「リアルさ」、「真」を「写」し出せる点にあるということです。
以前書いたのですが、私は「そのまま」を写した「写真」より、コンセプトやメッセージ性を持たせたり、「普通」なら存在しない状況をセッティングして撮った写真で「作品」を作ることが好きです。それは、そうすることが、先程述べた「写真」の「強み」を活かせる方法だと考えているというのが1つの理由としてあるからです。「ただ綺麗なもの」は「絵画」できるのだから、「普通だと存在しない」状況を「写真」として、「現実に存在した証明」として「作品」にすることで、受け手に、より「生々しさ」や「不思議さ」を与えることができると思っています。「絵画」が「空想」だからこそ様々な強いメッセージを届けることができるように、「写真」にも、「事実」だからこそ伝えられるメッセージがあると思うのです。
まぁ、長々と「写真」と「絵画」の比較を書いてきましたが、最終的に行き着くところは、結局「みんな違ってみんないい」になるのですが、私は、人間が何かを表現する時に、その表現媒体の「強み」は何なのかを考えて作品にすべきだと思うし、脳死で「1番手元に近いところにあったから」と言って作品にするのは、表現者ではないと思う「こともある」のです。別にそれが絶対だとは思ってないし、そうしている人を否定したいというわけではなく、まぁ何というか、「自戒」みたいなものですかね。
また「ブルーピリオド」からの出典になるのですが、ある人が主人公に対し「それは絵画でやる意味あるのか。油絵の具で、平面で、手仕事で、このテーマをやる必然性とか考えたことあるか」と言います。私はこの言葉を読んだときに、すごくハッとさせられたというか、もっと媒体のことを考えるべきだなと思い、それを「戒め」としてあれこれ考えているというわけです。もしかしたら、この「note」のように「文字」による表現にも、「ふさわしい」表現方法があるのかもしれないですね。
というわけで、またこんな文章にお付き合い頂きありがとうございました。今回は大きく括ると芸術分野のもので比較したり、方法について書きましたが、特に「方法」に関しては、もっと他の分野にも、「なぜこの方法を選ぶのか」を考えるべきところがあるような気もします。また色々考えていきたいなと思います。
次回はコミュニケーションにについて書こうかなと思います。もちろん写真に関わる形で。
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