【あれこれ】7SEEDS 「学び」の場は世界そのもの
こちらには初めて寄稿をします。
note内では「菜のはな書房」というアカウントで不登校ラボに参加しています。この場では森絵都さん、時雨沢恵一さんの取材を企画しました。その記事は本名の杉田菜子(スギタ・ナノコ)名義となっています。紛らわしいので本名の方で覚えていただいて構いません。
他の皆さんの寄稿で、ロックマンの話やヤバイTシャツ屋さん、キノの旅などなど、いろいろと支えになってきたものが語られていたので、私も何か知ってほしいな~と思い筆をとりました。
今回ご紹介したいのはこち!!
田村由美先生の漫画「7SEEDS」(小学館)です。
田村先生は最近、「ミステリと言う勿れ」がヒットしたので、ふだん漫画をそれほど読まない人もこのタイトルは知っているのではないでしょうか。しかし、お伝えしたいのは「ミステリ」の方ではなく、その前の連載「7SEEDS」の方です。なぜか。この作品こそ、「学びとは?」というとてつもなく大きなテーマを含んだ、そして「不登校」に対するエンパワメントになりうる作品だと思うからです。
あらすじを紹介すると、隕石の衝突で滅亡することがわかった地球で、人類存続のためある計画が動きます。優秀な未来ある若者がコールドスリープで眠らされ、地表の環境が安定したときに目覚めさせられる、「7SEEDSプロジェクト」が実行されます。
壮大すぎるんですが、わかりやすく言うと、「自分たち以外いない地球でサバイバルしながらなんとか生き延びていってね」という計画に選ばれてしまった登場人物たちが、絶望したり悩んだりしながらも、協力してただ『生きる』話です。
…おわかりいただけたでしょうか。この作品世界には「学校」「会社」「家庭」などという文明的で小洒落たものは存在しません。気候も地盤もワケのワカランことになっていますし、なんか大きな食虫(食人?)植物やトカゲっぽい生き物やミミズなど、「平穏な世界」にはおよそ存在しないものがわんさかいます。そんな中で、「前の世界」(日常を送っていた頃の社会)で培ってきた技術や知識でなんとかやっていこうと、登場人物たちは努力していきます。
ちなみに、7人(+ガイドと呼ばれる元公務員のまとめ役)でひとつのチームとなっていて、それぞれ春、夏A、夏B、秋、冬のチームと名づけられています。タイトルの「7SEEDS」は、そのまま作中の「7SEEDSプロジェクト」を表しています。…なんで夏だけAとBがあるのかって? それはぜひ読んで確かめてみてください。
この物語には、現実では覆い隠されがちなものごとの本質が怒涛の勢いで押し寄せてくるので、冒頭の「学びとは?」という問いの答えになりうるのではないかと思っています。けっこう長期の連載だったので巻数も多いですが、一読の価値はあります。不登校になった小中学生、高校生のみんなにおすすめ。田村先生の絵は独特ですがそれもまた個性…と思えるようなストーリーテリングの技術を持ち合わせているので、『読ませられる』漫画でもあります。
おすすめなのは、8~9巻あたりの「夏Aテスト編」と、18~20巻あたりの沈没船の話です。いろんな登場人物がいるので、誰でも共感できるキャラクターやエピソードが必ず見つかるはず。少女漫画誌の作品ですが、男性キャラも多面的に描かれていたりアクションも多いので性別関係なく楽しめると思います。面白さは保証します。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!