天才は真理を生まれながらに知っている
インフレを抑え込んだヒトラー!
かくしてケインズ経済学の革命も、実際には大恐慌にはあまり役に立たなかったわけですが、ただ一人だけ例外があった。
それが、かのアドルフ・ヒトラーです。ヒトラーは前にも述べましたが、ケインズが有効需要の理論を発表する前から、公共投資こそが不況からの脱出策であることを見抜いていた。
プラトンは天才とは「生得の知恵」を持った人物であると言っています。つまり誰から教わるわけでもなく、また経験を通じて学んだわけでもないのに、天才は真理を生まれながらに知っているというわけです。
同じ独裁者であってもナポレオンは生得の知恵によって軍事の天才になった。ロシアの冬将軍に敗れるまでナポレオンはほぼ連戦連勝だったわけですが、ヒトラーの場合、その生得の知恵は経済にあったと言うべきでしょう。
後年、経済学者のヒックスは「戦前はヒトラーの時代、戦後はケインズの時代」*と言ったと伝えられていますが、まさに戦前の世界においてはヒトラーのみが古典派経済学の欠点を見抜いていた。彼だけがケインズ経済学の奥義を知っていたのです。
[日本人のための憲法概論/小室直樹-p.352]
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?