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宇宙思考/天文物理学者BossB【読書ノート】



「はじめに」より  
本書で紹介する宇宙思考のポイントは、次の3つです。  
① 宇宙において、見えるもの、そして知ることができることは、視点に依存しており、視点に限られています。一つの視点で見えることは現実の一側面でしかありません。視点によって、見えるものが異なり、見えるものが限られてきます。だから、様々な視点でモノゴトを見ることで初めて、全体が見え始め、より本質に近づいていきます。  
② 宇宙には、容易に見えない所に本質が隠れています。よって、見えない、見たことのないことを見るためには、新しい視点が必要です。  
③ 宇宙は無限に広がり、ほぼ無限の可能性があります。私たちはそれら全ての可能性を知ることはできませんが、だからこそ、私たちは未来を創れるのです。  
「天文物理学者BossB」として、TikTokアカウント29万人を超えるフォロワーを持つ著者が、宇宙、物理学を解説しながら、「モノゴトの本質」に近づくための「宇宙思考」を紹介していく。単なるサイエンス本ではなく、科学的な思考法が自然と身につく、未知なる「ビジネス教養書」!  

著者について

天文物理学者BossB(てんもんぶつりがくしゃ・ぼすびー)  
信州大学准教授。理学博士。アメリカのコロンビア大学博士課程修了、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、ドイツのマックス・プランク天文学研究所などで研究活動後、10年間の子育てを経て、2014年よりアカデミアにカムバック。
HP:天文物理学者BossB.com  
YouTube:www.youtube.com/天文物理学者BossB  
TikTok:@herosjourneygc  
Instagram:@herosjourneygc  
Twitter:@herosjourneygc  

【目次】  
第1章 宇宙のなかの私たち
第2章 宇宙は何でできているの?
第3章 空間、時間、時空、重力
第4章 ブラックホールは怖くない
第5章 宇宙はどこへ行く?
第6章 宇宙はどう始まったの? 宇宙の外には何があるの?
第7章 タイムトラベルしたいかい?

ある晴れた日、私は宇宙について学ぶ一冊の本を手にした。最後に銀河系の惑星について学んだのは、遠い昔、学校の理科の時間だった。宇宙の壮大さや複雑さを思い出すだけで、少し頭が痛くなるような気がしていた。

だけど、この本は違った。初めてのページから、著者は私を優しく宇宙のドアへと誘ってくれた。その中には、ブラックホールという宇宙の謎が待っていた。以前、ブラックホールを想像すると、強力な吸引力で周りのものを飲み込む恐ろしい存在というイメージだった。だけど、この本を読んで、その真実に驚かされた。

複雑な概念や難しい物理学の部分も、比喩や思考実験を通じて、まるで隣の友人が説明してくれるような親しみやすさで書かれていた。小学校の高学年の子どもたちにも、この魅力的な宇宙の冒険を共有したいと思った。

しかし、最も心に響いたのは、この本の核心、"宇宙思考"だった。宇宙の驚異的な事実や物理学の知識を通して、私たちの日常生活や社会、そして未来への見方が変わっていく。読み進めるうちに、宇宙の中の小さな存在である私たち自身が、大きなエネルギーと勇気を感じるようになった。

この本は、ただの科学の入門書ではない。それは、私たち一人一人の心の中に新しい視点をもたらす、エンパワーする魔法の本なのだ。

本書の要点

要点1:「宇宙カレンダー」において、138億年の宇宙の進行を1年とした場合、人間が生きる時間はわずか0.2秒となる。
要点2:時空には進行に制約があり、私たちはその中で最速とされる「光の速さ」で進行している。空間を移動する者は、静止している者と比較し、時間がゆっくりと進行する。
要点3:「ブラックホール」という1975年には多数の科学者に疑問視されていた仮説は、数々の観察によって「科学の事実」として認知されるようになった。
要点4:我々人間は、宇宙の時間の中で短い瞬間のみを生きるが、その瞬間の光り輝く瞬間が集まり、宇宙の全体像や将来を描き出す手助けとなっている。

要約

宇宙の中の小さな私たち

何度考えても宇宙の広大さには驚かされる。宇宙とは、全ての空間、時間、モノとエネルギーの集まり。その中で、私たちは「宇宙思考」を持つことで、周囲のすべてを広い視野でとらえるようになる。これは私たちが自分や他者、さらには社会や関係性をどのように見て考えるか、ということに影響する。

この壮大な宇宙には、三つの重要な原則がある。
一つ目は、私たちの知覚や認識は「視点に依存」する。
二つ目は、宇宙の本質は往々にして「目に見えない部分」に隠されている。そして三つ目、宇宙は「ほぼ無限」の広がりを持ち、それは無限の可能性を示している。

私たちの存在する位置、地球は、宇宙の中で「ラニアケア超銀河団」から「天の川銀河」、そして「オリオン腕」を経て「太陽系」に位置している。

我々の存在する位置は、
『ラニアケア超銀河団 ⇒ おとめ座超銀河団 ⇒ おとめ座銀河団 ⇒ 局部銀河群 ⇒ 天の川銀河 ⇒ オリオン腕 ⇒ 太陽系 ⇒ 地球』と表すことができる。

この規模を100億分の1に縮小すると、太陽の大きさはグレープフルーツの大きさになり、地球はそこから15メートル先にある針の先の大きさになる。そして、私たちの天の川銀河には数千億の星々が輝いている。

宇宙の歴史をひも解いてみると、宇宙は138億年前の創世の瞬間から始まったと考えられている。この長い時を一年に凝縮すると、私たちの太陽系や地球が生まれたのは9月2日。
そして驚くべきことに、恐竜は12月の終わり、人類は大晦日のほんのわずか前に登場する。私たち人類がこの宇宙の歴史の中で与えられた時間は、わずか0.2秒。しかしその短い時間の中で、私たちは宇宙の多くの謎を解明し、そして大きな影響を与えてきた。

星々の光り輝く背後には、原子という構成要素が隠れている。私たち一人一人も、異なる原子の組み合わせによって成り立っている。宇宙全体の中で、確認できる物質はわずか5%。残りの95%は、まだその正体が明らかではないダークマターやダークエネルギーで構成されている。

私たちの視野や知識は限られている。しかし、その限られた中からも、宇宙の美しさや奇跡を感じることができる。私たち一人一人が、その美しさを感じ、理解しようとすることで、より深い宇宙の理解へと近づけるかもしれない。

宇宙の奥深くに広がる時空の神秘

宇宙の次元と私たちの存在

次元は「動ける方向の数」として理解され、私たちが存在する場所を示す鍵となります。地球上での私たちの位置を示すために緯度、経度、標高の3つの次元を使用するように、私たちはこの3次元空間の中に生きています。しかし、私たちが存在する瞬間は固定されておらず、それを理解するためには「時間」が必要となります。この考えに基づいて、私たちは4次元時空の中で生きているのです。

この宇宙の理解は、ニュートンが提唱した絶対的な時間と空間の概念から一変しました。アインシュタインが示したのは、時間と空間は観察者の位置や動きによって相対的に変わるというもの。そして彼は、光速という一定の速度を介して、空間と時間の関係を示しました。

実際の例を考えると、電車の中でボールを投げる動きやその速度は、電車の中の人と外の人とで異なる速度に見えます。これは、空間や時間が私たちの動きや観点によって変わることを示す特殊相対性理論の一例です。

時空の速度制限と謎の未来

宇宙の法則には、「物やエネルギーが動く最大の速度」という制限が存在します。この制限を超えると、時間や空間が完全に崩れ、すべての出来事が同時に起こるような状態になるでしょう。この制限速度は「光速」として知られています。

実際、私たちは常にこの光速という速度で時空を移動しています。空間を動く速度を変えることで、時間の進み方も変わるという、驚くべき事実があります。

そして、アインシュタインの理論によれば、時空の概念は完全に相対的であり、私たちの「今」は宇宙のどこかで過去や未来になっている可能性があります。

ブラックホールの冒険

ブラックホールは、その名前のとおり、恐ろしい存在のように思えるかもしれません。しかし、宇宙のこの不思議な場所は、理解することでその恐ろしさを超える魅力を持っています。

例えば、国際宇宙ステーションの「無重力」の状態は、ブラックホールの周りの特定の軌道と似ています。私たちがブラックホールに近づくと、時空の歪みが強まり、異なる現象や経験をすることができるのです。

ブラックホールの入り口、イベントホライゾンを越えると、その内部の出来事や状態を外からは知ることはできません。しかし、それがどれほど魅力的であり、宇宙の神秘を感じさせるかを考えると、私たちの知識や理解を超える現象がどれほど多いかを実感することができます。

結局、宇宙は多様性の中に無限の可能性を秘めており、私たちが知覚する現実は、多角的な視点をもって探求することで、新しい発見や驚きをもたらしてくれるでしょう。

宇宙の謎:科学の探求

かつて1975年に、ブラックホールは「科学のフロンティア」の中心に位置していました。それは、大天才アインシュタインでさえ認めていなかった存在でしたが、観測技術の進歩と研究者たちの探求心により、宇宙の不思議な一角として「科学的事実」へと昇格しました。

以下の5つの原則は、私たちが宇宙の謎に挑む時のバイブルです。「権威に盲目的に従うな」「自分の直感を信じ、問い続けよ」「アイデアは観察と実験で確かめよ」「エビデンスを重視せよ」「自説を疑い、常に学び続けよ」。この探求精神を持ち、常識や既存の知識を柔軟に受け入れ、挑戦することで、未知の宇宙の謎が少しずつ明らかになっていくのです。

宇宙の進化:果てしなき旅路

宇宙の終末

エドウィン・ハッブルの観測が示したのは、宇宙の絶え間ない膨張です。この膨張は地球を中心に起こっているわけではなく、全ての銀河が等しく遠ざかっているという不可思議な現象。これを想像するとき、レーズンパンの膨らむ様子がよく例えられます。

宇宙は、中心も、目的も、明確な意味も持たない、果てしない拡がりを持つ存在です。しかし、その中で私たち人間は、自らの存在に意味や価値を見出しています。

また、宇宙の膨張は加速しているとも言われています。この現象の背後には、ダークエネルギーの推測される力が関与しているとされます。

もし、このまま宇宙が進行すると、最終的には「ヒートデス」という状態になると言われています。しかし、その先も、まだまだ未知の可能性が広がっています。

時間の流れ:タイムトラベルの可能性

過去と未来の境界

宇宙の法則には、時間の進行に関する驚くべき事実が含まれています。「動いている物体の時間は、静止している物体よりもゆっくりと進行する」という、相対性理論の一部です。しかし、日常の生活において、この違いを感じることはほとんどありません。

過去へのタイムトラベルは、数学的には可能とされていますが、実現するための具体的な方法や技術はまだ発見されていません。

過去に囚われず、現在を生きること。それが、私たちに与えられた時間を最大限に活用する鍵かもしれません。


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