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初夢…1945年8月6日午前8時

今年の初夢は、

1945年8月6日午前8時の広島市にいた夢であった。

そこから、離れようとしても足が絡み、前に進めない。

焦る気持ち。

息はあがり、苦しい。

橋の上で、息を整えていて、ふと周りを見渡すと、

前方に産業奨励館が見える。

橋には、白いセーラー服とモンペ姿の女学生が数名、楽しそうに話しながら橋を渡っている。

出勤のために足早に歩いている眼鏡と口ひげがある男性。

子供と手をつないで歩いている母親。

この人たちは、あと数分後に消えてしまう。

逃げろと叫びたいが声が出ない。

逃げようとしても足が絡む。

無力である自分がいる。

なにもできないのならば、この情景を、しっかりと記憶にとどめたい。
そう思い、周りをみる。

これまで、戦時中というと隔世感を感じていた。

ドラマで見ても、小説で見ても……

でも、今、眺めている光景は、現代と変わらない、それぞれの日常があったのだ。

時代が違うだけ、

戦時中か、そうでないか。

今日を、明日を思いながら生きている。

遠くから飛行機の音が聞こえてくるような気がする。

元安橋で、私はただその瞬間を待つしかないのだ。

…そう思ったときに、私は目が覚めた。

自分の体がここにある。

生きている。

ああ、あの人たちはどうなってしまったのか?

…答えはわかっている。

私の初夢の話。

映し出された光景は、これまで見て来た脳の記憶。

…今年も、8月が来た。

静かに祈りたいと思う。




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