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『旧市町村日誌』 56 旅の7割 文・写真 仁科勝介(かつお)

10月16日(水)

 

久しぶりに用事のない休養日を取った。休養、というと呑気だなあと思われるのかなあ。思われる分にはいいや。自分で納得できる休み方だから。

 ちょうど旅の進捗率も7割に。あと30%しかないと考えるか、あと30%もあると考えるか。実際のところは、その両方を考えないように。

 なぜなら、訪れるまちはゆうに600以上あるから。スポーツ選手が個人記録を意識しすぎないようにするのと一緒で、今は今、一日で0.2%ほど進む旅の積み重ねを大切にする方がいい。

 

ただ、比較で前回の市町村一周の旅を引き合いに出すと、前回の旅なら残すまちはあと140ほど、進捗率は92%まできている。ここまできたら、「いよいよだ!」という感覚も多少は生まれるかもしれないなあ。でも、とにかくこの旅はほんとうにちょっとずつしか進まないので、気持ちを抑えている方がよっぽどいいなと思う。

 

現在は富山県の旅を終えて長野県にやってきた。青空が続いてくれたおかげで、スケールの大きな長野県の自然を、まるごと教えてもらっているような気持ちになる。小学校のグラウンドから、国道沿いから、山も川も湖も、どこへ行ってもとんでもなく壮大な景色がある。もし、こんな景色が都市部にひとつでもあったら、人気の観光地になるんじゃないかなあと思える風景が、日常に溶け込んでいる。おそるべし、と思うばかりだ。

 そして、長野県で暮らしている方々も、その自然を大切にしている人が少なくないように感じる。もちろん、都市部と比較して良いようにも悪いようにも言えるかもしれないけれど、人間と自然の関係性として、長野県はとても良いバランス持っているなあと。

 

さて、10月と11月は旅の中断もいくつかある。でも、やっぱりそれは中断ではなくて、中断している間も旅なんじゃないかと思うようになってきた。ぜんぶが旅に含まれていて、その種類が状況によって違うというか。そう考えるとどんな判断も責任は自分にある。その上で、つくづくありがたい旅だ。明日からもコツコツがんばろう。


仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。


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