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デザイナーの職能とは何か

「なんでデンマークに来たの?」ってよく聞かれます。いろんな人に会って話をしていると必ずみんな聞いてくれます。

もちろん「トビタテというユニークな奨学金で、デンマークの建築を学ぶために来ました」と答えれば嘘はないし、加えて「デンマークの暮らし方に惹かれました」なんていうと喜んで聞いてくれます。

でも、その答え方にどこか納得いっていない自分がいます。もっと心の底から、僕を突き動かしている何かがあるのではないか。それを自分の言葉で自信をもって説明したいなあって感じるのです。

最近少しわかってきた気がします。
僕は純粋にこの国のデザイナーたちにあこがれているんだなあって。

街を歩けば美しい赤茶のレンガ建物が並び、郊外に少し行けば古い木造屋がぽつらぽつらと自然の中に紛れ込んでいる。

そんな魅力的な風景をつくってきたデザイナー(建築家)に特別感を感じて、興味をもっているのです。

そして、そのデザイナーたちと僕が思い描く自分の将来像とを重ね合わせようとすると、「デザイナーの職能とは何なんだとうか」という問いにぶつかります。

「きっとその答えを見つけるためにデンマークに来たのだな」って最近は考えるようになりました。


インターン先の事務所で僕の面倒をみてくれているラースは、建物の設計から家具、照明、掛け布団やドアハンドルなどの小さなパーツに至るまで、何でもデザインしてしまう凄腕のデザイナーです。

ある日、椅子のスケッチが描かれたトレッシングペーパを机に積み上げて、ペンを走らせていた彼に、「新しいプロジェクトが始まったのか」と聞いてみました。すると、「今はアイディアをファイリングしているのさ。そのうち、ピュン・ピュン・ピュンって感じでどっか飛んでいくよ!」と笑って話してくれました。

僕はこれまで、製品に求められる要素や役割を分析して試行錯誤を繰り返し、製品を生み出していくことが良いデザイナー(建築家)の資質であり、求められるべき能力であると勝手に理解してきました。

思うがままにデザインをばら撒いているようなことは、エゴとまで捉えられてしまうような印象さえありました。

ラースの仕事には、それとは明らかに違うものを感じます。自分の哲学を、建築や様々な製品という形で表現している。まさにそんな感じです。

長年の経験や、彼自身がつくり上げてきた哲学を何か形としてデザインして、暮らしを豊かにする。そんなことを当たり前のように仕事として行なっているように見えます。

もちろん、哲学の形成には論理的な裏付けがあって、本当に良い製品として完成させるための工夫には妥協しません。そこがミソなのかな。

そして、彼の哲学に共感した人々が一緒にプロジェクトを進めたり、クライアントとして彼に仕事を依頼するのだと思います。

ラースは、「私は古い人間だから私がデザインしたものが世界にいっぱいあるんだよ」と言っています。将来、僕もそんなことを自然と言ってみたいものです。


繊細なぬくもりを感じる「ENSO pendant lamp」 
ラースお気に入りの作品

「デザイナーの職能とは何か」

僕が一つ目に出会った答えは、
自身の哲学を"かたち"として暮らしに還元すること。

デンマークでの日々を通じて、僕はその問いへの答えを見つける旅を続けています。



トビタテの話に興味がある方は、下の記事を読んでいただけると嬉しいです。現在、高校10期・大学17期の応募が始まっています!是非!!!



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