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文具レビュー「ブックダーツ」

読書マーカーとしての付箋への不満

 元々、自分は平均的な人よりは本を読む方であると思う。読書家を自称することなどとてもできないが。
 ここ数年、以前よく読んでいた小説やノンフィクションの類はあまり読まなくなったものの、最大の興味分野である政治・軍事をはじめとして、リーダーシップや組織論、心理学、思考術や読書術といった仕事に役立つ本を読むことが多くなった。
 そして、今年慶應通信に入ってからは、読書量が更に増えた。上記の本と並行して、テキストやレポート課題のための参考文献も多く読まなければならなくなったためだ。こうなると、1冊の本をじっくり読むというのは最早困難であり、大雑把にブラウジングして役に立ちそうなエッセンスを拾っていく、という読み方に、必然としてならざるを得ない。

 そんな時に役に立つのが付箋だが、付箋には欠点も多い。
 一番大きいのは本からはみ出ること。ハードカバーの本に余程丁寧に貼る場合でもない限り、貼った付箋はビラビラとはみ出し、鞄などで持ち運ぶとグシャグシャになってしまう。頑丈なプラスチックの付箋なら多少は軽減できるものの、それでも折れることが無いわけではない。そのため、折れにくくなるようはみ出し量を小さくして貼るのだが、これは地味に面倒な作業である。
 次に、物によっては糊が残る場合があること。特に人から借りた本や古い本に使うのは憚られる。
 また、貧乏性と言われそうだが、付箋は基本的に使い捨てなのも気になる点だ。今自分がやっている読み方では、複数回読み返しながら最初は大きいフィルターでポイントとなりそうな箇所を抽出し、だんだん解像度を上げて細部に目を向けていくので、付箋を貼ったり取ったりが頻繁に起こる。

 気が付くと1冊にプラスチック付箋を一束使っていることがあり、いちいち捨てるのはコスト的にも気分的にもあまり良くはない。
 何かこれらの問題点を解消できるグッズは無いものかと探していて見つけたのが、金属製の再利用可能な付箋「ブックダーツ」だった。

ブックダーツとは:特性、利点と欠点

 ブックダーツは、幅1センチ×長さ2.5センチほどの金属製のブックマーカーで、缶に入っている。

シルバー、ゴールド、ブロンズの順に硬い

 ラインナップはシルバー、ゴールド、ブロンズの3色(全色が入ったミックス缶も売っている)。いずれも塗装やメッキは施されていない無垢のため、シルバーはステンレス製、ゴールドは真鍮製、ブロンズは銅製(色はブロンズと銘打ってるのに)と、各色それぞれ材質が違い、これが使い勝手の違いを生んでいる。
 シルバーは最も硬い。しっかりと紙を挟め、ステンレスなので錆びたり色が変わったりすることもない。一方で、若干硬すぎて紙への当たりが強いので、特に辞書やそれに近い薄い紙、劣化した古い紙などを挟む時は気を遣う。
 逆にブロンズは最も柔らかく脱着が楽で、手に持って本を読む時の曲げにもぴったりと追従してくれる。一方で、柔らか過ぎるためか保持力が弱い個体が3色の中では体感で一番多い(2~4%程度?)。また、手の汗で直ぐに10円玉のように色がくすみ、指紋の後がつく(繰り返し使えば全体が満遍なくくすんでいく)。自分は気にならないし、これを味と感じる人もいるだろうが、気になる人もまた居るだろう。
 ゴールドは両者の概ね中間的な特性を持っている。硬さは両者の中間で、銅ほどではないが色のくすみは生じる。

 厚みは正確には分からないが、概ね紙1~2枚相当で非常に薄い。余程大量に付けない限りは本全体の厚みに影響を与えることはないだろう。
 基本的な使い方は本からはみ出ないようにぴったり嵌めて使うことだろうが、あえてはみ出させて本から出っ張らせ、捲りやすくすることもできる。ただし、特にブロンズは上記のような緩い個体だと取れたりズレてしまうことがあるかもしれない。

 ブックダーツの利点は、本から全くはみ出さず・傷つけずにマークできること、半永久的に繰り返し使えること、非常に薄いこと、しおりやペーパークリップとしても活用できるなど、応用の幅が広いことが挙げられる。
 一方、欠点として、付箋と違って書き込みなどはできず、色も3つしかないために、マーカーそのものに情報を付加する機能が乏しい。その色分けも、材質の違いによる使い勝手の違いがあるため、ある程度限定されてくる。また、米国製ゆえか品質管理が大らかで、紙の保持力に個体差が結構ある上、新品の入数がピッタリ合ってなかったり(幸いにも定数より少なかったことはない)、形状が微妙におかしいものが混じっていたりすることがある。
 ただ、自分にとって利点は欠点を補って余りあるもので、あっという間に虜になってしまった。
 自分は、保持力の強いシルバーは章節の目印などに使い、ゴールドとブロンズでポイントや読み返す必要のある箇所などをマークする使い分けをしている。ただ、どの道マーカーそのものに乗せられる情報はたかが知れているので、ゴールドかブロンズ1色でも十分かもしれない。

追記:数の制限によって生じるもの

 ブックダーツは、余程大量に買わない限り、それでマークできる数は限定される。当たり前だが、75個入りをひとつ買っただけなら、マークできるのは75箇所までとなる。
 これは一見欠点に思われるが、考え方次第では利点にもなる。今どれだけ使っているかが可視化されるのだ。
 少なくとも私のような凡人の場合、同時並行で触れる本は数冊から精々十冊程度であり、それ以上手を付けようとしても大概どれかが疎かになり、読んでいたことすら忘れてしまう。結局、どれだけやる気があっても自分の能力上の限界は超えられない。
 これがブックダーツでマークしながらになると、残りの数が少なくなったりマークしようとしても足りなくなったりするため、本を積みすぎていると気付くことができ、今触っている本の整理やマークの精選につながる。
 読み終わったが特に重要なのでマークを残しておきたい場合は、プラスチックや紙の付箋に貼り替えればよい。読み終わった本を持ち運ぶことは少ないだろうし。
 また、レポートの資料探しに用いる場合も、「今大体どのくらい資料が集まっているのか」が可視化されるので便利である。残りが少なくなったら、一度自分がこれまで集めた資料を精査してみるとよい。
 ただし、これらの使い方には自分の能力や用途に合った適切な個数が何個くらいなのかを見極める必要がある。「読書用」「レポート用」など、用途別に複数の缶を作って分けて管理するのも効果的であろう。


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