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人生に塩を少々
振り払っても付き纏う虫のように、何度も昨日のことが頭に浮かぶ。スッキリ眠れそうもないので、缶チューハイを3本買って帰った。
ろくにご飯も食べず、チューハイを飲みながらYouTubeを見続け、睡魔が襲うのをただただ待った。前にも見た関連動画が流れ始めたスマホを握りしめて、布団に入った。
次の日起きると、頭にぎっしりとブロッコリーが生えていた。その異様さよりもスタイリングが気になり、ドライヤーを当てた。
熱によってブロッコリーは急激に成長し、頭の上に茎が無数に伸びていった。出勤時間が迫ってきたので、仕方なくそのまま出かけた。
すれ違う人たちは見て見ぬふりをしているようだったが、会社に着く直前に後輩に話しかけられた。
「どうしたんすか?それ」
いつものハリのある声に不安が混じっていて、周囲の人たちがこちらを見てくる。
「うん、まあ」
と適当な返事をしてオフィスに入ると、上司が走り寄ってきて言った。
「こちらでなんとかしておくから、今日はこのまま帰っていいよ」
相変わらず優しい。優しすぎて辛い。
自宅に着いて鏡を覗くと、いつもの平凡な髪型の自分が立っていた。
いつもより熱いお湯を張った風呂にアジシオをパラパラと入れて、ざぶんと飛び込んでみた。