どれでもいいわけじゃない
家で飼い始めたメダカ2匹が
縄張り争いをしてる
小さいメダカがしつこく
大きいメダカを追い回す
メダカが多くいると
穏やかになるらしい
でも小さな水槽では
たくさん飼えない
あと2匹メダカを
お迎えすることにした私
少しウキウキしながら
ホームセンターに足を運ぶ
長い間メダカの水槽を見つめる私
離れた水槽で
熱帯魚を見つめる
中学生くらいの少年
少年はスマホで会話をし始めた
「うん、1匹買ってもいい?」
家の人と話しているらしい
「分かった。買っていくね」
少年はうれしそうに熱帯魚を連れて
帰って行った
私も水槽を再確認する
大きいメダカが3匹いて
明らかにボスらしきメダカが1匹
うちのメダカが小さいから
小さなメダカにしよう
「すみません。小さめなメダカを
2匹お願いします」
「えっ?どれも同じだから
どれでもいいんじゃないですか?」と
40代くらいの女性の店員さん
ビックリする私
「家にいるメダカが小さいので
大きいメダカだと追い回されて
可哀想なので」
「そうなんですね!」
店員さんは少し驚いた様子で
メダカの入ったビニール袋を
笑顔で渡してくれた
何かを買う時
特に生きているものは
どれでもいいわけじゃない
花もペットも
それぞれ気に入った子たちを
家に連れて帰る
猫や犬はどの子がいいか
真剣に悩むのに
どうしてメダカは
どれも同じと思われてしまうのだろう
水槽にたくさんいるメダカの中から
特定の子を指名している訳ではない
ただ大きなメダカ3匹以外という
注文も店員さんにとっては
どうでもいいことなんだなぁと
少し落ち込んだ
私が小さい頃
メダカを数匹飼っていたのを
思い出した
「メダカは卵を産んでも
小さい子供のうちに
亡くなってしまうね」と
母が嘆いていたのを思い出した
メダカはとっても小さいけれど
1匹、1匹大切な命
私の姿を見て近づいてくる子
ちょっとしたことでビックリする子
縄張りを気にして
周りの子を次々と追い回してる間に
他の子たちに
エサをほとんど食べられてしまう子
みんな個性があって可愛いのに
駐車場の横の
植物コーナーで
様々な色の花や草木が
秋の空の下
気持ちよさそうに風にゆれている
両手に花の鉢を持って
どれがいいか悩んでる人たち
興味のない人から見たら
どれも一緒に思えるかもしれないけど
私も含めて
「どれでもいいわけじゃない」
そう思う人たちが世の中にいる
なんだかホッコリとした
そして、それに気づいている自分を
ちょっとだけ好きになった
秋の空風は気持ちいい
私は小さめなメダカを大事に抱えて
家路についた