小さい頃は雨が好きだった
雨が上がった
雲の隙間から見える深い青
足を止めて傘をたたむ
足元には大きな水たまり
私は深いため息をついて
もう一度空を見上げる
小さい頃は雨が好きだった
傘を差しながら
長靴で水たまりの中をザブザブと
何往復もしていた
気がつくと雨はやんで
水たまりに映っている虹を
いつまでも見ていたあの頃
もう戻ることのできないあの頃
いつの頃か虹を見つけても
何もないかのように下を向いて
歩き続ける自分
雨なんて大嫌い
何でこんな風になってしまったんだろう
突然、子どもの笑い声が後ろから聞こえる
「こっちにおいでよ」
振り返ると人影はどこにもない
飛行機が私の頭上を
ゴーっと音を立てて通り過ぎてゆく
私は助走をつけて
水たまりを飛び越える
水しぶきが足元に飛び散る
なんだか楽しい
これからは自分の中にある
子どもの部分も許してあげよう
周りからバカだと言われても
自分が楽しいと思える気持ちを
大切にしてあげよう
木の上にいた小鳥たちが
おしゃべりしている
私は少し大股で新しい一歩を
歩き出した
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