薄っぺらなお月様
「大丈夫?」とあなたに聞かれて
あなたの前で初めて泣いた
大人になってから誰からも
「大丈夫?」なんて
言われたことがなかった
誰もいない夜の公園で2人
優しい月夜に照らされる
鼻をすすりながら頷くだけの私
黙って私を見つめるあなた
少し冷たい風と
秋の虫たちのオーケストラ
長い沈黙の後
あなたの陰が静かに私に近づく
ほんのりとあなたの香りに包まれる
そっと伸ばしたあなたの左手が
私の頬に触れた
その瞬間、自分の心と体の全てが
冷たくなっていたことに気が付いた
温かいその手のひらが優しくて
毛布に包まれているように安らいでゆく
あなたは静かに微笑む
この時間がいつまでも続けばいいのに
この声を毎日聞くことができたなら
きっと悲しかった過去も
許せるような気がした
ベンチに座って涙をハンカチで拭く
途切れながらゆっくり話す私
悩みを真剣に聞いてくれるあなた
繋いだ手からじんわりと伝わる
温もりと優しさ
こんな私にも
丁寧に接してくれる人がいた
それが大好きな人だから
すごく嬉しい
雲に見え隠れする薄っぺらなお月様
「どうか私たちに素敵な未来をください」
心の中で呟いたら
ザワザワと周りの木々たちが
風に大きく揺れた
まるで応援されているかのように
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?