また金木犀が香る頃には
久しぶりに来た駐車場
目の前にはあなたのオフィス
あなたの黒い車の正面に車を止める
あなたはこの白い建物の中にいる
会いたい
そう思って、もう半年
何度もこの場所に来てるのに
すれ違うばかりの2人
今日そこ会えたらいいのに
ドキドキを抑えながら
建物の中に足を踏み入れた
今日もまた会えなかった
なんでタイミングが悪いんだろう
2人は見えない何かのイタズラで
離されているみたい
少しふてくされて車に乗り込む私
ハンドルに手をかけて
大きなため息をつく
オフィスの窓が少し空いている
私がチョウチョだったら
あの隙間からこっそり入って
あなたに会いに行けるのに
もう一度ため息をついて
車を走らせる
はにかんだあなたの笑顔と
心地いい低い声を思い出していると
窓から涼しい風が入ってきた
何日間も雨色だった空が
今日は青い空とモコモコ雲
ちょっとだけ爽やかな感じ
信号が赤になる
消えかけた停止線でブレーキを踏む
あなたが毎日見ている風景を
シャッターを押すかのように
頭にしっかりと記憶する
会えない寂しさと
見えない未来への不安で
涙が溢れてきた
長い信号が青に変わる
どこからか金木犀の香が
風に運ばれてきた
涙を拭いてアクセルをふむ
心のアクセルも踏めたらいいのに
そう思いながら
平凡な日常へと戻ってゆく
今日はあなたの車に会えたことで
ラッキーってことにしよう
あなたが元気でいてくれたことに
感謝をしよう
また金木犀が香る頃には
あなたが隣にいてくれますように