見出し画像

アリさんへの八つ当たり


市役所の出入り口の横で立ち止まる私
なかなか進まない山のような量の手続きに 
グッタリ疲れてウンザリする

疲れとイライラで書類がファイルに
うまく入らない
パラっと一枚書類を落とす
「なんだかなぁー」
紙を拾うだけなのに体中が重くて痛い
ふと紙の横でちょこちょこ歩く
アリさんを見つける
私は思わず「チッ、君は呑気でいいね」と
舌打ちと捨て台詞を吐いてしまった

落とした書類をファイルにしまうと
もう一度アリさんを見てみる
自分の体の半分くらいの
大きな荷物を持ったアリさんは
忙しなく何処かへ行ってしまった

ごめんなさい、アリさん
君は大きな荷物を運んで大変なのに
アリさんが呑気かなんて
分かる訳もないのに

そういえば知り合いにも
私と同じことをする人がいる
「俺は大変だけど君は大したことないね」と
勝手に決めつけてくる人が

焦りと忙しさと疲れで
すごく嫌な自分になっていた
「ダメだ、ダメだ!」
ゆっくり深呼吸をして空を見上げると
秋の爽やかな風に髪の毛が舞った

「お疲れさま。頑張ってね!」と
忙しそうなアリさん達に小さく手を振る私
足もとのアリさんがこちらに寄ってきて
数秒止まって、また歩き出した
返事をしてくれたのかな?
私はちょっと微笑んだ

傍から見たら怪しい人
でも、このほっこりとした時間で
私の嫌な気分が半分くらい
薄い水色の空へと蒸発していった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?