マガジンのカバー画像

ゆるっと、ほっこり読み物

34
温かい気持ちになりたい時、優しさに包まれたい時におすすめです。
運営しているクリエイター

2021年11月の記事一覧

遠い日の記憶

6歳の私と母は 川の土手を歩いている お日様の光が川の水面でキラキラしてる 仕事が忙しい母と手を繋いで ゆっくり歩くのは久しぶり いつもセカセカして、カリカリして 私の事嫌いなのかと思う時もある母 でも今日の母はニコニコしてる 「もうすぐ小学生だね」 「うん」 嬉しくて強く握った母の手が温かい 「お母さん、大好き」 母は戸惑いながら、優しく笑った 道の脇でススキがふわふわ揺れている 真っ直ぐ続くこの道 いつまでも続いて欲しいと心で祈った 人生で

ありがとう。もういいよ。

君は怒っている 僕を悪く言うアイツらを睨んでる 窓の隙間から入り込む風は妙に生ぬるく 君の額にジンワリと汗が流れる 唇を噛み締めた君の肩が小さく震えてる 出会ったばかりの僕のために 腹を立ててくれている君の耳元で 僕はそっと、ささやく 「ありがとう。もういいよ」 君の優しさが嬉しいから 言いたいヤツには言わせておくよ 乾ききった心にかかる虹のように 優しい気持ちが広がってゆく 久しぶりに心の底から溢れた言葉 「ありがとう」 君と逢えて、とても嬉しい

ナマケモノ

森の中でひっそりと 一日をのんびり過ごすナマケモノ 虫たちが体の毛に住みついても ぜんぜん気にしない 雨が降っても濡れたまま みんなは彼をバカにする それでも少し微笑んで 澄んだ瞳で空を見上げる まるで何もかも知っているかのように

あなたを待っている

ちょっと疲れただけだよね あなたはひとりで色々なものを 背負い過ぎただけ すこし休むといいよ これから先はまだまだ続く あなたは私にたくさんの 優しさと励ましをくれた なのに、あなたに何もできない そばにいてあげられない この想いを伝えることさえ いつかあなたが優しく笑って話してくれた あの桜並木を一緒に 歩ける日が来るといいね ゆっくりでいい あなたの笑顔、待ってるね

仲間になること

誰かが悪いことをしている時 一緒に見ているだけで仲間になってしまう それは、すごく簡単なことで 仲間でなくなるのは すごく大変なこと 誰かが良いことをしている時 見ているだけでは仲間になれない 仲間になることは すごく難しいことに思えて 意外と簡単 ちょっとだけ勇気を出して声をかけてみる ただそれだけ

雨の日の足元

雨の日のタンポポの綿毛 濡れないようにしっかり閉じて 青空に会える日をいつまでも待つ このまま雨がずっと続いたら 冒険を知らずに終わってしまうのかな? 彼らが飛び立つ日は来るのかな? 風に乗って知らない場所にたどり着いて 新しい世界で笑うことができるのかな? なんとなく今の自分に似ていて ちょっと淋しい

未来の絵の具

どんなに綺麗な絵の具で 未来の色を塗っても 人から与えられたもので 塗り方まで「ああだ」「こうだ」言われると 乾く間もなく、くすんでゆく せっかく集めた感動の色も 完成間際にゴチャ混ぜにされる あぁ、また心の筆が折れた 僕はこれから何回塗り直せばいいのだろう 自分の絵の具を使いこなせない人ほど 「君のためだよ」なんて言いながら 汚い色をなすり付ける 僕はアドバイスなんていらない ただ好きな色を塗っていたいだけ 遠くの方から見ていて 笑顔でうなずいてくれれば 僕はこんなに、ひね

夢の種

道で拾った光り輝く一粒の種 知らない老人が声をかける 拾った人の夢がたくさん詰まっていると言う 少年はその種をポケットにしまう 大切に大切に、失くさないように 少年は願う いつかその種を植え 未来の庭いっぱいに夢の花が咲くようにと そして願いが消えないように 種を引き出しの奥に押し込める 大切に大切に、失くさないように やがて少年は老人となり 拾われた種は宝箱の中で 静かに眠る 花いっぱい庭に咲く日を夢見て

引っ越し日和

暑くもないのにセミが鳴いている 梅雨の冷たい雨の中 ミミズが地面を泳いでいる 今日は引っ越し日和 必死なのか、だらけているのか 伸びたり縮んだり 思い出の場所を後にする 短い雨はいたずらに ミミズの命を取り上げようとする それでも引っ越しはやめない 次から次へと 未来に向かって泳ぎだす 決して近場で妥協しない 彼らは大いなる挑戦者 君たちが少しうらやましい