写真多め!フランク・ロイド・ライトの傑作「落水荘」の驚きの視点に迫る!
建築界の巨匠フランク・ロイド・ライトの代表作「落水荘」は、建築ファンにとって聖地の1つと言ってもいいだろう。なぜ美しいのか?なぜ心を揺さぶるのか?見どころやポイントなどを豊富な写真とともに紹介したい。これを読めば、きっと行った気になること間違いなし!
…そうなるといいな(^-^*)
フランク・ロイド・ライトは何者だ!
フランク・ロイド・ライト(1867-1959)はアメリカの建築家で、多くの特徴的かつ印象的な建物を残している。有名なところでは落水荘や旧帝国ホテルなどだろう。旧帝国ホテルの中央玄関は愛知県犬山市の明治村に移築されていて、今でもその荘厳な姿を見ることができる。
大谷石とレンガをふんだんに使い、たくさんの彫刻や装飾が施されたこの建物に1歩足を踏み入れると、その美しさに圧倒される。と同時に、ほっと安らぎを与えてくれる不思議な空間だ。これを見てしまうと他のライトの作品も訪れてみたくなる。というわけで、次は落水荘だ。
落水荘はどこだ!
落水荘はアメリカ北東部のペンシルベニア州にある。決してアクセスがいいところではない。
訪れたのは2023年6月。起きると、晴れ渡ったすがすがしい朝だった。8時過ぎに宿を出て、5分もたたず落水荘のゲートに到着。8:30出発のツアーを予約している。
着いたとき、すでに5〜6台の車が列をなしていた。ゲートにいる係のお姉さんが1台ずつ予約を確認して入場させているので、混み合っていたのだ。駐車場のスペースが限られていて、予約者しか入場させないのかもしれない。
車を停め、受付へ。呼び出しがあるまで受付の周りで待つように告げられる。
自分が参加したのは「IN-DEPTH GUIDED TOUR」で、料金は88ドル。当時のレートで13,000円弱だった。舞浜の「夢と魔法の王国」(「夢の国」はディズニー公式としては間違い。この話はいずれ)のパスポートよりも高額だ。ツアー時間は1時間半。他にも安いツアーはあるのだが、入れるのが一部の室内のみだったり、屋外のみのコースだったりする。なにより「IN-DEPTH GUIDED TOUR」を選んだのには訳がある。このツアーにのみ“personal photography permitted”との表記があるのだ。ここまで来て写真が撮れないのは悲しい。どこまで写真撮影ルールが厳格に運用されているのかはわからないが、落水荘のすべてを見たかったから、必然的にツアーは1択となる。
落水荘ツアーに出発!
8:30出発といっても2班に分かれている。1グループ10人ほどで、自分は後発隊。メンバーはアメリカ人が大多数で、ドイツ人の親子、日本人の我々といった構成だ。年配の女性ガイドさんが案内してくれる。受付を出発して、いきなり落水荘に入るというわけではない。高台に位置していたツアーデスクから坂を下って谷底まで行き、ぐるっと回り込んで落水荘に到達するコースだ。
谷底へ行く道の途中で現れた岩壁についてガイドさんが解説してくれる。ミルフィーユのように幾重にも重なった水平の層が、ライトに石積みのインスピレーションを与えたのだという。また、これらの自然素材を石材として建物に活用しているそうだ。
谷底まで降りると、気持ちのいい緑の庭が現れた。ここまで樹木が生い茂っていたので、突然開放感がわき起こる。
庭の脇にはベア・ランという小川が流れている。これが落水荘へと流れ込み、あの有名な滝になっているのだという。目的地はもうすぐのようだ。
落水荘に到着!
ついに落水荘が目の前に現れた。
“Oh. Wow. ”
ツアー参加者から、ひかえめながらも驚きに満ちたため息が漏れる。よくもまぁ、こんな山の中に別荘をつくったもんだ(説明が遅くなったが落水荘は別荘だ)。一瞬そう思ったが、別荘だから山の中につくる意味がある。実際、家族は平日ピッツバーグでバリバリ仕事をして、週末は落水荘で過ごしていたという。
落水荘の依頼主はピッツバーグのデパート王、エドガー・カウフマン。
彼は元々このペンシルベニア州南西部の山中に土地を所有していた。東京ドーム約138個分という、もう広すぎてどれだけ広大なのかさっぱりわからない…。そして、カウフマンとライトをつないだのが息子のエドガー・カウフマン・ジュニア。彼はライトが設立したタリアセン・フェローシップという建築家志望者のための教育プログラムに参加していたのだ。
1929年に起きた世界大恐慌にもかかわらず十分な資金と広大な敷地を持つエドガー・カウフマン。そして、実力はありながらも度重なるスキャンダル(他物件の施主の妻との不倫など)によりドン底さまよい中で名声を回復したいフランク・ロイド・ライト。この奇跡の出会いとタッグにより1935年に誕生したのが落水荘、FALLINGWATERである。その名の通り、滝の上に立てられた邸宅だ。
さて、ガイドツアーに戻ろう。
まず視界に現れるのは、あの有名な滝の上の邸宅の姿ではない。玄関でもない。生い茂った木々の間から印象的に重なったテラスだ。木漏れ日が外壁に落ち、そのグラデーションが美しい。そして、植物と小川の相乗効果でなんとも清々しい気分に包まれる。
さらに、建物へ近づく。
すると…テラスが川の上に浮かんでいるように見える。
“すっげー”
まさに圧巻の片持ち梁。
テラスからは川へとアクセスできるよう階段が吊り下げられている。
小川でパシャパシャと水遊び、これが凡人の発想だろう。ライトの当初のアイデアはぶっ飛んでいた。川底を爆破して、水泳用のプールをつくろうとしたのだ。結局、滝まで破壊される可能性があると指摘され、そうはしなかった。そりゃあ、できない。滝がなくなったら普通の家になってしまう。その代わり、隣には深さ120cm程のプールが設けられた。
ツアー一行は玄関側へ回り込む。視線を上げると、庇(ひさし)が浮かんで見える。どの角度からも楽しめるのが素晴らしい。
2階のテラスの壁を挟んだ反対側に梁があり、岩壁に突き刺さっている。おそらくテラスの片持ち梁は岩壁にそのままつながって強度を出しているのだろう。全体像がわかる客観的な写真を撮っておらず反省。
梁の間を縫うように若木が立っていて、梁がカーブを描いてよけている。昔の写真を見ると、以前はもっと太い木が立っていたようだ。建築と自然との共生を表現しているのだろう。
お待たせして申し訳ないが、室内は次回紹介したい。