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星空ナイス・ネイチャのギャンブル漫才第5回「平和島競艇で夏目漱石!?」

覆面ギャンブル漫才師の星空ナイス・ネイチャが語る当コラム。今回二人は、都内の多摩川ボートレース場に現れております。競馬と違ってボートは素人だと言いながら語るのは、なぜか夏目漱石…。


ネイチャ 「きみは平和島競艇に何度か行ったことがあるそうやな」
ナイス 「やっぱりドキドキしますねー、平和島は」
ネイチャ 「ボクら競艇はまだ素人やからね」
ナイス 「しかも平和島競艇の観客席は東京都から『震度6以上の地震で倒壊の危険がある』と公表されていますから」
ネイチャ 「そんなドキドキか! 競艇場の営業でその話はあかんやろ」
ナイス 「ここは平和島ではないので安心です」
ネイチャ 「そういう問題か! ちなみに平和島も改修中なのでご安心ください」
ナイス 「で、その平和島。何年か前に行ったときの話です。友人と駅前で待ち合わせて無料バスで向かう途中、その人が『最近また読んでるんだよ』とカバンから出した文庫本が、『草枕』」
ネイチャ 「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される……。夏目漱石の名作やな」
ナイス 「偶然なんですけど、ボクもそのちょっと前に熊本に行く機会があって」
ネイチャ 「漱石は熊本の高校で講師してたんやろ」
ナイス 「『草枕』の舞台も熊本の温泉宿ってことで、ボクもたまたま『草枕』を読み直したばかりだったんで、バスの中ではずっと漱石談義ですよ」
ネイチャ 「インテリ味持ったギャンブラーたちやな」
ナイス 「でね、舟券はお昼過ぎから買いはじめたんですが、6Rでいきなり3連単が2万6,710円。その目が③→④→⑥! ③→④→⑥ですよ!」
ネイチャ 「万シューはええとして、その③→④→⑥がどうかしたんか」
ナイス 「ボクら、無料バスの中で何の話をしてたっていいましたっけ?」
ネイチャ 「漱石やろ。……えっ」
ナイス 「③→④→⑥、サンシロー、『三四郎』ですよォ〜」
ネイチャ 「その口ぶりは、買ってないんかい!」
ナイス 「4人で行ったんですけど、誰ひとり買ってないんですよォ〜。漱石の話をしていたら、ふつう買いますよね、③→④→⑥と⑤→⑤→⑥は」
ネイチャ 「⑤→⑤→⑥?」
ナイス 「⑤→⑤→⑥、ココロ、漱石の、かまってちゃんみたいな登場人物たちがうじうじしている名作だかなんだかわからない『こころ』じゃないですか」
ネイチャ 「さりげなく批評入れたな、きみ。でも、売ってへんわ、⑤→⑤→⑥なんて舟券」
ナイス 「やっぱりね。ですから、ボクたち、そこからはずっと『三四郎』狙いですよ」
ネイチャ 「アホや」
ナイス 「で、8Rが③→⑤→⑥。惜しい!」
ネイチャ 「惜しいんか、それ」
ナイス 「そして、とうとう10Rまでたどり着いてしまいました。ここは、①枠の濱崎選手が圧倒的な人気ですが、②枠の矢後選手との争いの間隙を突ける③枠に入った後藤選手が絶好の狙い! 今度こそサンシロー、ってことで4人が一致」
ネイチャ 「4人とも競艇はど素人なんやろ。アヤしい一致やなー」
ナイス 「その③枠後藤選手がいいスタートを切って、最初のターンで①号艇を差せそう! もう全員『やった!』と」
ネイチャ 「ほうほう」
ナイス 「でもね、バック側っていうんですか? 向こう正面いったら5艇しかいないんです。しかも、3番手にいた⑥号艇が、なぜかどんどんコースを外れていく。ああ、これは2012年阪神大賞典のオルフェーヴル作戦か、と」
ネイチャ 「なんや、その作戦」
ナイス 「3コーナーまで先頭を走っていたのに、なぜか馬群からどんどん離れていきましたね。で、外ラチ近くまで行って最後方から勢いをつけてダッシュ! 猛然と追い上げて2着!」
ネイチャ 「作戦やないやろ、それ。逸走や」
ナイス 「ちなみに、わがサンシロー舟券の⑥号艇は、猛然と追い上げるどころかコースに帰って来ませんでした」
ネイチャ 「フライングや、それ。逸走やなくてピットに帰ったんや。③号艇はどうした?」
ナイス 「最初のターンでこつ然と消えて以来、杳として行方知れず。けっきょく、①→④→②という決着に。サンシロー舟券の④は合ってたんですけどねー」
ネイチャ 「それだけかい!」
ナイス 「③号艇は最初のターンで転覆していたんです。そこで4人は顔を見合わせて叫びました」
ネイチャ 「なんや?」
ナイス 「『三四郎』じゃなかった! 水にボッチャン、『坊っちゃん』だったんだ!」
ネイチャ 「うまいこと言うてる場合か」
ナイス 「でも、その日じつはボク、7Rで4万4,760円という舟券を当てました」
ネイチャ 「それはごっついな〜」
ナイス 「レース前、一緒に行った仲間が②号艇のすごい選手を発見したんです。高橋二朗さん。当時なんと69歳!」
ネイチャ 「2023年の今も現役で、74歳や! 横山やっさんの同級生のモンスター野中和夫選手でさえ65歳で引退してるのに!」
ナイス 「で、なんとかその69歳で舟券を当てたいと思ったんですけど、さすがにピンポイントで狙うのは無理だろう、と。それで人気の①号艇を2着固定にして、3連単1着3着総流しで、合計20点!」
ネイチャ 「おもろい買い方やな」
ナイス 「そしたら、①号艇②号艇がいいスタートで、1マークで②号艇が差した! と思ったら④号艇がその真ん中からさらに差して、向こう正面では④→②→①の順番」
ネイチャ 「あかんやないか」
ナイス 「でもね、よくわからないんですが、先頭だった④号艇がいつのまにか後退して、2周目の向こう正面では②号艇が先頭、①号艇と、どこから出てきたのか⑤号艇の2着争いに。で、けっきょく②→①→⑤の決着。すごいよ、1着高橋二朗さん、69歳!」
ネイチャ 「もうこれ、漫才ちゃうやん。ただの舟券自慢や」
ナイス 「一緒に行った残り3人はかすりもせず、『明暗』くっきりというね」
ネイチャ 「また夏目漱石か! そんな話は帰りの無料バスの中でせえ」
ナイス 「今日は多摩川競艇ですから、駅がすぐそこなのでバスには乗りません。牛テールの雑炊『牛炊(ぎゅうすい)』も相変わらず絶品でしたねー。府中競馬場の『きねうち麺』なきあと、ボクのギャンブル場グルメBEST1ですから」
ネイチャ 「べつの競艇場の営業行ったときは絶対違うこと言うやろ、きみ」
ナイス 「ちなみにボクの人生でのいちばんの自慢は、府中競馬場のパドックの斜め上くらいにあったきねうち麺屋のおばちゃんに、西瓜をひと切れもらったことなんです」
ネイチャ 「よっぽど馬券で負けて腹すかせてると思われたんやろな」
ナイス 「いえいえ、ちゃんと生ビールときねうち麺を頼んだんですよ。そしたら、『お兄さん、西瓜も食べる?』って。うまかったなー」
ネイチャ 「売りもん、ちゃうんやろ?」
ナイス 「たぶん、おばちゃんたちのおやつ。あと、平和島の食堂でお蕎麦を頼んだときに、『ちょっと待たせちゃって悪かったわねー。おわびに生タマゴ入れといたから』ってことも」
ネイチャ 「ええ話や。たまにはこの漫才、ええ話で終わろうか」

https://www.boatrace.jp/owpc/pc/data/racersearch/profile?toban=2538
https://www.youtube.com/watch?v=rtTN2-8nF94


タイトル画/ゴローちゃん

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