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テノチャを彩るちょっと不思議な生き物たち~Created by Noguchi Shimura

こんにちは、テノチャ立上げ人の古川です。
日本茶テノチャのパッケージ(というほどでもないけど)は自分で制作しています。今日はこのパッケージ制作の話を少しとNoguchi Shimura氏の作品の素晴らしさをお話しさせて貰います。【趣味の投稿】【長文注意】

日本茶テノチャのパッケージに時々現れる怪しげな生き物、カラスだったり白蛇だったり、人面梟だったり、、、これらはNoguchi Shimuraさんの絵画に生息するモチーフをお借りしています。今日はそのお話です。

2024年10月20日(日)まで札幌の中島公園駅近くでNoguchi Shimuraさんx奥山帆夏さん共作展が開催中

日本茶テノチャを立ち上げるぞ!と決めた時に、一番悩んだのがパッケージです。見た目が9割の昨今、「あらすてき」と直感で思ってもらえないと絶対に売れない、それは理解していました。
(※商売はそんな簡単な話でも勿論なく、現在進行形で大壁にぶつかっていることは割愛。ますます七転八倒してから文章に残します。いつかね)

とはいえ、有名デザイン会社に頼む伝手を微かに見つけたとて財力は無く(私は友人に恵まれています)、フリーデザイナーを紹介して頂いても、イメージを上手に伝えられず発注断念。イメージを形にするって、本当に難しい。
「明るく楽しく派手だけど上品、ちょっと日本風」
テーマカラーさえ決められない。ピーコックグリーンは存外地味だし、紫だとお寺っぽい。色って難しい。

そんな中、目に留まったのが家を素敵に彩る、Noguchi Shimuraさんの黄色の油絵「多摩ゆたか」でした。

彩度の高い黄色の中に置かれた、鳥かごのようなオブジェと花瓶のような水槽のような、はたまた瓜のような緑色の物体。その下には木の根を思い起こさせる有機的なものが存在し、小さな小さな精緻な姿の貝が複数置かれています。
鮮やかな色彩とデフォルメの効いた大胆な形、それを繊細なグラデーションが丁寧に彩色することで、発光しているかのような光や優しい燻りを感じさせてくれます。平面である絵画が3Dに見える不思議な感覚。思い出の風景のような、夢の中の景色のような、頭の中では実在している自分だけの3次元の世界。
そこで思い出したのが、朝、目が覚めてまず、薄暗くても視界に入るこの黄色。カーテンを開けると朝日の中で輝きだす緑色と浮かび上がる白色。

テノチャのテーマカラーを鮮やかな黄色にしよう、と決めた瞬間です。
まるで光の中から「前向きさ」を選んだような黄色。
いいじゃないか。チャノキの生命力をそのまま頂くのが緑茶。光のような黄色、ぴったりじゃない。

Noguchi Shimuraさんの作品に出会ったのは、まったくの偶然。新型コロナ禍で自粛が続く2021年の夏の終わり、気分転嫁で訪れた丸の内で見つけました。

新丸ビル1階の本来なら人通りが多い”H.P.France”店舗正面に並ぶ、不思議でちょっと不気味なモチーフが散りばめられた絵たち。鮮やかで可愛いらしい色合いと、大胆な形に対照的な繊細な筆使い。デフォルメの中にも感じる確かなデッサン力。
真昼間なのに閑散とした東京の一等地という異世界感もあってか、一気に引き込まれたのを覚えています。当時の東京駅近辺は今では考えられないくらい人はおらず、自分の呼吸音が聞こえるほど静かでした。そうしていると、お店の方が優しく声をかけてくれ、作品について画家Noguchi Shimuraさんについて教えて頂きました。

子供の頃にひたすら絵を描いて過ごした私は、大人になって絵を描かなくなっても見るのは好きで、時間を見つけては美術館やギャラリーを訪れていました。それでも「買いたい」と思ったのは初めて。もちろん、美術館にある作品を買うのが現実的ではない、ということもありますけどね。

生活感あふれる狭い部屋に油絵が馴染むのか。素晴らしい絵だからこそ、私が所有するのではなく、来客が多い方が購入した方が良いのではないかなどなど、H.P.Franceの店員さん(Noguchiさんファンになられてました)に相談しながら、気付いたら選んでいたのが「多摩ゆたか」です。

黄色はどんな色とも馴染む

肉筆画がこんなにも家を華やかに格上げしてくれるとは思ってもいませんでした。富裕層が絵画を所有するのは、「家に合わせて」ではなく「絵画によって家の印象を洗練させる」からなんだな、と今なら思います。

さて、そんなこんなで日本茶テノチャのテーマカラーは「鮮やかな黄色」と決まったのですが、次はデザインです。

私がInstagramを始めたのは、Noguchi Shimuraさんを追うためでした。「多摩ゆたか」購入後にGoogle検索しても、都内のギャラリーで聞いても全然出てこない、私には謎の人だったんです。そこでようやくInstagramじゃね?と気付きました。大昔に作ったアカウントを使って無事にフォローできたのは、2022年に入ってからだと思います。

更新されるNoguchiさんの制作途中の絵を見ては「活動されている!」と謎の(身勝手な)安心感を持ちつつ過ごすこと2年。運命の時が訪れました。2024年3月に都内で個展との告知が!!

水犀 mizusai | gallery on Instagram: "野口清村さん展示作品をご紹介していきます。今日ご紹介する作品は「机(desk)」 P25(80.3×60.6cm) 鮮やかなオレンジ色の油彩です。アイテムの配置が予想を超えています。 ⁡ 〈野口さんからの作品コメント〉 自宅のパソコンの机を描いています。文鳥のヒナを飼うことにしたので羽化した鳥も描きました。 ⁡パソコンは上部のピクセルで表現しています。 ⁡ --------------------------------- ⁡ 嬉しい時、安心した時、感動した時や感謝を伝えたい時。 不安だったり、苦しかったり、誰かを深く思い出そうとする時。 そんな時、胸に手をあてることがあります。 心に染み込ませるような、心から掬い上げるような、 誤魔化すような、引き剥がすような、そんな仕草に見えます。 今展示では、日々の暮らしや遠い思い出の中にある、 私の心に定着した物事を描き込んでみました。 いつの日か、誰かにとっても愛着のある作品になったら嬉しいなって思います。 野口 清村 ⁡ “Attachment” When we are happy or relieved, when we are moved or want to show our gratitude. When we are anxious or in pain, when we are trying to deeply remember someone. At such times, we sometimes put our hands on our chests. The gesture looks like as if letting it soak into our hearts, as if scooping it up from our hearts, as if fooling it or pulling it away from us. In this exhibition, I have tried to depict things that have been settled in my mind through my daily life and distant memories. Someday, if any one of these could be a piece of work that someone will also feel attached to, I would be happy. Noguchi Shimura ⁡ --------------------------------- 野口清村「愛着」 Noguchi Shimura “Attachment” 2024.3.2sat - 3.17sun 12:00-19:00 最終日は17時まで --------------------------------- ⁡ #野口清村 #noguchishimura #水犀 #mizusai #蔵前 #ギャラリー" 242 likes, 0 comments - mizusai_ on March 2, 2024: "野口清村さん展示作 www.instagram.com

ドキドキしながら蔵前にあるギャラリー水犀(mizusai)へ伺いました。自然光も入る灰色が基調のシンプルなL字型のギャラリーでは、作品の繋がりが意識されつつもそれぞれの個が引き立つよう空間をもって配置され、誰かの個別の「夢」の中にお邪魔しているような気分になりました。
伺ったその日が曇りだったことも、寒さの残る3月であったことも影響しているのかもしれません。静寂の中にあるポップさ、明るい色合いの中にある有機的な形の微かな不気味さ、その対比をこの日も感じました。

初めてお会いしたNoguchiさんは、朗らかで明るく、絵を描くのを心から楽しんでいる、そんな雰囲気が言葉の端々から感じられる方でした。そこにある存在をただ真っすぐに捉えられているようで、それがデフォルメしても狂わないデッサンの根底にあるものなのかなと感じました。Noguchiさんの絵を見るたびに感る、「相反するものの同居」は、ご本人のバランス感覚に起因しているのかと思います。とてもとても自然体で、世界を丸ごと好ましく思っている方。
少しお話ししただけで何を勝手に分析しているんだ!と自分でも思いますが、斜に構えた私とは世界の見方が違うようでとても新鮮だったんです。

個展にお邪魔したその数日後、テノチャの立上げを手伝ってくれている幼馴染と会いました。パッケージの相談です。小学生から知っている彼女のセンスになんの疑いはないものの、彼女とてデザイナー経験はありません。私はインフラ業界出身のビジネス野郎なので、没個性化させた報告書や決裁書、プレゼン作成が得意分野です。はてさてはてさて、まったくもって何をどうしていいか、具体的な案は出てきません。
その中で、Noguchiさんの個展に行った話をしたら「せっかくだから、頼んでみたら?」という彼女のアドバイス。
天啓を受けた気分でした。「え。それ、やっていいの??」

茶畑に射す光(永尾製茶工場 2024年1月)


流石に厚かましすぎるだろう、とその日はそれで解散となったのですが、その日から、もんもんもんと考え続ける日々。具体的に何をどう依頼するのかも分からないまま、すっかり大ファンとなったNoguchiさんの絵をパッケージに使わせてもらうという甘美な夢想、、、、

悩むところ数日、インスタグラムのDM機能を初めて使い、Noguchiさんに連絡を入れました。具体的に何をどうお願いするのか、本来なら事前に整理すべきことすら一切しないまま、「パッケージデザインにNoguchiさんの絵を使わせてもらえませんでしょうか?」というザクっと過ぎるお願い。。。。

今ならもう、パッケージデザインはそれ単独で存在する専門分野であると分かったので、無茶苦茶なお願いをしたなあ、と反省の他ありません。無知って本当に怖い。

おおらかで親切なNoguchi夫妻にご協力頂きながら、私のふわふわした要望を具体的な形に落とし込んで頂くこと2時間強。雨の日の上野の喫茶店で「これまで作成したモチーフのうち、デジタル化可能なものを複数使用させて頂く」ことで決着しました。
今、テノチャのパッケージに出てくる、カラスや白蛇、人面鳥はまさしくその一つです。気付けば生き物ばかりを選ばせて頂いてました。

テノチャの初期パッケージデザイン。カラスの目は縦。リアルな描写にご注目下さい

これら小さく不思議な生き物たちが今、テノチャに生き生きとして楽しい雰囲気を与えてくれています。お茶も他の食物と同じく、生物の生命力を頂く行為です。モチーフとして、いつの間にか「生き物」を選んだのは必然だったのかもしれません。チャの精霊たちです。

Noguchi Shimuraさんのインスタグラムからは色付きの元絵を見ることができます。探してみて下さい!

https://www.instagram.com/noguchi_shimura/

まだまだ知名度のない日本茶テノチャですが、パッケージを振り返ってみるだけで、画家Noguchi Shimuraさんにご協力頂いたり、色々な方々からのご協力で出来ているなあと痛感します。

そのうち、何で日本茶やりだしたのか??の経緯も文章にまとめようと思いますが、今回は【オチも無いまま】ここで終了致します。

明日までですが、札幌にいらっしゃる皆さん、是非、展覧会に行ってみて下さい(私も行きたかった!緑色テーマの3連作があるんですって!)




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