七輪 * チェンマイ俳句毎日
【チェンマイ俳句毎日】2024年11月7日
今朝はまだらに霧が出ていた。運動の帰り、公園のそばでバゲットサンドの屋台を見かけた。オンボロな三輪自転車を改造したレトロな屋台だ。
近くの木陰のベンチには、運動服姿の西洋人のおじさんたちがくつろいでいる。コーヒーを出す屋台も出ていて、簡単な椅子とテーブルが並べてある。運動帰りの人が朝食をとるのにちょうど良い休憩場所になっているようだ。
バゲットサンドは隣国ラオスから国境を接するイサーンに伝わった朝食のひとつで、イサーンでは、フランスパンにイサーンのハム(ネーム)と少し甘い中華ソーセージ(グンチヤン)のスライスを挟むことが多い。
お持ち帰りで注文したら、まず最初にフランスパンを七輪で炙ってくれた。七輪で焼くトーストなら、チェンマイでもバンコクでも朝や夜の屋台で見かけるが、フランスパンはいかにもイサーンという感じがする。
フランス領だった時代があるラオスでは、「カオチー」と呼ばれるフランスパンが市場なんかで毎朝売られていて、首都ビエンチャンの路上の店でも、それを注文するとやっぱり七輪で炙って出してくれた。カオチーって、もともとは丸めたもち米を炙る焼きおにぎりみたいな食べ物のことを指すのだが、フランスパンを炙ることもカオチーと呼ぶところに主食としての定着度がうかがわれて面白い。ベトナムだとバインミーかな。ハノイでは夜に食べた。
ちょっと冷えるので、パンが焼けるまで、七輪にあたるようにしてカオチー屋さんと立ち話をした。彼女の話では、はじめはこの土地の持ち主であるイサーンのウドーンターニー県出身のお婆さんがカオチーを売っていたらしい。80歳を過ぎ、お婆さんは故郷に戻ることになり、たまたまその土地を借り受けた北タイ人の彼女がお婆さんの商売を引き継いだという。そんなカオチーのご縁ってあるんだな。
しばらくするとにんにくの匂いが漂ってきた。パンの表面がツヤツヤしていて、どうやら「ガーリックマーガリン」が塗られているらしい。個人的にはフランスパンの表面のカリカリが好きだから塗らない方がいいけど、ご丁寧に全てのフランスパンに塗ってあった。
パンが温まる前にポツポツと雨が降り出した。カオチー屋さんは慌てて大きなパラソルを七輪の上に広げた。火が弱くて、網を外して炭を動かしてもカオチーはなかなか焼けない。まだ慣れてないようだ。
足元が冷えてトイレに行きたくなってきた。木影のベンチのおじさんたちは濡れないのか、全く動こうとしない。
あー、またいつかラオスで本場のカオチーが食べたいな。
朝霧や七輪で焼くフランスパン
七輪の炭火をおこす朝餉かな