資金調達ニュース(コンシューマー向けサービス編)Vol.4
“天パVC”ことXTech Vetures 古川です。Twitterも是非フォローお願いします。VCリストも作っています。ぜひご活用下さい!
このnoteでは、国内外のC(コンシューマー)向けサービスの資金調達ニュースを紹介しています!ざっくり一週間分です。
※VCリストでの分類と同じく、下記カテゴリ毎に纏めています。
①Health/Bio/Wellness
■オーダーメイドインソール「HOCOH(ホコウ)」開発、ANRIとアシックスのCVCから資金調達
👉調達額は非開示。「足の専門医の知見を学習させたAIと3Dプリンタを活用し、骨格補整用インソールを自分の足に合わせてつくる」サービスとのこと。
■DNA検査で犬の健康問題を早期発見するEmbark Veterinaryにソフトバンクも投資
②Lifestyle
■全国14の教科書出版社と提携、有償導入600校超の中高生向けデジタル教材・問題集「リブリー」が資金調達
👉デジタル教材+AIドリルを提供。具体的には、端末で複数の教科書や問題集を管理(デジタル教科書・教材)し、生徒の学習状況や理解度に合わせた個別最適化学習(類似問題提示など)が可能になるサービスを展開。対応科目は、数学、物理、化学、生物、地学、英語。
2018年「学校教育法等の一部を改正する法律の公布」により2019年4月から、紙の教科書の一部をデジタル教科書に代えて使用することが認められた背景もあり、今後、教科書のデジタル化が進み、絶対必要な部分(あるのか?)だけを残し、紙の教科書は廃止の流れになりそう(「置き勉」もいつか死語になるはず)。この次に出てくるatama+とコンセプトは近いが、リブリーは教科書出版会社とも連携しており、学校側・出版社側双方にとって必要とされるポジションを狙っているが、atama+はAIによる学習カリキュラムの最適化を強みに、塾・予備校など(あくまで現状は?)学校以外をターゲットにしている。
リブリー代表の後藤さんのnoteにて、ここに至るまでの経緯が詳しく語られています。
Libry(リブリー)サービスサイトより引用:https://libry.jp/
■AIで生徒への指導を個別最適化する学習システムのatama plusがテマセクなどから51億円調達
👉「塾生・予備校生向けAI学習教材」事業を展開。今回シリーズBでDCM、ジャフコに加えて、シンガポール政府系ファンドのテマセク・ホールディングス傘下のPavilion Capital、ティー・ロウ・プライスなど海外機関投資家も入った大型の資金調達を実施。
下記画像のように、学習科目(英語・数学・理科・社会)の中で理解出来ていない項目が何かを判別し、さらに根本的に理解出来ていない部分を抽出し、無駄なく最短距離で学習を進められるための専用カリキュラムを作成。学習データから生徒一人一人に対して、個別に理解不足な点を提案できる。現在は中高生向けに展開。体系化・構造化できるものであれば展開できそうなので、ゆくゆくはプログラミング、弁護士や医師など高度専門知識系の学習領域にも展開可能性がありそう。
atama+サービスサイトより引用:https://www.atama.plus/course/junior/
■ソフトバンク、インドのフードデリバリ大手「Swiggy」の12.5億米ドルのラウンドに参加
■誰でも緑の指に、植物の種類や日当たりなどに合わせた栽培のアドバイスをくれるアプリ「Greg」
■植物由来食品の普及に向けフードテックのNotCoが約259億円調達、アジア進出も視野
👉約7,351億円という巨大ファンドを先日クローズしたTiger GlobalがリードVCとなり約259億円を調達。今回ラウンドで評価額1,650億円でユニコーンに。
ここ直近で、植物肉(Green Meat)、人工培養フォアグラ、植物由来チキンなど国内外含めて資金調達ニュースが連続していますが、今後も調達が続きそうな分野の一つです(この後、エビ培養肉スタートアップも出てきます)。「NOT MILK」という潔いパッケージが印象的で、他にも「NotBurger」「NotMeat」「NotCream」「NotMayo」があります。「独自に開発した人工知能技術「Giuseppe(ジュゼッペ)」は、何千もの植物性の食材の中から、動物性タンパク質に代わる理想的な何かを探し出す」とあるように、AI技術をベースに新製品開発を高速で進められる点に強みがあるようです。
NotCoサービスサイトより引用:https://notco.com/us/
■日本初の女性に特化したメンタリティ教育・キャリアスクールを手がけるLiLiが総額1億円のプレシリーズA調達
■「推し活」もはかどるソーシャルカレンダーアプリ「Skele」運営のpowが総額5100万円調達
■ガーデニングに特化した英国のマーケットプレイス「Sproutl」はアドバイスやアドバイスで園芸をもっと身近なものに
■メンズケアD2Cブランド運営Pangaea Holdings、世界的投資グループEurazeoから5,300万米ドルを調達
■シンガポール発エビ培養肉開発のShiok Meats、ブリッジ資金を調達——韓国「配達の民族」や日本の東洋製罐HDらが参加
👉もはや培養できない肉なんてこの世の中にあるんでしょうか。海原雄山、山岡士郎親子がいたら、どんなコメントするのか、美味しんぼで代替肉・培養肉の回があったら見てみたいです。
■Fammを運営する株式会社Timersが戦略的パートナーシップ構築を目的にNTTグループ、マイナビ、朝日新聞グループ、名古屋テレビグループ各社から資金調達を実施
③Media/Ad/Entertainment
■不条理でホラー感あるファンタジースポーツ「Blaseball」、モバイル化に向けて3.3億円のシード資金調達
■動画コンテンツを「読み取る」ことで、より効率的な検索を可能にするAnyClip
👉動画内に(ビジュアル的に)含まれる要素をリアルタイムで解析する技術を提供。具体的には、解析した要素をベースにした動画検索ソリューションを提供。約51億円を調達。
少し古いですがこの2016年のCISCOレポートでも予測されている通り、2021年にはインターネット上のトラフィック量(データ容量基準?)の82%を動画コンテンツが占めると推測されています。多少誤差は出ているかもしれませんが、TikTok、YouTube、Instagramストーリーズ、Netflixなど筆頭に動画コンテンツが台頭している現状からすると違和感ない予測です。
「VNI Complete Forecast Highlights」より引用(© 2016 Cisco and/or its affiliates. All rights reserved)
実際、YouTubeやTikTokはもはや巨大なデータベースになっており、一般消費者向けにサービス・商材を展開する事業者視点で言えば、ブランドマーケティング観点においてこの動画データベースをしっかり認識・把握し、どういった文脈・ビジュアルの中で自社商品やサービスが他視聴者の目に触れているか、またより直接的に購入者からどういった内容でレビューされているか、ブランドとしてきちんと接続された状態(アクセスできる状態)にしておくことは必須になっていくのでと思います(炎上リスクやブランドイメージ保護のためのコントロールという意味合いでも)。
C向けではないですが、ブランドがユーザーによる動画レビューを発見・活用しやすくするための動画を見つけたり、フィルタリングするためのソリューションを提供する会社も出てきています。
一方、YouTubeやNetflixを1.5倍速程度で見るのは当たり前になっている人も多いと思いますが、(映画やドラマなどはじっくり見るかもしれませんが)一般消費者においても根底にはコンテンツを効率良く消費したい欲求があるのではと思います。そういった意味では、今見ている動画の中にどういう情報がどの程度入っているかという定量的なデータはサムネイルやタイトルだけからは判断出来ず(早送りするときの小さいワイプだけで見極めることもしばしばある)、動画を見ながら直感的にそういった情報が得られれば、結果的に、コンテンツ提供側としてもその情報を求めている人に正しく届けられる機会が増えそう、かつ見る側も、視聴前の期待が満たされるコンテンツなのかどうかよりスピーディーに判断できるメリットはありそうです。
■コンピュータービジョンを利用した誰でも使いやすいビデオエフェクトの動画エディターVOCHIが全世界的に人気
■ピンク・フロイドのドラマーも出資するDisciple Mediaはクリエーターエコノミーのためのプラットフォームを構築
⑤Frontier
■Rivianが事業拡大を見据えAmazonのファンドなどから新たに約2760億円調達
■岩瀬大輔氏ら、NFTプラットフォーム「KLKTN(コレクション)」をローンチ——BEENOSらから400万米ドルを調達
⑥Finance/Fintech
■消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスク式の財務プラットフォーム「Monarch」が5.3億円調達
天パVCの一言
2020年9月時点のガートナーのハイプサイクルでは、いわゆる「幻滅期」のどん底に向かっているとされた“人工知能(AI)“技術ですが(期待ピークは過ぎ、定着まで5-10年かかると予想されているような状態)、実際のところは既に、パーソナライズドな学習カリキュラム・教材や、人力では辿り着けない最適解を出す(上記では代替肉になり得る植物性食材の組み合わせを抽出)など、意識させないレベルで自然にAI技術が実装・反映された製品・サービスが提供されており、ことさらAI推しという感じではなくなってきている印象です。
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