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山田から連絡がきた話


 インフルエンザを発症した。何十年ぶりだろうか。風邪を引かない体質なので(なんとかは風邪を引かないというではないか)自分でも驚いている。11月くらいから精神的に落ち込み始め、ずっと精神の低いところを流れていた。そこに3泊4日の、4:00〜23:00まで働く関西出張が加わった。普段と異なる環境に慣れず、ぐったりとしていた。また周囲ではインフルエンザも流行っていた。インフルの発症条件は整いすぎるくらい整っていたのだ。38度以上の身体でふらふらと仕事をして関東に帰り、病院に行ったら「インフルエンザA型ですね、お薬処方しておきますね」と早口で言われたのであった。


 出張1日目。山田からLINEが入った。山田の誕生日に、おめでとうってスタンプを送った以来のやりとりだ。『そういえばこの前言い忘れたんだけど』『あれからなんかできるようになった?』。これはセックスにおいてできることが増えたか、という質問である。何が?ととぼけることもできたけれど、主語の足りない、日本語の不自由な山田に(そしてそれは半分照れ隠しなのであることをわたしは知っている)慣れてしまったこともあり、そして出張中につかれていたこともあり、「なにもないよ」とぶっきらぼうに返してしまったのだった。

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