かしこさの階段「ステップ期」の子どもたち
1 ステップ期とは?
「ステップ期」とは
子どもたちが学びに向き合うための心の準備を終え、学びに向かって走り出す時期
のことです。
ホップ期と同じく、ステップ期にも3つの段階があります。
その段階とは
やってみる
わかる
できる
の3つです。
落ち着いた学級であれば、大多数の子はこの段階にいます。
この段階にいる子は基本的に素直に学習に向かいます。
そのため先生は
「この子達は自分たちで出来るから大丈夫」
と思いがち。気になる子の対応に追われがちです。しかし、実はこのステップ期にいる子こそ、しっかり目をかけて伸ばしてあげることがたても大切です。
それでは、ステップ期の子どもたちはどのような特徴があるのでしょうか。説明していきたいと思います。
④やってみる
ステップ期の1段目。それは「やってみる」という階段です。
この段階の子どもたちも細かく分けるとさらに2つの段階にわけられます。
その見分け方はのキーワードとなるのは「文句(もんく)」です。
(1)文句(もんく)を言いながらもやってみる
この段階にいる子はやらなければならないことに向き合う際に
「否定的な言葉(文句)」を口にします。
「こんなのやりたくねー」
「めんどくせー」
というはっきりした不平不満や
「こんなの絶対にできないよ」
と言ったつぶやきまで様々なものがあります。
この段階にいる子の特徴は「自分に自信がない」ということです。
今までたくさん失敗してきた中で、自信を無くししているのかもしれません。
もしくは「できないことがだめなこと」と思い込んでいるのかもしれません。
そういう不安を「文句」を言うことでまぎらわせているのです。
以前担任したCくんもそんな子でした。
私が「今日はこれをしようね!」と話すたびに必ず
「えーーー!」
と言います。
課題に取り組んでいる時も
「こんなの絶対できないよ」
とぶつぶつと言います。
こういう子の不安を受け止めながらも
「失敗してもいいんだよ。次の階段(文句を言わずに)に登ってごらん?」
と伝え続けること。それが大切です。
(2)文句(もんく)もいわずにやってみる
この段階にいる子は、たとえ不安を感じていても自分の内側でその不安を処理して課題に挑戦することができます。どのようなことにも、まず取り組んでみようとする姿勢が身についています。
落ち着いた学級の大多数はこの段階にいます。そのため先生はこの段階にいる子を「当たり前」と思いがちです。しかし「たとえできなくても、とりあえず挑戦してみよう」と思えるのは実はすごいことなのです。
文句も言わずに取組む姿勢が見られたら、その前向きな気持ちを大いに認めて上げることが大切です。「当たり前」を「すばらしいこと」と認めてあげる積み重ねが子どもたちにやる気を刻み、挑戦することへの不安を払拭させていきます。
冒頭で「ステップ期」とは
子どもたちが学びに向き合うための心の準備を終え、学びに向かって走り出す時期
だと述べました。子どもたちが文句も言わずにやってみようとする姿勢が身についた時が「ステップ期」のスタートラインに立てたと言えるでしょう。
⑤わかる
「ステップ期」の2段目は「わかる」という階段です。
この段階にいる子どもたちは、基本的に自分で問題に取り組むこともできますし、友達と学び合うこともできます。課題に対して自分で学びのスタートを切ることができる子どもたちです。
この段階の子どもたちは一見声をかけなくても、しっかりと出来ているように見えるでしょう。しかし、この段階の子ども達と話してみると一見しっかりわかっているように見えながらも、実はよくわかっていなかったり、一人でやってみるとできなかったりすることが多くあります。
私はこの状況を
「わかるとできるの間」
という風に呼んでいます
友達や先生と一緒にやるとできる。
けれど、1人でやってみるとなかなかできない。
そういう子はまだ「わかる」の段階にいると言えるでしょう。
これが理解できた子は、自分1人でできるかどうかを確かめ始めます。
1人でもできるかどうかを考えながら挑戦を重ねる子と
とりあえずやればいいと考える子
どちらが伸びるかはもう明らかでしょう。
⑥できる
「ステップ期」の3段目は「できる」という階段です。
先ほどと同じように、この段階の子どもたちはしっかりと理解し、自分1人で課題に取り組むことできます。「できる」の段階の子は友達や先生の力を借りなくても自分一人でやりきることができます。この段階のことが「できる」の段階です。
学校教育の中でこの「できる」の階段にいるかどうかをチェックしている最大の方法は「テスト」です。大部分のテストは話し合いながらやってはいけません。自分1人でできるかどうかを確かめる。つまり「できる」の段階にいるかを確かめる調査なのです。
授業中、先生や友達と一緒に取り組んだ時はできていた。でも、テストになったとたんできくなってしまった。こんな経験は誰もがあると思います。これは
「わかっていた」(友達や先生とはできていた)
けれど
「できる」(1人でできる)
の段階にはいなかった。
ということです。
実はこの「わかる」と「できる」の階段を上ることが私は一番難しいのではないかと考えます。
これは学習だけではなく、日常生活においても同じです。
私のクラスのDくんの例をあげましょう。
私が廊下を歩いているとDくんがすごい勢い走りながらで曲がり角を曲がってきました。スピードをつけて走ってきたためDくんは私にぶつかりそうになりました。ギリギリでかわしたDくん。
「見つかっちゃった…」というバツの悪い顔をしています。
私は Dくんに聞きました。
「Dくん。ろうかは走っていいのかな?」
するとDくんは首を振ります。そして言いました。
「ろうかは走っちゃいけないです…」
私と一緒ならばDくんは「ろうかを走っていけない」ということをしっかりわかっているのです。しかし、Dくんは
「早く遊びに行きたい!」
と思うあまり走り出してしまいました。
…ということはこれは「できる」の段階にいるとは言えません。
「わかっているけど、なかなかできない」
このようなことは私たちの身の回りに沢山あふれているのではないでしょうか?「かしこさの階段」では「わかる」と「できる」の階段が周りより少し高くなっています。
後ほど書こうと思っていますが、私はこの部分に着目して道徳の学習をつくっていくことが大切だと考えています。
ここ(「わかる」と「できる」の間)について考えさせることが、普段の学校生活や自分の成長を見つめる上で非常に大切になります。
後の章ではこの部分に着目した道徳授業とはどんな授業なのか。それをまとめていきたいと思っています。
次はいよいよ「ジャンプ期」に入ります!
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