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かしこさの階段「ホップ期」の子どもたち

1 ホップ期とは?

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「ホップ期」とは
「子どもたちが学びに向き合うための心の準備」
をするための段階です。
ホップ期には全部で3つの段階があります。
その段階とは

① 逃げ出す
② 邪魔をする いやがることをする
③ やろうとしない

という段階です。
教室の気になる子というのはこの段階にいることが多いのではないでしょうか。
 このホップ期の段階にいる子が教師に多数いると、教師の支援が行き届かなくなります。その結果、学級が落ち着かなくなり最悪のケースになると学級崩壊に至ってしまうこともあります。この「ホップ期」にいる子ども達をいかに理解し、ステップ期・ジャンプ期に導いていくか。それがとても重要になってきます。
それでは、それぞれの段階の子の特徴を具体的に説明していきます。

①逃げ出す

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 この「逃げ出す」の段階にいる子は、何らかの原因で目の前の現実から逃げ出そうとしている子です。この段階はさらに細かく分類すると

(1)学校から逃げ出す
(2)教室から逃げ出す

という2つのグループに分けることができます。

(1)学校から逃げ出す

これはいわゆる「不登校」と呼ばれる段階です。

前の日は行こうと思っていた。でも朝になると行けなくなってしまう。
学校に行こうと思って出発したけれど、学校の近くにくると足が止まってしまう。
学校の玄関までは来たけれども、車から降りられず泣きわめく。

このような子ども達は「学校から逃げ出す」という段階にいます。


(2)教室から逃げ出す

集中できず授業中でも廊下をふらふら歩いている。
トイレに頻繁に行く。そしてなかなか戻ってこない。
教室には入らずに、保健室に登校している。

このような状況の子ども達は「教室から逃げ出す」という段階にいます。
学校の中には入れた。けれど教室の中に留まることが難しい。
もしくは教室に入ることができない。
このような状況にある子供たちのことです。

このように「逃げ出す」は2つの段階にわかれます。
気をつけていきたいのは、
この言葉は「責める」ために使うものではないということです。

以前、保健室登校していたある女の子がこう言いました。

「私…どうしても教室に入れないの…教室に行こうとすると体が重くなって…」

その子はため息をつきながら言いました。
その子は教室に入れないという事実を見つめ、教室から逃げ出している自分を責めているのです。

そこで私はかしこさの階段を見せながらこう言いました。

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「○○ちゃんは前は学校に来るのもつらかったよね。その時は『学校から逃げ出す』という所にいたんだね。でも今は階段を1段登ってきたんだよ。きっとこれからも階段を登っていけるはず。大丈夫だよ。」

この段階にいる子に大切なこと。それは
「自分は少しずつ成長している」という安心感です。

「あなたは教室から逃げ出している!だからだめだ!」
という叱責のために使っては、子どもたちはどんどん自分を責めていきます。
そうではなく、
「大丈夫!きみなら伸びるよ!」
と励ますために使っていくことが大切です。

②じゃまをする・いやがることをする

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この段階にいる子は
教室の中で過ごしてはいるけれども、人にちょっかいを出したり、嫌がることをしたりして他人の気を引きます。

ふらふら立ち歩いて、友達の勉強を邪魔したり
黒板の前に立って授業妨害したり
友達の物を取って隠したり

その妨害方法は様々です

この段階にいる子どもたちが数名いると、わざと大きな声でおしゃべりをして邪魔をするという集団で授業を妨害するという行為にもつながります。

この段階にいる子は基本的に教室から飛び出すことはしません。
「先生やクラスメイトに注目してもらいたい」
という思いを強く持っているからです。
そのような思いが「じゃましたり、嫌がることをする」という行為を生み出しています。

先ほどの「逃げ出す」という段階の子どもたちはつらいことを「自分の内側」にためていきます。それに対してこの「じゃまをする・いやがることをする」という段階の子どもたちは「自分の外側」に発散させていきます。

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一見すると「じゃまをする・いやがることをする子」の方が問題児で
「逃げ出す子」の方が扱いやすい。
だからじゃまをする子・いやがることをする子の方がかしこさの段階は下なのではないか?そう思われる方もいると思います。
しかし、それは違うと私は思います。
「じゃまをする・いやがることをする」
という子は「注目してほしい」という感情を(まちがった方法ではありますが)表現することができています。
しかし「逃げ出す」段階にいる子は、何もしないことで注目を得ようとしているのです。
まずは感情を出せるようにすること。
それがかしこさの階段を登るためには大切です。
問題行動を起こす子どもたちにも、
「まちがっているけれども、感情を表現できている」
このようなまなざしを向けることができると、先生の口から出る言葉もやわらかく変化していくことでしょう。

③やろうとしない

ホップ期の3段目。
それは「やろうとしない」という段階です。

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この「やろうとしない」という行為も厳密に言えば2つに分けることができます。その見分け方は、「机にいるかどうか」です。

(1)ねころがってやろうとしない ふらふら立ち歩いてやろうとしない

友達のじゃまをしたり、嫌がることをするわけではない。
でもやるべきことをやろうとしない。
そのような子はこの段階にいる子です。

 以前担任したBくんは集中力がもたず、やりたくなくなるとすぐに席から離れふらふら立ち歩く子でした。調子が悪い時は、机の横に寝転んで動こうとしません。席に座らせようとしてもタコのように全身の力を抜き、席に座ろうともしないのです。教室の中で自分の居場所にとどまることができない。このような状態の子が

「ふらふら立ち歩いてやろうとしない」
「寝転がってやろうとしない」

という段階の子です。これは年齢が低い子によく見られる行動です。


(2)座っているけれどやろうとしない

 これをお読みいただいている先生はこの段階の子をたくさん思い浮かべることができるのではないでしょうか。

・自分の席に座っているけれど鉛筆を持とうとしない。
・集中することができず手いじりをしている
・筆箱の中身を出して遊んでいる

このような子ども達です。この子達は自分の席に座っているので
「逃げ出す」「じゃまをする」段階の子とは違い

「みんなと一緒に授業を受けよう」
「学習して賢くなろう」

という気持ちをもつことはできています。
しかし、その気持ちを上手く保つことはできず、集中力が途切れてしまう。
そんな子ども達です。

 このような子ども達はクラスの中にたくさんいます。学級経営において大切なのはこういう子どもたちを階段の下に降ろさないことです。4月は落ち着いていた学級。しかし、時が経つにつれて学級が落ち着かなくなり、最終的には学級崩壊を起こしてしまう。
 このようなことが起きるのは、この「席に座ってやろうとしない」という階段にいる子どもたちが
「ふらふら立ち歩いてやろうとしない」から「人の邪魔をする・嫌がることをする」へ。そして「逃げ出す」へ。
という風に階段の下に降りてしまった結果です。

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「やろうとしない」
この段階にいる子どもたちをどうやって次の「ステップ期」へ高めていくか。
それが学級を作る上でとても大切なことになってきます。

「ホップ期」まとめ

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 以上がホップ期の子供たちです。「ホップ期」とは言わば「スタートラインに立つ準備期間」です。学級には様々な子どもたちがいます。その中にはスタートラインに立つことすらも難しい子もいます。その理解をする上でこの「ホップ期」の子どもたちの状況を先生が理解してあげることははとても大切なことでしょう。
 
 私たち教師の目にはこの「ホップ期」にいる子ども達は全て「困った子」に映りがち。そのため「どうしてそんなこともできないの?」「君はいつもそうだよね」という叱責や「あの子はどうせだめだよ」というあきらめにつながりがちです。
 しかしこの「ホップ期」の段階が理解できれば、その子自身の小さな成長が見えてきます。

 教室から逃げ出していた子が、友達にちょっかいを出しながらも教室にいた。そうしたならば「教室から逃げ出す」から「人のじゃまをする」という階段を登ったことになります。

 寝転がってやろうとしなかった子が、席に座って鉛筆を持った。これも「やろうとしない」から「やってみる」への階段を上ったと言えます。

 このように子どもたちの小さな成長をこの階段に照らし合わせて見つけていくこと。それが先生の心の余裕を生み出します。この心の余裕が子ども達に肯定的な言葉をかけることができるようになるためにとても大切です。

 ただし、気をつけなくてはいけないのは
「人の成長が階段を上るように訪れるわけではない」
ということです。
教室から逃げ出していた子が、教室の中に入れた。
しかし、次の時間には再び教室に入れなくなる。
そのようなことはよくあることです。

 階段を上ったとしても、子ども達がすんなりと次の段階へと登っていけるわけではありません。
降りては上って、降りては上って…
をくり返し、自分がその階段を確かに登れるかどうかを確かめていくのです。

何度も上り下りしていく中でみんな成長していくんだよ

そのように教師が言ってあげられること。それが「ホップ期」にかかわらず、どの段階においても重要です。

「何度も登っているうちに必ず登れるようになるよ!」
「1度登れたんだからまた登れるよ!」

この階段の意味をしっかりと理解できれば、このような肯定的な言葉がけが自然とできるようになっていくでしょう。(ステップ期に続く…)

お読みいただきありがとうございます!
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