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ブラックペッパーとカスタムオーダーの話。
ショッピングモール内のフードコートでご飯を食べた時の話。
息子は小学校低学年ながら、モリモリとご飯を食べる大食漢だ。特に、最近はステーキが大好物だ。大人が食べる量をペロリと平らげる。ただ、あまりに食べ過ぎてぽっちゃり傾向にあるので、極力外食は控えるようにはしている。
まぁ、この日は久々のフードコートということで、息子に「何が食べたい?」と訊くと、やっぱりステーキを注文することになった。
ただ、そこはまだ小学生らしく、ステーキのお肉にまぶしてある黒コショウは辛すぎるとのことで、それは抜いてもらうように注文をした。
私「あっ、コショウ抜きにしてもらえますか」
店員さん「かしこまりました」
すると、隣に居た息子が「コショウ抜きって、お金はかからないの?」と訊いてきた。「いや、そりゃかからないだろう」と答えそうになって、私はとっさに口をつぐんだ。コショウはあらかじめ料理についているトッピングのようなものだから、それが無いことで追加料金がかかるはずないだろう。最初はそう思った。けれど、本当なのだろうか。
イレギュラーな注文ということ
私には飲食店で働いた経験が無いのでよく分からないが、そのお店がチェーン店であったり、オペレーションマニュアルがきっちりと決まったところであれば、きっと料理に使うべき食材や調味料はほとんど正確に決まっているのではないかと思う。
今回のようにステーキを提供する場合でも、その料理に合ったサイズのお肉が用意されていたり、その分だけ切り分けたりして、それを焼く。焼く時間も決まっているし、途中で入れる調味料の種類もその分量も決まっているだろう。お肉と一緒に焼くのか別で用意されているのか分からないが、付け合わせのコーンやブロッコリー、ニンジンなども、決まった大きさがあって、焼き加減とか焼き時間も、その料理に合わせたものがあるはずだ。焼きあがったステーキや付け合わせを鉄板の上に乗せたら、セットにしているライスの量も恐らく規定があるはずだ。
そこに、たとえば「ご飯は少なめにしてください」とか「コーンは抜いてください」とかいうカスタムオーダーを気軽にやってしまいがちだけれど、本来はこのマニュアルから外れた注文なわけだ。
つまり、そういう注文をするということはイレギュラーなのだ。本来の流れと異なる、例外の対応をしないといけないということ。それは手間であり、本来はその分のコストがかかる可能性もある。
「コショウ抜いてください」くらいだったら許容範囲かな、と一瞬思ったりもしたけれど、反面「じゃあ許容範囲ってどこまでなのか」と思った。
他の料理屋さんでこんな出来事があったのを思い出した。
海鮮料理屋さんの話
そこは、よく行く海鮮料理屋さんなのだけれど、とれたての魚が市場直送で使われているから、何より新鮮で美味しい。日替わりの海鮮丼なんかは、どんなネタになるのか分からないので、私は、むしろ楽しみにしているくらいだ。
その店でいつものように海鮮丼を注文して、料理が提供されるのを待っていた時のこと。私の後からお店に入ってきたお客さんが、こんな注文をしているのが耳に入った。
お客「バラちらしの海鮮丼ください」
店員さん「はい、バラちらしですね」
お客「あっ、ごめんなさい。その海鮮丼って、ヒカリモノ入ってます?」
店員さん「確認しますね」
・・・
店員さん「はい、今日はアジなんかが入っているみたいです」
お客「そう。他には何が入ってる?」
店員さん「えっと、すみません。ちょっと確認してきます」
・・・
店員さん「アジと、●●と、〇〇と・・」
お客「じゃ、それ全部抜いてくださる?ひかりもの食べられないんで」
店員さん「(厨房の店主に)ひかりもの抜きできますかー?」
店主「できねえよ!バラちらしなんだから」
こう書くと滑稽だけれど、もしかしたらお客さんのほうはアレルギーなどで、そういう光り物の生魚が食べられなかったのかもしれない。最後のほうはよく聞こえなかったけれど、たしか結局そのお客さんは、焼き魚だかの定食の料理を注文していたと思う。
ただ、店主としては、仮にもしそのカスタムオーダーを飲んで、光り物抜きのバラちらしを作るとしたら、一つ一つ細かく切り分けた魚を別々に分けて取り除いて提供しないといけないので、相当な手間がかかるはずだ。いや。バラちらしって普通、魚の種類ごとに細切れにして分けているのかな。分かんないけど。どちらにせよ、きっと通常よりも多少の面倒くさいオペレーションを経て、調理しなければならないだろう。
そう考えると、たかだか「コショウ抜いてください」というのも、きっとお店としては「めんどくせえな」と思われている可能性はある。本来「要らない手間」をかけることだから、もしかしたら「逆トッピング」として追加料金を請求されても仕方ないと思ってしまいそうだ。
完成された1つの料理として考えた場合
他方で、「このステーキにはこのコショウ」という組み合わせで一つの料理だという考え方もあるかもしれない。
ステーキ+コショウだと比率的には圧倒的には違うけれども、例えば、カツカレーがあるとして、「すみません、僕カツとカレーだけ食べたいんで、ライス抜きのカツカレーでお願いします」みたいな注文がされたケースを考えてみたい。
カツ+カレールゥ+ライス、1セットで完成された料理としてのカツカレーだ。カツカレーライスと言ってもいいが、長いのでカツカレーとする。それを「ライス抜きで」ということは、それはもうカツカレーという料理ではないことはたしかだ。カツカレーというかカレー掛けカツだ。きっと完成された料理ではない。足りないのだ。
では、ライス抜きにもかかわらず、お店としてはカツカレーの料金を請求していいのか、そしてお客としてもカツカレー料金を支払わなければならないのか、というと疑義が残る。その料理の値段は、完成された「カツカレー」としての代金ではないのか、ということだ。
その場合、お店によって「うちはご飯無しでもカレーライスの料金でやってますんで」というところもあれば「ライスの分は、安くしておきますね」というところもあるかもしれない。
うどん屋さんの話
カツカレーの例が分かりにくければ、うどん屋さんで考えてみよう。サラダうどんがあるとして、「あっ、すみません、サラダうどんで、うどんの麵少なめでお願いします」というケースだ。
うどん屋さんだから、1玉の分量は決まっている。なのに、麺少なめという、なんとも面倒くさい注文をしてくる人間がこの世には居るのだ。
・・すみません、私です。よく行くチェーン店のうどん屋さんでは、半玉を注文させてもらっています。。
さて、「半玉でお願いします」と注文した時、慣れた店員さんならいいが、新人さんなんかだと「えっ、半玉ってどのくらい?・・ああ、この麺が●●本分ですね」みたいな会話のやり取りが漏れ聞こえてきたりする。
さらに、そのお店では半玉の料金は、通常よりも少し安くなっている。別にケチって私は半玉にしているわけではなく、最近胃の調子が良くないというか食が細くなってしまったので、そこまで食べられないから半玉にしている。完全に私の都合なわけだ。にもかかわらず、値段は割り引いてくださる。申し訳なささえある。たたでさえ、麺1玉の分量が乱れるのに、さらに料金まで下げるとは。
その確認の手間や、麵の分量を乱したことを考慮すれば、むしろ通常料金でもいいと私は思ってしまうくらいだ。
どちらの例も分かりにくかったですか、すみません。
結論
何が言いたいかというと、いずれにせよ、カツカレーライス抜きも、うどん麵少なめも、ステーキコショウ抜きも、たとえ些細な作業であったとしても、そういう手間が掛かっているのにもかかわらず、無料(料金が定価と変わらない)というのは、お店がかかるべきコストを無視してくれている。つまり、お店側の優しさなんだろうなと思った。
息子からの純粋な質問で気付かされたお話でした。おしまい。