ゲームに頼りすぎると傷つくことがある話。
まだまだある息子とゲームの話。
現在、彼は、「スーパーマリオワールド」というゲームソフトにどハマりしている。これは私のような三十代後半とか四十代の方であれば、昔懐かしいスーパーファミコンでお馴染みのあのソフトだ。テテテト、テテテト、テーテー♪という軽快なオープニングBGMのあれだ(音痴ですみません)。マントを羽織ったマリオでグワングワンと延々と空を飛ぶことができる画期的なあのシリーズと言えば伝わる人も居るだろうか。
そして、我々世代が子供の頃に夢中で遊んだのと同じように、息子も、スーパーファミコンでそれをプレイしている。
と言っても、前に記事でも書いたが、当時のままのハードではなく、「クラシックミニ」という、何とも便利なハードで遊んでいる。
息子は、この中に内蔵されている「スーパーマリオワールド」で遊ぶのが、大のお気に入りだ。
そんなある日、私が二階で寝ていると、一階から、怒号にも似た彼の泣き声が聞こえた。
どうやら、そのマリオワールドの「キロク」つまりセーブデータが消えてしまったらしい。一生懸命にステージを進めてクリアしたものが、一瞬にして消えてしまう絶望。最近のゲームは知らないが、それこそ現役時代のファミコンやスーファミとかで遊んでいた自分としては、もはや「あるある」なのだけれど、齢七歳にして彼は、その洗礼を受けたというわけだ。
彼は、力いっぱい叫んだかと思うと、母親の胸に飛び込んで、しばらくオイオイと泣いていた。小さく震える息子の背中を見ていると、心が痛んだ。
そういうもんなんだよ。パパもよくセーブデータが飛んで悲しみに暮れたよ。昔は、遊んでいる途中に調子が悪くなったら、こんなことをしたもんだ。まずハードのリセットボタンを押す。それでもダメなら、きちんと一旦セーブをしておいてから電源を落とし、それでカセットを取り外して、ソフトとハードの接続部にフーフーと息を吹きかける謎の行為(これをすればすべての不調が直ると思っていた)をおこなったうえで、再度ガチャンとカセットをセットする。そして電源ONをする。それをやったら、あら不思議、それでもやっぱり無情なことにセーブが消えることもあったのだ。
「あんまりゲームばっかりやってんじゃないよ!」と母親に言われた直後にセーブが消えたりすると、何の因果関係もないはずなのに、意味も無く親を恨んだりしたものだ。
特にゴエモンやスーパーデラックスは何度も消えた記憶がある。その度に絶望し、地獄の淵から何度も立ち上がったものだ。そう考えると、ロックマンXなどはステージが進むとそのたびにパスワードという数字の羅列が表示される仕組みになっていた。当時は、いつセーブが消えても良いようにパスワードを暗記していたような気がする。やり込んでいた友人も同じで、当時はみんなで必死にその二、三十桁くらいの無意味な数字の羅列を覚えたものだった。
きっと、メモリという物理装置ではなく、人間の記憶に頼るという、もしかしたら今にしてみても安全なシステムだったのかもしれない。話が脱線した。
さて、母親の胸でひとしきり泣いた後、少し前向きになった彼は、ボソッと「まぁ・・また全部パパにやってもらえばいいか」と言った。
いや、そうだよ。ほとんど全部のステージ、私がクリアしたんじゃん・・。彼はまだ小1というとこもあって、言ってしまえばそこまで上手ではない。
ちなみにゲームの遊び方として彼が好きなものはこちら。
でも彼にしてみれば、親と協力したものであったとしても、せっかく築き上げたデータ、そしてせっかく開拓したコースが、一気にまっさらになってしまうのがショックだったのよな。
まぁいいさ。もちろん、また一緒に遊んでクリアしますとも。幾らでも。
ところで、一点気になるのは、彼が「消えた!」と言っているセーブデータの状態は、よく見ると全て消えたわけではなく、なんとも中途半端な状態になっていたということだ。最初からのキロクもあれば、途中まで進んでいるキロクもある。ただ彼と私でコツコツ勧めた内容のセーブデータではないことは確かだ。普通セーブデータが消える時ってハードの中のメモリが逝ってしまうと思うので全部「最初から」の状態になるような気がするのだが…。
後日、どうしても気になって、この「クラシックミニ」というハードをよくよく見てみたところ、「中断ポイント」なる機能があるようで。ゲームをプレイ中にリセットボタンを押すことで、ゲーム内のセーブポイントではないところでも、強制的に「次はここからプレイできる」という夢のような仮設セーブポイントを設けることができる機能らしい。
だが、更によくよく説明書を読むとこんな記述も。
あっ…
これだ。
実は、このクラシックミニを頂いた時に、既にこの中断ポイントというのが作成されていた。で、私もよく使い方が分からなかったし「とりあえずゲーム内で進めばセーブできるんだし問題ないべ」と考えていた。
だが、よくよく話を聞いてみると、どうやら息子はちょっと興味本位でこの「中断ポイント」機能を使ってみたらしい。
すると、どうなるか。
という状態で、もともとゲーム内に登録されていたセーブデータが、
この中断ポイントで上書きされるので、最終的なセーブデータは、
という状態に上書きされてしまう。
だから今回、なんとも中途半端な状態になっていたというわけだ。納得がいった。厳密には機器の異常でセーブデータが飛んだというより、業界っぽい言い方をすればヒューマンエラーでデータが先祖返りをしたということになる。
まあ謎は解けたところで、失ったデータは戻ってはこない。失っても失っても、生きて行くしかないのだ。鬼滅の炭治郎のように。
ちなみに今は、息子はもう立ち直って、もう一度マリオワールドに挑戦している。ただ、前ほどそのソフトばっかりということもなく、他のゲームハードでマリオパーティをやったりスーパーマリオブラザーズUをやったり、やっぱりちょっとクラシックミニからは距離を置いているところもあるように見える。
そうだな。ゲームは楽しいが、それに身を投じすぎても良くない。今回のように裏切られることもある。信じすぎるとそれはそれで痛い目を見るからね。頼りきりにしないこと。そして不運なことに見舞われても立ち上がる気力を持つこと。彼にとってこのことが今後の良い学びとなれば幸い。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?