加熱講座4 調理道具と熱の関係
フライパンを想定しながら、熱と温度の関係を整理します。 熱量=物体の比熱×物体の質量×物体の温度となります。 ここでの物体とは、フライパンです。 そこで、フライパンでは、表面全体がむらなく160~180度の状態で食材を加熱していくことを理想とします。 表面全体という点では、早くむらなく温めることが必要で、その指標となるのが熱伝導率です。 加えて、160~180度の状態という点では、その温度を保持できることが必要で、その指標となるのが熱容量となります。
熱伝導率とは、熱の伝わりやすさの指標で、この率が高ければ、早くむらなく熱を伝えることができます。 ガラスや陶器に比べて、金属は大変優れています。 素材ごとに固有の値があります。 高い順に、銅【398W/(m・K)】、アルミ【237】、鉄【80】、ステンレス【27】、 耐熱ガラス【1.1】、陶器【1.0~1.6】となります。 厚さ1mある物質の下面から上面に温度差が1Kある時に、1平方mの面積を1秒間に流れる熱量です。 しかし、温まりやすいものは、冷めやすい。
もう一つの指標である熱容量が冷めにくさとなります。 熱容量=物体の比熱×物体の質量です。 比熱とは、温度変化のしにくさを示す値で、 1g当たりの物質の温度を1K(または1℃)上げるために必要な熱量となります。 こちらも素材ごとに固有の値があります。 その値が大きいと、温まりにくく冷めにくい。 大きい順に、陶器【1.0KJ/(kg・K)以上】、アルミニウム【0.91】、耐熱ガラス【0.73】、 ステンレス【0.46】、鉄【0.44】、銅【0.39】となります。
熱容量は、この比熱に質量を掛け合わせたものですから、質量も考慮します。 この重さは、フライパンの場合は、板厚すなわち厚みと関連します。 厚手のものほど熱容量は大きくなり、冷めにくくなります。 その結果として、温度制御がしやすくなり、一旦予熱して適温に至れば、その後は弱火で適温を維持できます。 ですから、熱伝導率だけでは片手落ちで、熱容量もそこそこにバランスのとれたフライパンが求められます。