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2025年アート市場大予測:すそ野が広がる新しい時代の始まり

2025年、アート市場は新たな局面を迎えようとしています。
低価格市場の拡大や新しいギャラリースペースの誕生、そしてコレクター層の世代交代といった動向が、これまでの市場の枠組みを揺さぶりつつあります。
これらの変化はアート市場を多様化させる一方で、初心者や新規コレクターが定着し、継続的に市場に関わるための新しい仕組みが求められています。
このレポートでは、現在の動向を踏まえ、未来の可能性を探ります。


現状分析: 変化するアート市場

1.日本のアート市場は鈍化も、コロナ以前より拡大中

まず大前提として、日本のアート市場はコロナ禍よりも確実に拡大しています。
アート市場は不況だ!など言われていて、確かに2022年から2023年と比較すれば約10%の減少となり、コロナ禍で高まった巣ごもり需要の終焉を感じられる人もいるかもしれません。
一方で、コロナ禍前と比較すると11%増と、世界全体の1%増と比べはるかに拡大していることがわかります。

出典:クレア・マッカンドリュー (Arts Economics)「The Japanese Art Market 2024」文化庁 文化経済・国際課

2.低価格帯へのシフト

手頃な価格帯の作品が増加し、新規コレクターの参入障壁が下がっています。
この動きはアートフェアにも顕著に現れており、アートフェアでも小作品が増え、手頃な価格帯の作品が増加しています。
アート市場は富裕層のものと思われがちかもしれませんが、一般層にも開かれる方向へとシフトしています。

出典:クレア・マッカンドリュー (Arts Economics)「The Japanese Art Market 2024」文化庁 文化経済・国際課

ただし、本レポートの5万ドル以下という区切りが、そもそも一般購買層とは乖離した数字になっています。
そのため、日本のアート産業に関する市場レポート2021における購入単価比率も記載します。
2019年から2021年では、10万円以下の購入者層が81%から71%に減ったとされていますが、大半が10万円以下の購入者層であることが読み取れると思います。

⽂化庁委託事業「令和 3 年度次代の⽂化を創造する新進芸術家育成事業」「日本のアート産業に関する市場レポート2021」主催:⽂化庁/⼀般社団法⼈ アート東京

3.新しいスペースの増加

メガギャラリーの日本市場進出や、オフィスビルや公共施設でのアート展示の増加、新しいギャラリースペースが誕生しています。
これにより、確実に接触回数が増えています。また、小規模なギャラリーや代替的な展示スペースも増え、作家がより多様な形で作品を発表できる環境が増えています。

4.新旧コレクターの入れ替わり

そのような環境の変化において、既存コレクター層は、経済環境の変化や高齢化を背景にギャラリーへの訪問・購入頻度が減少傾向にあります。

一方で、コロナ禍を契機に新しいコレクター層が増加しました。
在宅時間の増加やオンラインプラットフォームを通じた情報アクセスの広がりが、アートへの新しい関心を呼び起こしました。
しかしながら、こうした新規コレクター層の多くは購入後のフォロー不足やアート市場における体験価値の欠如等から、長期的な定着にはまだ至っていません。
今後の課題は、新規コレクターや潜在コレクターの新しい層を市場に取り込み、持続的な関係を構築することです。

5.感想の普及・批評の民主化

従来、アート批評は専門家や一部のメディアに限定されていましたが、SNSの普及により、一般の鑑賞者が自由に意見を発信できる時代となりました。
Tokyo art beatでも、展覧会コメント・評価機能を有料会員向けの機能としてリリースしたことは、感想共有アプリとしてスタートした我々にとっても大変勇気づけられる(そしてより一層頑張らねばと思わせる)ものでした。

この感想の普及は、批評の民主化にも繋がっています。
誰しもが感想を発信できるようになる中で、感想よりももう一歩踏み込んだ発信を期待する声が高まった結果、批評が再評価されています。
従来の批評だけではなく、半匿名の批評誌が始まるなど批評への注目も高まっており、専門家に限定されていた批評のすそ野も広がりを見せています。

6.アートコミュニティサービスの進化・誕生

このように市場に変化が起きる中で、近年、アート鑑賞や購入体験を支援するコミュニティサービスが次々と誕生しています。
ArtStickerやKAMADOなどのサービスは、アーティスト情報の提供やユーザー同士の関係構築を通じて、アートを通じた多様な関係を緩やかに繋ごうとしています。
こうした新しい取り組みは、アート市場のさらなる成長を支える重要な要素となるでしょう。

未来予測: アート市場の進化と新たなニーズ

これらの変化は、今後の市場にどのような影響を与えるのでしょうか?現状を踏まえた未来予測は、以下のような方向性を示しています。

1. アートとの長期的なつながりを目指す仕組みが進化する

アート市場の持続的な成長を支えるため、購入者とアートの長期的な関係を構築する取り組みが増えると予測されます。

  • 現在、初心者層は購入後のフォローが不足しており、一度きりの購入に留まることが多いです。これを改善するために、購入体験を記録し、次のギャラリー訪問や購入に繋げる仕組みが注目されるでしょう。

  • また、購入者が自身の成長や価値観の変化を実感できる体験型サービスが増加することで、市場への長期的な定着が進むと考えられます。

2. 信頼を軸にギャラリーの選別が進む

すそ野が広がり新しいスペースも増える一方で、購入者が安心してアートに触れられる「信頼できるギャラリー」の重要性がさらに高まると予測されます。

  • 購入者は、透明性の高い情報と信頼できるパートナーを求めています。この需要に応えられるギャラリーが、競争の中で生き残るでしょう。

  • また、購入後もギャラリーがアーティストや作品に関する情報を提供し続けることで、購入者との関係が深化し、次の購入につながるサイクルが生まれると考えられます。

3. 鑑賞力を育む教育がアート市場を広げる

購入者が「好き」と「良い」を統合する価値観を育むための教育的取り組みが普及すると予測されます。

  • 初心者層には、「良いものを見る力」を育む基礎的な教育が必要です。一方で、中級者層には、他者の評価に頼らず「好きなものを知る力」を強化する機会が求められます。

  • ギャラリーやプラットフォームが教育的なリソースを充実させることで、購入者の審美眼が深まり、長期的な市場への定着が促進されるでしょう。

Funwow.artの役割:未来のアート市場を支えるプラットフォーム

このような市場予測におけるFunwow.artの現代アートの友の会としての役割は以下のように考えています。

1. アートとの長期的なつながりを構築する

Funwow.artは、短期的な売買を目的とせず、長期的な関係構築を重視したビジネスモデルにしています。
会費制により、会員が積み立てた資金を作品購入に活用できる仕組みを提供し、アートと継続的に関わる環境を実現します。

2. 信頼できるギャラリーとの接点を作る

Funwow.artは、透明性の高い情報を提供するとともに、ギャラリーツアーを通じて初心者が安心してギャラリーを訪れる体験をサポートします。
一緒にギャラリーを訪問し、アート作品との出会いを楽しむことで、ユーザーがギャラリーとの信頼関係を築ける環境を整えます。
信頼できるギャラリーとのつながりが生まれることで、購入後も継続的に関わり続けられる豊かな体験を提供します。

3. 鑑賞力を育む教育を支援する

Funwow.artは、初心者から中級者への成長をサポートし、「好き」と「良い」を統合した鑑賞体験を提供します。
アーティストや作品の背景を理解し、自分自身の価値観を育むことで、より深いアートの楽しみ方を提案します。


Funwow.art次回イベントのご案内

Funwow.artでは、ギャラリーツアーやアーティストトークだけでなく、アートの楽しさを体感し、ギャラリーでの新しい体験を提供するイベントを企画しています。
次回は、1月24日(金)18:30~、「アート思考の技術」著者の長谷川一英さんをお招きし、KANA KAWANISHI GALLERY(清澄白河)にてワークショップを開催します。

  • 日時:2025年1月24日(金)18:30~20:30(20:30~懇親会)

  • 会場:KANA KAWANISHI GALLERY

  • 参加費

    • 現地参加:5,000円(税込)

    • オンライン参加:3000円(税込)
      *Funwow.art友の会メンバーに登録すると、参加費相当分のポイント*が付与されます!

  • 現地参加の定員:15名限定(先着順)

ぜひこの機会に、アートとの新しい出会いを体験してください!


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