ガチ勢を切り捨てるようなシステム変更をした理由(『し』を『SHI』で通らなくする等を実施)タイピング練習サービス「タイピングplus」
タイピング練習サービス『タイピングplus』を開発運営する会社の代表をしているn_shiraです。今回はガチ勢(大会出場者・トップ層・タイパー上位ランカー等)を切り捨てるようなシステム変更をした理由(『し』を『SHI』で通らなくする等を実施)について、長くなるためnoteで私の考えをお伝えします。
アップデート内容
タイピング練習において、入力の受付内容を大幅に変更するアップデートを実施しました。具体的には以下のような変更が実施されました。
◆削除
う:wu
し:shi
ち:chi
つ:tsu
じゃ:jya、zya
じゅ:jyu、zyu
じぇ:jye、zye
じょ:jyo、zyo
◆追加
うぁ:wha
うぉ:who
くぁ:qa
くぃ:qi
くぇ:qe
くぉ:qo
くゃ:qya
くゅ:qyu
くょ:qyo
すぁ:swa
すぃ:swi
すぅ:swu
すぇ:swe
すぉ:swo
つぁ:tsa
つぃ:tsi
つぇ:tse
つぉ:tso
とぁ:twa
とぃ:twi
とぅ:twu
とぇ:twe
とぉ:two
ヵ:xka、lka
ヶ:xke、lke
ゔぁ:va
ゔぃ:vi
ゔ:vu
ゔぇ:ve
ゔぉ:vo
ゔゃ:vya
ゔゅ:vyu
ゔょ:vyo
ぐぁ:gwa
ぐぃ:gwi
ぐぅ:gwu
ぐぇ:gwe
ぐぉ:gwo
対応表による詳細については下記画像をご参照ください。
【追記】2024年9月13日時点での対応表
なぜこのようなアップデートを実施したのか?
今回のアップデートは、批判する方も出るような、かなりの英断だったと思います。RTCを4連覇した実績を持つタイピングplusの監修を務めるmiriとも相談し、ともに今回のアップデートが必要であると判断して決定しました。
『し』を『SHI』で通らなくした理由は『KPMの水増しは本質的に不必要だから』です。
はじめは「普通にキーボード入力できるんだし、いろんな入力方法を受け付けるでいいのでは?」と考えていましたが、話し合いの結果、この考えが変わりました。また監修のmiriがKPM水増しを使用せずに高いスコアを出せていることも決断できた理由として大きいです。このような結果に至るまでには、下記のような経緯がありました。
タイピングplusのコンセプト
タイピングplusのサービスコンセプトは『タイピング練習でいまより、ちょっと幸せになる』です。
では、なぜこれを設定したのか。それはタイピングplus開発会社の代表である、私のこのタイピングplusを事業としてやる理念に基づいて決定されました。私は結婚して子供が生まれ、子供が大人になる20年後の日本について考える機会が増えました。
子供の未来をつくるのは大人
これからの日本、どうですか?成長しますか?安心して暮らし続けられますか?世界でも類を見ない超高齢化社会で、年金受給年齢は60歳から65歳、70歳へ引き上げられ、社会保険料は年々増加しています。物価の違いはありますが、アメリカではアルバイトが年収1500万円です。日本では物価は上昇するも賃金はあまり上がらず、移民や海外からの治安悪化も懸念されています。
2040年には労働人口が1159万人(12%)も減少するそうです。
20年後に今と同じ経済力を保つためには、1人あたりの生産性が1.22倍必要です。
人口動態はかなり正確に未来予知できる根拠のある数値データです。この事実に対して「どうせ国がなんとかするでしょ?」とか「政治家の仕事でしょ?」と考えるのもひとつの選択肢であり、それが悪いとは思いません。
ただ、私の場合は、自分の子供や今を生きる子供たちが大人になった時に、少しでも良い日本であってほしい。そのために自分にできることがしたい、そう考えました。
私がタイピングplusを開発している目的は、子供が大人になっても安心して生きることができる日本であって欲しいからです。
今を生きる子供が大人になったときに安心して暮らせる日本であるために『タイピング練習』で日本を変えるために、タイピングplusを開発しています。
若年層のタイピング離れ
97%の大学生が、キーボード入力よりも、スマホのフリック入力の方が早いと回答しています。でも就職するとキーボード入力が求められます。
労働生産性を高めるためにタイピング練習が必要で、そのために【う】を【u】ではなく【whu】で入力したり、【し】を【si】ではなくわざわざ【shi】で入力する必要は全く無いのです。
これがいわゆるKPMの水増し・KPM稼ぎが、タイピングplusにおいては不要である、と考えた理由です。KPM水増しを許容するとランキング最上位を取るために水増しを選択するユーザーが増えてしまい、結果として労働生産性を高めるコンセプトと乖離が発生します。タイピングplusの存在意義を追求した結果になります。
1人あたりの生産性を1.22倍に高めるためには、タイピング練習で人が心身ともに健康であり成長することが必要であると考えました。その結果『タイピング練習でいまより、ちょっと幸せになる』を実現することで、より良い社会をつくることができます。これがタイピングplusの存在意義です。
私自身の考えや想いについての詳細は、下記のnoteをご参照ください。
ことの発端について
2024年7月にタイピングplusのβ版を一般公開し、ありがたいことに既にたくさんの方にご利用頂いています。その中で入力の受付内容について、多数のご要望をもらいました。ご要望のなかには下記のようなものがありました。
タイピングplusへのご要望の一部
【う】をwhuで通るようにして欲しい
【つ】をtsuで通るようにして欲しい
【い】をyiで通るようにして欲しい
【く】をquで通るようにして欲しい
【う】をwhuで通るようにして欲しい
そもそも【う】はuの1文字で入力が可能です。では、なぜwhuで入力したいというニーズがあるのか?それはKPMが稼げるからです。
KPMとはKeystrokes Per Minuteの略で、1分あたりの入力打鍵数です。タイピング練習サービスは多種多様にありますが、このKPMをもとにスコアを算出し、ランキングをつくっているものが多いです。つまりランキング上位を狙うトップランカーたちは、いかにKPMを高めるかが非常に重要になっています。
そこで考えられたのが、KPM稼ぎです。【う】を入力するのに【u】と1文字いれるよりも【whu】と素早く3文字いれるほうが、KPMを稼げるケースがある事がわかったのです。
これは問題文がひらがな換算10〜15文字くらいのサービスが多いため、短い問題文が何個も出てくる際に入力以外の遅延要素があるため、KPMを高めることが難しい点にあります。1つの問題をクリアするのに、以下のステップで入力完遂することになります。
問題文を目で確認する
問題文の内容を脳で理解する
脳からキーボードで入力するように指に伝達する
指で正しく素早くキーボードを入力する
このようにキーボード入力する指を物理的に動かす以外にも、脳で判断する入力遅延要素が、問題文が変わる毎に発生しています。例えば以下のような問題文があったとします。
【問題文の例】
今日もついてる良い日だ
きょうもついてるいいひだ
例えばこの問題の場合、多くの人が
kyoumotuiteruiihida(19打鍵数)
と入力すると思います。
しかし、他のタイピング練習サービスでは、以下のような入力を受け付けてくれます。
kyowhumotsuyiteruyiyihida(25打鍵数)
【う】をwhu、【つ】をtsu、【し】をshiで入力することで、19打鍵数を25打鍵数に6打鍵数プラスすることができ、31%もの打鍵数水増しが可能です。もちろん全てのケースに当てはまるわけではないのですが、上記のステップ1〜3である、問題文の確認から指へ入力指示するまでの時間数を削減することで、結果的に複数の短文入力を繰り返すタイピング練習サービスにおいてはKPMを伸ばすことが可能になるケースがあります。つまりランキング上位を目指すトップランカー・タイパーにとっては重要なスキルの1つでもあるわけです。
この技術は該当するタイピング練習サービスの上位を獲得するためには必要かもしれませんが、「今日もついてる良い日だ」の文章を入力するために必要な技術ではありません。キーボード入力はあくまでも手段です。タイピングplusは、仕事やパソコンを使った作業をする際に、入力デバイスとして存在しているキーボード入力を円滑にするために存在しています。より高いKPMやスコアを出せる人をつくるために存在しているわけでは無い事に気付いたのです。
【く】をquで通るようにして欲しい
これが通らなかったのは単純にシステム側の対応漏れです。【く】を【ku】で入力しても【cu】で入力しても【qu】で入力しても、同じ打鍵数です。この場合【qu】でも入力できる方が正しいです。
結果としてガチ勢を切り捨てるようなシステム変更になった
こうした経緯から、タイピングplusでは、結果として入力方法の一部を受け付けなくすることにより、ガチ勢を切り捨てるような形になってしまいました。この点については、多数のご要望を頂いているにも関わらず対応できないのは、正直申し訳ない気持ちです。けど、この決断はタイピングplusには必要なことでした。
いろんなタイピング練習サービスが散見してて良い
そもそもの考えですが、私はいろんなタイピングサービスがあって良いと思っています。タイピングplusがものすごい伸びたとしても、誰しもがタイピングplusだけを使うべきだとは思わないし、他のタイピングサービスも残り続けていて欲しいし、みんな違ってみんな良いと思っています。
だって、タイピング練習って楽しいじゃん?自分がパソコンにハマったきっかけも特打っていうタイピングゲームだし。
けれども、いち研修ツールとして企業や学校に提供されている主要なタイピング練習サービスがあるか?というと無かったので、タイピングplusをつくりました。そして、日本を変えるためには、教育機関に浸透させることが重要だと考えています。
決してKPM水増し・KPM稼ぎを否定しているわけではない
ひとつ誤解なきようにしておきたいのは、決してKPM水増し・KPM稼ぎを否定しているわけではありません。このような技術が出てきたのも、タイピング練習やタイピング大会・対戦という競技性に面白みがあり、それを追求した結果ひとつの技術として確立したものであると認識しています。これを否定するつもりは全く無いし、むしろこんな世界があるのかと尊敬に値するものだと考えています。
むしろ【SHI】でも【し】が普通に入力できるのに通らなくなるアップデートをしたタイピングplusこそが邪道だとも言えます。タイピングplusのコンセプトには合致しなかった、これが今回のアップデートの理由です。ただちょっと一部の入力方法は判断が難しい部分もあるので、受け付ける入力方法は今後も修正する可能性はありますが、修正する理由や軸になる考え方は、本記事で述べている通りになると思います。
ガチ勢の方たちへのタイピングplusの価値
正直、このアップデートでタイピング大会に出る人やガチ勢の人にとっては、タイピングplusで練習することは他サービスでスコアを出せなくなることに繋がるので、リスクでしか無くなるでしょう。そこは申し訳ないですが、タイピングplusはこのようなコンセプトでやっている、と割り切ってほしいです。今後チャット機能の実装が控えていますので、楽しくタイピング練習してアバターを着飾ってチャットで新しい友だちをつくる、そんな誰もが気軽に使えるゆるいコミュニケーションツールであると思って頂ければ幸いです。他サービスでタイピング練習した後に、息抜きにタイピングplusで遊ぶというおかしなサイクルを作れればと思います。
今後の受付入力方法の更新について
例えば「クォーター」という文字を入力するとき、「qo-ta-」が最短入力方法ですが、多くの方が「kuxo-ta-」や「kulo-ta-」と入力していることが推測されます。そのため、「クォ」の入力を「qoのみ」とする対応までは、今回行っていません。こうした観点から受け付ける入力方法を更新する可能性は今後も継続して行いますが、更新する際の指針としては、タイピングplusの目的に沿って対応する考えは変わりません。
入力方法が自然と最適化され、利用者の生産性が高まる・人として成長することは変わらない目的としつつ、既に入力方法が固定化している人がなるべくストレスなくタイピングplusを利用できるようにもしていきたいと考えています。
評価軸はタイピング速度だけではない
既存のタイピングサービスの多くは「タイピング速度」を軸にしたランキングを形成しています。これはこれで必要であり重要な要素なので、タイピングplusでも主軸は「最高スコア」に置いてはいます。
けれど、それ以外にも「練習回数」や「打鍵数」といった努力してきた過程についても、もっと評価されるべきと考えています。そのためログイン後のトップページであるマイページに、スコアと打鍵数のランキングTOP5を表示するようにしました。
努力を指標にしたランキングについて
打鍵数を重要視した理由は、努力の過程を数値化したもので最適だと現時点で考えられるものが打鍵数だったからです。別軸である練習回数は、1分練習モードなどを主軸にしている人は、練習回数を増やすことで不利になるので、少しでも公平に判断できる軸として打鍵数を採用しました。
また、基本練習で最高スコアを出すことだけを目標にしている・歴代ランキング1位を目指している人は、基本練習モードでミス入力があったらすぐESCで中断して最初からやり直すといったことを、何千回・何万回とやっています。途中で練習をやめた場合、多くのランキングでは無効データとして扱われますが、タイピングplusではクリアした問題文については有効な練習として打鍵数を記録しています。
最高スコアを出すために何千回・何万回と繰り返し練習した過程の部分も、評価されたほうが嬉しいと思うからです。アバター・チャット(実装中)・トロフィー(実装中)機能を用意しているのも、努力も評価できるようにするためでもあります。チャットしてたら豪華なアバターの人が入ってきたり、見たこともないレアアバターを着ていたら「なにそれすげー!」とか「そのアバターどこで手に入れたの!?」ってなるじゃないですか。見る方も見られる方も嬉しいじゃないですか。
こうした努力を指標にしたランキングにフォーカスしている部分も、タイピングplusの特徴です。タイピング練習の肝は、たんなる繰り返しや、つまらない反復練習かもしれません。けれども、ここが評価されることで、心が折れないひとが少しでも増えることを望んでいます。
タイピングplusの目指しているもの
タイピングplusは、『いまより、ちょっと幸せになる』人を増やし、人の生産性を1.22倍にして日本を変えることを目指しています。ではタイピング練習だけができるサービスを目指しているのか?それは違います。
あくまでもタイピング練習は手段です。タイピングplusは、人が幸せになるためのプラットフォームを目指しています。だから本丸はチャット機能(現在開発中)だったりします。TOEICのようなタイピング速度の資格を作ったり、日本全国に広がるタイピング塾をつくれるようにしたり、いろんな学校や法人にタイピングplusを導入してもらって利用者数を増やしていきたいです。
タイピングplusの特徴は一生使えるアカウントであること
学校や法人に導入されることを目指しているタイピングplusですが、卒業・退職・転職した後でもアカウントの所有権は個人に帰属するように利用規約に定めているため、利用継続できる一生使えるアカウントが特徴です。
この理由は『いまより、ちょっと幸せになる』ことを目指しているからであり、一生使えるアカウントに対して会社や学校が投資してくれることが、本人へのモチベーションになることを目指しているからです。
『タイピングplusで遊んでたら、友達ができた』
『タイピングplusで遊んでたら、資格が取れて就職できた』
『タイピングplusで遊んでたら、良い会社に転職できて年収がアップした』
タイピングplusは、こうした価値を提供できるタイピングプラットフォームを目指しています。
こうした考えのもと、私達はタイピングplusを開発しています。
少しでも心が動くものがありましたら、この記事のハートマークをポチッとお願いします。また、利用者が自分の所属する学校や企業に『タイピングplus導入してみませんか?』と声をかけてくれるような、利用者に愛されるサービスを目指していますので、引き続きタイピングplusを一緒に育ててくれると嬉しいです。
実はタイピングplusの開発には、ものすごいお金がかかっています。別の事業で売上を立てて、利益をタイピングplusに投資しています。一般公開するのに約3年もの開発期間がかかったのも、事業を継続するための資金をつくるために時間を費やしたことも大きいです。
私自身も現役でエンジニアとしてお客様の仕事を受け、タイピングplusの開発資金の原資をつくっています。タイピングplusの開発は全て社員に任せています。タイピングplus自体の開発エンジニアは充足している状況ですが、タイピングplusを支えるための安定資金をつくるためのエンジニアについては常時募集していますので、転職という人生をかけた投資をしてくれる方がいましたらぜひご連絡ください。
いまあるタイピングplusは、
人生を投資してくれている社員のみなさまのおかげで、
成り立っています。
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