外伝:有望な怪物達 その8:賛同者との電話インタビュー
上空からの映像。河川や田畑や団地が見渡せる。機内では、女性が何かを棚から取り出した。やがて、着陸となり、飛行機の車輪が道路に着地した。
一室で、ロバートが女性と電話で話をしている。
マーギュリス「ロバートですか?」
ロバート「リンさん、聞こえていますか?」
マーギュリス「よく聞こえていますよ、貴方は?」
ロバート「リンさん、私は..」
マーギュリスが早口で遮る。
マーギュリス「ロバートさん、よく聞こえていますから、ウィリアムソン氏のことを話して下さい」
ロバート「わかりました。そのほうが良いですね。聞こえています」
マーギュリス「声は途切れていません。よく聞こえているので、このまま話して下さい」
ロバート「ウィリアムソン氏のことを初めて聞いてのは、いつですか?」
マーギュリス「約5年前、手紙を受け取りました。それには、『私は、ドナルド・ウィリアムソンです。68歳です。短命の家系で、死後の世界へまっすぐに進んでいます』わかりますか?」
ロバート「わかります」
ロバートは博士の著書をめくりながら、聞き続ける。
マーギュリス「私は彼に言いました。読んでいる手紙は一部分だけなので、手紙の残りを読まないといけない、と。で、読み終えてから、彼は私に言いました『私はマン島のリバプール海洋研究所にいます』そして、初期の論文を同封してきました。『幼生の不一致』ですね。彼は本を書いていますが、どこからも拒絶されていると言っていました。それから、何通も手紙が来て、お互いにやり取りして、チャップマン&ホールから本を出しました。この本については知っていますか?」
ロバートが本のページを開きながら聞く。
ロバート「ええ、今その本を見ていますよ」
マーギュリス「この会社の編集者との仕事は、とても大変だった。彼はタウバーと知り合ったんです。彼のことは知っていますか?」
ロバート「いいえ、会ったことはないです」
マーギュリス「彼は“セルフ”の計画を進めている、と言いました。その本は知っていますか?」
ロバート「セルフの本は読みました」
ロバートはその本を棚から持ち出し、開いた。
マーギュリス「素晴らしい。何が起こったかといいますと、タウバーはイングランドに行ったんです。ウィリアムソン氏の研究室に行ったんですね。タウバーは彼の研究室から私に電話をして、言いました『リンさん、話したいことがあります。彼はペテン師ではありません。偽善者でも無能者でもありません』」
ロバートはその本をめくり続ける。
マーギュリス「『彼のことを理解するのは大変かもしれませんが、彼は真面目な科学者ですよ』私はセルフ会議に来るという方法をとる前に、彼のことを知っておく必要があると思いました。タウバーは言いました『私は..窓の外を見ています..』アイルランド海が見えますか?何を貴方は見ていますか?」
ロバート「その通り、アイルランド海です」
ロバートは窓の外を一瞥した。広大なアイルランド海が、光を反射して、波打っている。海鳥が数羽飛び交っている。
ロバートは、その本で博士が表したページをめくり始める。
マーギュリス「タウバーが言っていたことは『私は、窓の外のアイルランド海を見ています。ウィリアムソン氏は素晴らしい。とても興味深い人物で、彼を招待しようと思います、と彼に伝えました。私のセルフ会議に、ですよ』その会議は、ボストン大学ロースクールで開催されました。非常に大きな講堂で、45人は入れました。ウィリアムソン氏が大げさに話す講演は、素晴らしいものでした。講演後、誰も何も言いませんでしたが、カルテックのエリック・ダビッドソン、大御所で教授ですが、知っていますか?彼だけは立ち上がり、叫び声をあげました。ひどい!ということだと思います。私は、詳しくは思い出せませんが、誰もがこんなことはできません。『とんだミスキャストだ。根拠はなく、証拠もない。タウバーは立ち上がり、最後に言いました。『皆様、間違った何かを聞かれ、ざわめくことなく忘れてしまったか、でなければ、自身を幸運と思われたことと思います。なぜなら、皆様は、新しい動物学の始まりに立ち会えたのですから』以上が、私が最後にウィリアムソン氏に会った時のことです。彼がセルフ会議に出た頃でした」
ロバート「タウバー氏が言ったことに、貴方は同意見ですか?」
マーギュリス「完全に、同意見です」
ロバートが受話器を置いて、部屋を去る。