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グリザイユ技法

 子供という概念は近代の発明品だという主張は、中世装飾写本に見られる子供の表象を見あぐねている。グリザイユ技法から繙こう。
 子供は天使のような存在だ。そう、神聖な領域に浮かぶ子供の顔貌は、グリザイユ技法にて描かれる。天上に浮かぶ、色彩に陰影を付けた表象だ。バロック期の絵画に多く見られるし、フーケやロアンの画家にも見られる。
 子供は確かに大人と違う。ここには近代にて色濃くなったに過ぎぬ西洋古代に遡る区分け文化がある。西洋のアウトサイダーとして通奏低音となったユダヤ文化は奇形を獣姦の結果とした。交わるべきでない二者の交わりと見做し、それを蔑視する。ここからアウシュヴィッツまではそう遠くない。
 そして、フーケの描く子供はグリザイユ技法であり、アトモスフィアと同化している。子供は周囲との境界を曖昧にする。このヘルメス的性格をギリシャ人はエロスとし、キリスト教は天使としたのではなかったか。

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