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孤狼の血 LEVEL2

大好きな見取り図が宣伝をしていたし
実は前作から興味はあったので観てきました。

ただ久々に、腹の立つ胸糞悪い映画でした。


白石和彌監督

この映画の監督、白石和彌監督。
実は私が大学生の頃、
大学に講義兼試写をしに来てくださったことがあります。
その時の作品が「凶悪」という山田孝之さんが主演の映画でした。

この作品を見たとき、正直「この人天才だわ」と思いました。
今作孤狼の血同様、グロテスクなシーンをオブラートに包むことなく
完膚なきまでにグロテスクに描写するその覚悟と美しさ。
監督と役者の腹の据わり方が、シーン毎に伝わる映画だと思いました。
「こうやって腹括らないと人に伝わる映画は作れないんだ」
と感銘を受けたことを本当に覚えています。
ぜひ観ていない方で、グロテスクなのが苦手じゃなければ
観ていただきたい作品です。
【善人だったはずの人間がこうして悪に染まっていく】
本当の凶悪とはこうだ。
世の中にはびこる「犯罪者」になり得る人たちの意識は
こうして生まれるんだ、というメッセージ性もあり
”社会にメスを入れる”みたいなクサイ言葉が
実はしっくり来るかもしれないと思いました。

今作の感想を述べる前に
もう一つ、私の好きな【ヤクザ映画】をご紹介します。
「ヤクザと家族」です。

最高の映画でした。
私の中で今年の上半期上位を争う映画。

ヤクザを通して【家族】を描く。
ありそうでなかった視点だと思いました。
血の繋がりだけが家族なのか。
血より濃い繋がりを家族と呼んだっていいじゃないか。
ただ、それを家族と呼ぶために入れ墨背負って闘う人が
この世の中にいたんだ、いや今もいるのかもしれない
社会的悪だけど、初めてヤクザに美学を感じた。
ヤクザ映画で初めて泣いた作品です。
ただの暴力を描くとは違う。ただのグロテスクとは違う。
ちゃんと意味があって、メッセージ性があって
観終わったあと感じるものがある作品でした。


映画というものに求めるもの

上記2作品を踏まえた上で、今作「孤狼の血 LEVEL2」は
正直、ただのグロテスク暴力映画だったと思います。

それしかなかった。

鈴木亮平さんの「映画史に残る悪役」っぷりは
圧巻でしたし、それだけでも見応えはあったと思います。
見取り図が予告で言ってたみたいに
松坂桃李さんの演技の幅にも驚いたし
一番は意外と西野七瀬は演技が上手いなと思わせられました。
今まで見たどの作品よりも、今作が西野七瀬はグッと来た。
良い意味で開放されていたのかも。
それは監督の力量であり功績なのかもしれない。

でも、この映画になんのメッセージ性があったの?
終わったとき「だからなんだよ」って。

私は、映画ってエンターテイメントだけど
「問題提起」だとも思っています。

いや厳密に言うと、エンターテイメントに振り切って
【楽しい】とか【面白い】とか【かっこいい】とか【かわいい】とか
それだけを与えるツールでも時にはいいのかもしれません。
何も考えたくないとき、そういう類の映画も見ます。
それを悪いとは思っていません。

白石監督だからでしょうか。
私は社会派邦画だと期待して行ってしまったから?


私、アウトレイジがそんなに好きじゃありません。
でも男の人って好きですよね?
男のロマン?

私はそんなくだらないもんテーマにして
映画作んなと思ってしまいます(笑)

ハリウッドで言うと、クリント・イーストウッド監督がそう。
イーストウッド監督の映画は結構男女で好みが分かれがちで
大学のときも同じ監督コース内の男女で、よく意見が分かれていました。

要は映画に求めるものが、違うのかもしれません。

私の持ち合わせない異なる観点からみたら
かっこいい美学に則って作られた、
最高の白石節の効いたグロテスクヤクザ映画なのかも。

白石監督の強みって、「凶悪」で得た
暴力を包まず描写できる覚悟だと思うんです。

それを利己的に描きすぎた?
正直、失礼ですけど、
それを振りかざしすぎたように感じました。

まじで頭おかしい引くくらい凶暴な
鈴木亮平さんが演じる上林の残忍さ。
日岡の非情さと彼の中にある正義と優しさをない混ぜにした
言葉にしがたい人間性の機微を演じきった松坂桃李さん。
村上虹郎さんが演じたチンタ。
韓国語でチンタ(찐따)は
集団への適応がうまくできなかったり行動が遅い人
という意味があるそうです。
祖国でもない、でも血の通りの国が母国でもない
バカにされて「残飯すすって生きるしかなかった」男の
無情な死に様と生き様はたしかに刺さるものがあった。

最後の森の中に狼を見る描写。
あれなんだよ。

強くなりすぎた日岡を模してる事はわかる。
だからなんなんだよ!
犬?狼?どっちでもいいよ!だからなんだよ!!
日本狼のように、日岡が強くなり実権を握ったのは
ユメマボロシだったってこと?!
だから!なんなんだよ!!!!!!笑


仁義あるヤクザというより執着の強い人間の怖さ

っていう解釈なら、納得ができるかもしれない。
ヤクザ映画と言うよりアクション映画。
(後半ほぼワイルドスピードだったし笑)

前作を観ていないのでほんとなんとも言えないけど
どうやら他の方のレビューを読む限り
前作の方は「仁義」を重んじるヤクザに主軸を置いた
【ヤクザ映画】だったらしい。

Filmarksのどなたか存じ上げない方のレビューを
勝手に引用させていただくと

度が過ぎた執念ってのが鈴木亮平演じる上林。
猟奇殺人的な要素を持ち合わせたヤクザというのは新感覚。
ヤクザのルールというものも持ち合わせていないので予測不可能!
そのルールの破壊というのもスリルだし、恐怖なのだよね。
でも、筋の通ったものというのはやはり潔くて真っ直ぐ見ていられる。
上林は筋を最後まで通っていた。だからこそ綺麗な悪人だったのだと。

最後の一文には共感しかねるけど
そういう感覚で見るなら、面白かったのかもしれない。

社会派映画、仁義あるヤクザ映画を期待していくと
私のように腹立つと思います。笑


久々に誰かと「議論したい」と思える映画ではありました。
そういう意味では、この映画を観て会話が生まれる
いい映画だったのかも?とも思えてきました。

もし「いや、私はこう思った!」みたいな感想があれば
ぜひ私に教えて下さい。


付け加え

ごめん。上記までで一旦更新したんだけど
付け加えで言わせてほしい。

効果音と照明は素晴らしかった!!!!

冒頭の拳銃の玉が入った袋をカサカサと開ける音。
妙に際立つ足音、雨音。
BGMじゃない効果音が生み出す効果って
実は本当に恐ろしくて。
観客が敏感になるし、感覚が音で研ぎ澄まされる分
多分恐怖が増幅する。
演出としてはめちゃくちゃいい。

照明もそう。
社会の闇、日岡の刑事としての光の顔と
ヤクザと裏でつながる闇の裏の顔。
タバコの燃える煙が目視できる明暗の照明。
心理描写に合わせた陰影がなんとも言えん!

批判ばっかりで、すごいと思ったところ
言うの忘れてました。笑







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