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「海のはじまり」第四話感想

水李と弥生さんの過去が、次々と明かされる。水李も、弥生さんも、それぞれ悩んで葛藤して選択した。水李は自分の意思で、弥生さんは自分の意思は置いてけぼりで、周囲の判断で。そんな対比が、心に刺さった。

夏「一応決まったこととしては、出来るだけ一緒にいることにした。」
弥生「一緒にいる?」
夏「一緒に住むとかじゃないんだけど。」
弥生「認知はするってこと?そういうのって居住地とかっていいの?法律的に。」
夏「そういうのはっきりさせるのはもう少し先延ばしにして。」
弥生「先延ばしって…。そんなの無責任だって。」
夏「本人が望んでること優先したいし。それは南雲さんもそう言ってくれてて。」
弥生「でも子どもの希望とは別にあるでしょ?その、親権がどうとか。」
夏「形にこだわってもしょうがないし。」
弥生「こだわるとかじゃなくて、戸籍とかってちゃんとしないと。後々困るの海ちゃんだし。」
夏「待って。決めさせようとしないで。」
弥生「えっ?」
夏「弥生さん何も強要はしないけどそれは助かるんだけど、決めてないってこと凄い責めるよね。今すぐアパートで2人で暮らすなんて現実的じゃないし学校とか会社のこともあるし。めんどくさくて先延ばしにしてるわけじゃないよ。」
弥生「ホントそう。決めさせたかったのかも。」
夏「この前から何で?何でそんなに…。」
弥生「海ちゃんのお父さんになってほしいし、私もお母さんになりたいから。」
夏「だから何で?」
弥生「なりたいから。早くお母さんになりたいんだよね。」
夏「何に焦ってるの?」
弥生「うん?」
夏「そっちの話って…。」
弥生「それ。早く海ちゃんのこと決めてほしくて、その話しようって思ってただけ。フッ。おなかすいたよね。食べよう。」

「海のはじまり」第四話

海から帰ってきた夏くんは、弥生さんのアパートで一緒にごはんを食べます。夏くんの、出来るだけ一緒にいることにしたという選択。海ちゃんの希望と、現実を考えての判断。でも、弥生さんは自分の過去に海ちゃんを重ね合わせているからか、凄く焦っていて。夏くんはその過去を知らないから、なんで弥生さんがそこまでこだわるのか不思議に感じています。夏くんの「決めさせようとしないで」って言葉、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」で結婚の話をトントン進めようとする朝陽くんに有村架純ちゃんが演じる音ちゃんが言った「説得しないで」という台詞に似ていて、なんだか心に刺さりました。夏くんは、決断することが苦手だと思うけれど、だからこそ色々考えて、悩んで、誠実に答えを出そうとしようとする人だと感じます。

弥生「これ。(エコー写真を出す)」
悠馬(弥生の元恋人)「うん?」
弥生「病院でもらって。今3ヶ月らしい。」
悠馬「これ俺…」
弥生「だよ。」
悠馬「だよね。うん。」
弥生「うん。」
悠馬「そっか。そっかそっか。分かった。いつ?その…」
弥生「先週自分で調べて、で昨日やっと病院行けて。」
悠馬「あっその…いつするの?手術っていうか早い方がいいんでしょ?あとはほらあの…お金も準備しないと。もちろん出すから。全額出すから。」
弥生「ありがとう。」
悠馬「いや普通だよ。ちゃんと責任取らせてよ。仕事大丈夫なの?こういうのって日帰りで出来るもんなの?」
弥生「まだそう…聞いてなくて。聞いてみる。」
悠馬「そっか。分かった。いい選択だと思うよ。普通に仕事続けてキャリア築いてさ、お互いのいいタイミングで普通の順序でちゃんとした家庭築こうよ。ねっ。」
弥生「やっぱ今日仕事しようかな。大事なときだし。ここで仕事してく。また落ち着いたら連絡するね。」
悠馬「うん。分かった。」
弥生「ありがとう。相談のってくれて。」
悠馬「ううん。お大事にね。」
弥生「うん。」

弥生「すみません。」
店員「はい。」
弥生「コーヒーのおかわりください。」
店員「かしこまりました。(伝票を見ながら)ノンカフェインコーヒーでよろしいですか?」
弥生「普通ので。」
店員「ブレンドでよろしいですか?」
弥生「はい。普通の。」
店員「かしこまりました。」

店員「ブレンドでございます。」
弥生(コーヒーを飲まずに会計をする)

「海のはじまり」第四話

カフェで弥生さんと元恋人が話すシーン。弥生さん、最初は嬉しそうな顔をしているんですよね。それがまた…辛い。こんなの相談じゃないじゃん。弥生さんの意思、全く聞かずに中絶する前提で話を進める元恋人、ひどすぎません?(怒)普通ふつう、ってなんなんだ。普通のレールに乗っかろうとするんじゃなくて、弥生さんがどの道を歩みたいのか聞いてよ。ノンカフェインコーヒーを頼んで、産みたいと思っていた弥生さん。なのに、彼からの言葉で、産めないと思って、普通のブレンドコーヒーを頼む。ブレンドのこと、普通のって繰り返すのも、普通という彼の言葉が突き刺さったからかな。それでもブレンドコーヒーが飲めなくて、店をあとにする弥生さん。しんどすぎる。

弥生「もしもしお母さん。相談があって」
弥生の母「何?」
弥生「妊娠した。彼の子。」
弥生の母「そう。」
弥生「どうしたらいいかな」
弥生の母「相手に言ったの?」
弥生「言った。あんま産まないでほしいみたい。」
弥生の母「じゃあおろしな。」
弥生「1人で育てるのってさ…。」
弥生の母「私無理だからね。無理だから。」
弥生「そう。そっかそっか。了解。」
弥生の母「お金ちゃんと出させなさいね。」

「海のはじまり」第四話

お母さんに電話をかけた弥生さん。彼に中絶前提で話をされて、藁にもすがる思いで電話をしたお母さんに、じゃあおろしな、私無理だからと遮断されて、こんな辛いことあります…?そっかそっか了解と、反論する術もなく受け入れる弥生さん、いたたまれないよ。

水李「こんなの生まれてきたら怖い。こんな親不孝なの出てきたら怖い。」
翔平「親不孝かどうか決めるのは親だよ。子どもが勝手に決めないでくれる?」
水李「自覚あるくらい親不孝なの。」
翔平「そう。勝手に言ってなさい。ホントは産みたいの?」
水李「相手に似るなら産みたい。」
翔平「相手に似てほしいって思えるだなんて、それはもうねっ。」
水李「迷惑掛けたくない。」
翔平「迷惑ねぇ…。」
水李「責任負わせたくない。」
翔平「責任ね。(母子健康手帳を差し出しながら)読んだことある?」
水李「いや読むもんじゃないでしょ。」
翔平「読むところいっぱいあるよ。お母さんいっぱい書く人だったから。」

「海のはじまり」第四話

相手に似るなら産みたいっていう水李の本音。本音を吐露することが出来たのは、優しいお父さんがいてくれたからですよね。相手に似てほしいって思えるなんて、ってお父さんの言葉通り、それはもうおなかにいる子と夏くんへの愛情ですよね。水李のお父さん、朱音さんと水李が喧嘩した時は、朱音さんに寄り添っていて、で、その後は水李のことを気にかけていて。妻と子どもの両方を大切にしている素敵な方です。

翔平「何隠した?」
水李(首を振る)
翔平「お母さんキルト教室に行ってて今いないよ〜」
水李(母子手帳を出す)
翔平「もらってきたんだ?」
水李(頷く)
翔平「へぇ〜。いまこんな感じなんだ。」
水李「お母さんになれる?こんなお母さん大事にしないやつでも。」
翔平「いるんでしょ?」
水李「うん。」
翔平「じゃあもうお母さんだよ。そう簡単に始めたりやめれたりするもんじゃないよ。」
水李「はい。」
翔平「うん。でも正直言うとね…。孫楽しみ。ハハハ…!すっごい楽しみ!ハハハ…!」
水李「へぇ〜。フフッ。」
朱音「また来たの?」
水李「やっぱ産むことにした。」
朱音「はっ?」
水李「大丈夫。一人で産んで一人で育てるから。」
朱音「あんたね分かってないのよ。どれだけ大変なのか。」
水李「分かる訳ないじゃん。やったことないもん。」
朱音「やっとことあるとかないとかそういう問題じゃないでしょ。」
水李「でもやってみなきゃ分かんないでしょ。」
朱音「そんな簡単なことじゃないの。」

「海のはじまり」第四話

母子手帳をもらって、実家に顔を出しに来た水李。嬉しそうなお父さん。正直に孫楽しみ!って言う姿、何とも和みますよね。弥生さんにもこういう存在がいてくれたら、違っていたかもしれないのに…決断するのって結局自分だけど、その決断って、周囲によって大きく変わってくるということを思い知らされますよね。水李と弥生さんの対比で、それをひしひしと感じさせられて、弥生さんの抱えている辛さが浮き彫りになっています。

朱音「あんた人にかわいそうとか言うのやめなさい。知らないかもしれないけどお母さん幸せなの。水李産めて生意気に育ってわがまま言われて、幸せなの。」
水李「嘘だ。」
朱音「勝手言ってなさい。でも、かわいそうとか言うのはやめなさい。泊まってくの?」
水李「うん。」

「海のはじまり」第四話

喧嘩した時に、朱音に向かって娘がこんなんでかわいそうと言った水李。その言葉への朱音の気持ち。かわいそうとか、幸せとかって、人が決めるものじゃない。自分で決めるものですよね。水李にわがまま言われて、幸せと言える朱音。素敵なお母さんですよね。水李も素敵なお母さんとお父さんがいてくれたからこそ、のびのび自由奔放に育ったんじゃないかなと思わされます。

病院でお会計をする弥生さん。
スマホを見て元恋人からの「終わった?」のLINEに「終わった!全然大丈夫だった!」と返す。
自宅でお風呂掃除をする。躓いて咄嗟にお腹を庇う。
弥生「ハッ。もういないんだった。」
啜り泣く弥生さん。シャワーをお腹にかけ、その後顔を流す。

「海のはじまり」第四話

南雲家の微笑ましい様子をみてからの、この弥生さんの描写…生方さん相変わらず容赦ない…(めっちゃ褒めています)。終わった?ってLINEで聞いてくる元恋人、それだけで済まさずしっかり心配してよフォローしてよって思うし、それなのにびっくりマークまでつけて相手を心配させないように気遣う弥生さん、どれだけいい子なのですか…。そして、中絶して帰ってきても、日常は続く訳で、お風呂を掃除する。この日常を丁寧に描く辺りも生方さん。シャワーをお腹にかけていたのは、今まできっとそうやってお腹の子のことを気にかけて行動してきたからで。辛すぎる弥生さん…誰か助けてあげてください…。

弥生「話って言っても相談とかじゃなくてただの報告なんだけど。」
夏「うん。」
店員「失礼します。ブレンドです。」
弥生「ありがとうございます。」
夏「ありがとうございます。」
夏「無理に話してくれなくても。」
弥生「殺したことある。産んでたら今海ちゃんくらいだった子。罪悪感みたいなのがずっとあって、いい親になって子どもに必要とされれば楽になれるって。無理やり思い込もうとしてた。自分のために親になりたかっただけ。ごめん。」
夏「俺は別に…。」
弥生「ごめん。ごめんなさい…。ごめん…。ホントずるかった。これを言う前に海ちゃんと関わるの良くなかった。」
夏「俺もすぐ話せなかったから。」
弥生「絶対駄目だった。払っとく。じゃあ。」
夏「いや…。」
弥生「えっいい。いい。この前出してもらったし。」
夏「座って。俺は気にしないし悪いこととは思わないし、海ちゃんの親になりたいって思ってくれたことはホントに嬉しかった。そういうこと言われたい訳じゃないのは分かってるけど。」
弥生「うん。」
夏「うん。」
弥生「許しが欲しい訳じゃない。ただ…。自分が無理で。自分で…。自分がどうしたって許せない。海ちゃんにも水李さんにも失礼過ぎる。」
夏「子どもにとっていいことなら…。」
弥生「罪悪感ってそういうことでしょ?殺したって思ってたってそういう言葉最初に使ったの月岡くんだよ。ごめん。それ言うのもずるいよね。」

「海のはじまり」第四話

カフェに夏くんを呼び出した弥生さん。ここで、ブレンドコーヒーを出してくるあたり、元恋人とのシーンを想起させてきて本当生方さん…!殺したことある、って前に夏くんが使った言葉を使うのがまた残酷で。弥生さん、勇気を振り絞って伝えたんだよね。そして、弥生さんが人の前でようやく泣きましたね。ずっと抱えていた思い、夏くんに吐き出せて良かった。辛かったと思うけれど、それでも共有できて良かったです。

弥生「私はね意外と相談したいタイプ。大事な人にまず話してちゃんと共有したいって思うタイプ…だった。ホントはもっと人に寄り掛かりたい。一緒に悩んだり考えたりしてほしかったんだけど、その時の大切な人がみ〜んな自分の考えをぽいって置いてく人たちで、さみしかった。無視してたこの数日月岡くんさ、しつこく電話したり家に押しかけたりホントしないよね。」
夏「ごめん。」
弥生「ううん。そこがいいんだけどね、待ってくれるとこが。悪く言えば自分がない。悪く言えば他人に委ねすぎ。」
夏「うん?悪くしか言われてない…。」
弥生「その決めきれない感じ?迷っちゃう感じ、たまにいらっとするんだけど…。でも…。一緒に迷えるのは助かる。さみしくない。」
夏「すごい悪口言われた気がする。」
弥生「フフフ…。」
海「夏くん!弥生ちゃーん!」

「海のはじまり」第四話

公園で遊ぶ海ちゃんを見守る夏くんと弥生さん。共有したいって思うタイプ…「だった」と言う過去形が辛いですよね。本当はそうだったのに、そう出来なくなっちゃったっていう。ずっと孤独だったんですよね。夏くんの悪口を散々言っているけれど、そして視聴者的にはそうだよね夏くんのそういうところだよねってめっちゃ共感できるけれど笑、自分の気持ちを置いていかない、一緒にいてくれる、一緒のところで迷ってくれる、そこが弥生さんにとっての夏くんの安心感だったんですね。弥生さんに、夏くんがいてくれて良かった。弥生さんが、さみしくなくなって良かった。

海「かわいそう。」
水李「かわいそう?」
海「死んじゃったの。」
水李「うん。でも生きてた時幸せだったかもしれないよ。」
海「そうなの?」
水李「わかんないけどね。幸せって自分で決めることだから。」
海「ふ〜ん。ママは?」
水李「すっごく幸せ!」

「海のはじまり」第四話

「くまとやまねこ」の絵本を海ちゃんに読んであげた水李。幸せって自分で決めることだから、って、朱音から学んだことですよね。そうやって継承されていく価値観。じーんときました。

***
夏くんが夏休みに海ちゃんと一緒に暮らすことになったり、夏くんの両親・弟に海ちゃんのことを打ち明けることになったり(スピンオフの兄とのはじまりを観ると、弟の大和くんは水李と仲が良かったみたいなのでそこもどうなのかなとか)、とまた気になりすぎる第五話です。物語がもう折り返し地点になってきて、終わりが近くなってきたと思うともう名残惜しいですね。あと、毎度思うんですけど、物語にそっと寄り添ってくれる徳田さんの音楽がとても好きです。

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