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「海のはじまり」第七話感想

津野くん回でしたね。池松さんに是非助演男優賞を、、、!生方さんの作品は、一人ひとりの登場人物の目線を大切にしてくれるから、主人公だけではなくてこんな見方もできるのかとハッとさせられますよね。

水李「あっ…あった。懐かしい。」
海「夏くん住んでるの?」
水李「分かんない。もう引っ越しちゃってるかも。」
海「ピンポン押す?」
水李「う〜ん…。どうしよう…ハァ…緊張してきた。」
水李(家に背を向け、早歩きで歩き始める)
海「えっ?ママ?」
水李「海大変。」
海「何?」
水李「コロッケに安いシールつく時間。」
海「売り切れちゃう!」
水李「売り切れちゃう!急げ!また一緒に来よう。海が道覚えるまで。」
海「次は夏くんに会える?」
水李「うーん…。ママがいなくなっちゃっても、海が夏くんに会いたい時に会えるように一緒に練習しよう。」
海「分かった。」
水李「コロッケ」
海「コロッケ」
水李「コロッケ」
海「コロッケ、コロッケ」

「海のはじまり」第七話

水李と海ちゃんの回想。夏くんのお家の前まで来た二人。でも、途中で水李がハッとした顔で、踵を返します。弥生さんの姿を見たのかな…と思いましたが、後のシーンで弥生さんと夏くんが笑い合っている姿を見たのが分かりましたね。水李は子育てにいっぱいいっぱいで、恋愛する余裕なんてなかったと思うけど、夏くんが新しい恋をしている可能性はあんまり考えていなかったのかな。それともなんとなく考えてはいたのかな。いずれにしても、ショックですよね。それでも、海ちゃんが一人で来られるように練習しておこうという水李。海ちゃんの選択肢は減らしたくない。その意思が伝わってきます。

津野「僕はいいです。他人なんで。」
朱音「水李そろそろ怒ると思いますよ。会いに来ないの。」
津野「そんなことないですよ。」
朱音「津野さんには感謝してるし、いっぱいいっぱいないがしろにして申し訳なかったとも思ってるの。こっちは落ち着いてきたからそう思えてるけど。うん…まだ難しいならいいの。整理がついたらお墓参り来てください。場所教えるから。」
津野「はい。」

「海のはじまり」第七話

本を断捨離しながら、電話で朱音さんと話す津野くん。関係ないけど、津野くんの本棚、本いっぱいで素敵!子宮がんと育児の本もありましたね。本当に水李と海ちゃんのこと、想っていたんだな。朱音さん、お葬式の時は津野くんと距離を取りたがっているように見えたけど、漸く気持ちの整理がついて、水李を支えてきてくれた津野くんと向き合おうとしているんですよね。でも、自分は他人なんでと線を引く津野くん。この理由も後で明らかになります。

夏「水李何か言ってる?」
海「ううん。しゃべれないよ。骨だもん。」
夏「そうだね。」
海「骨になったら痛くない?」
夏「うん。痛くないよ。」
海「薬いらない?」
夏「うん。いらない。」
海「ふーん…よかった。」

「海のはじまり」第七話

水李の遺骨を抱き締める海ちゃん。お風呂上がりの夏くんが話しかけます。海ちゃんは、水李が病気で苦しい姿をしているのを見てきたから、悲しいけれど、痛くなくて、薬なくなってよかったという思いがあるのですね。でもお墓に行ってしまうのは悲しいから、今のうちに一緒にいよう、そんな感情なのでしょうか…切ない。

津野「へぇ…大変じゃない?そんなちっちゃい子一人で。無理しないでね?」
水李「無理です。みんなそう言うんですよね。大変だね。頑張って。でも無理しないでねって。いや無理しなきゃ子どもも私も死んじゃうって。」
津野「ごめん。無神経に。」
水李「八つ当たりしました。すいません。」
津野「あの…。あ…俺…その…。子どもも彼女もいないし。」
水李「はい。」
津野「家帰っても本読むくらいで、休みの日も本読むくらいだから。」
水李「私別に趣味で子育てしてる訳じゃ…。」
津野「ごめんその…。本読む代わりとかではないんだけど。」
水李「そろそろホントに無理そうで。色々あって勝手に産んだから、親に頼りたくなくて。でも一人ってもう…。」
津野「他人の方が頼りやすい?その…何があったか知らないし、詮索もしないし。」
水李「じゃあ…。じゃあうちのアパートと保育所の場所LINEしときます。」
津野「えっ?はい。」
水李「海、津野さん。さんっていうのも変か…。津野くん。よろしくって。はいタッチ。タッチ。」
津野「タッチ。」
水李「タッチ。フフッ…。フフフフ。」
津野「フフフ…。」

「海のはじまり」第七話

職場に忘れ物を取りに、一歳の海ちゃんとロッカールームにやってきた水李。無理しないでって気軽に言ってしまいがちな言葉ですが、無理しなきゃ駄目な状況な人にとっては辛い一言ですよね。気をつけなきゃって痛感しました。そして、これが津野くんと海ちゃんの初対面であり、水李が海ちゃんのことを津野くんに支えてもらうことになったきっかけ。家族じゃないけど、だからこそ、水李は津野くんのこと、頼れたんですね。

芽衣子「付き合い始めたの?」
水李「いえ。」
芽衣子「だよねぇ。」
水李「いまだに気持ち利用してます。最低です。」
芽衣子「いいんだよ。したくてしてんだから。」
水李「そうですかね…。」
芽衣子「そうだよ。見返り求めてやってないでしょ。」
水李「たしかに。」
芽衣子「海ちゃんも楽しそうだし。」

「海のはじまり」第七話

図書館に、おそらくお迎え帰りの津野くんと海ちゃんがやって来たのを働きながら見守る水李。水李、津野くんが自分に特別な思いを持っていること、気付いていたんですね。最低という水李に、いいんだよと優しく声をかけてくれる芽衣子さん。たしかに、津野くんは、水李と海ちゃんと一緒にいたくていてくれてる、支えたくて支えてくれているっていうのが伝わってきますよね。そして、そういう人の存在って凄く大切です。

水李「海に会いたい。治らないかもしれないの方がずっと大きいんです。ここにずっといてちょっとだけ長く生きるより、海と一緒にいる時間がちょっとでも増える方がいい。ごめんなさい。」
津野「何がいい?プリン?ゼリー?」
水李「ヨーグルト。みかんの。」
津野「分かった。みかんのなかったら?」
水李「みかんのなかったらいらない。」

津野「みかんのヨーグルトなくて。」
水李「みかんとヨーグルト買ってきたんですか?」
津野「あったから。」
水李「フフフ…。そんな選択肢があったとは。フフッ。海のことがまず一番です。」
津野「うん。」
水李「海のためにいろんなことするから。するけど。体これで駄目なこともあると思うから、そのときは助けてください。」
津野「うん。」
水李「今までも助けてもらってるけど。これからも助けてください。」
津野「うん。」
水李「ごめんなさい。」
津野「うん。」
水李「食べます?」
津野「食べる。」

「海のはじまり」第七話

水李の病室にやってきた津野くん。治療しようよと言う津野くんに、少し長く生きるより、少しでも海ちゃんと一緒にいたいという水李。死が目の前に迫ってきた時に、多くの人がぶつかるであろう何を優先するのかということ。周りの人は、少しでも長く生きてほしいと思うことが多いと思うけれど、本人の意思はそうではなくて、家族や大切な人と少しでも一緒にいたい、長く住んできた家に戻りたい、好きなことをして過ごしたい、そういう風に思うケースも多いですよね。残された時間をどう過ごすのか。考えなくてはならない問題だなと思います。

プリン?ゼリー?と聞く津野くんに、ヨーグルト、みかんのと答える水李。silentを観ていた方々は、コンポタっていう紬ちゃんのことを思い出したのではないでしょうか!?湊斗にコンポタ〜という可愛い紬ちゃん、懐かしい。そして、水李はみかんが好きなのですね。実家でも食べてたし。みかんのヨーグルトがなかったから、みかんとヨーグルトを買ってきた津野くん、ナイスですね。

蝉の鳴く大きな音。自転車を押す津野くん。スマホのバイブレーターの音。呼吸が荒くなり、中々スマホを見ることが出来ない。スマホを見ると「南雲朱音」の文字。どんどん呼吸が荒くなり、胸を押さえさする。
津野「はい。」

「海のはじまり」第七話

このシーン、凄かったですね…。バイブが鳴った瞬間に、もしやと思って、中々スマホを見られなくて、朱音さんの文字を見て確信して。はい、と言った後に泣きじゃくって。はいという台詞しかないのに、水李の訃報だって分かる、池松さんの演技力。水李が病気になった時から、覚悟はしていたと思うんですけど、バイブが鳴った時にきっとそうだと思って中々出られなかったっていうのが、リアルでしんどかったです。

津野「失礼します。手伝います。海ちゃんの物大体分かるんで。」
朱音「触らないで。家族でやるんで大丈夫です。」

「海のはじまり」第七話

水李の部屋で荷物の整理をする朱音さんのもとにやって来る津野くん。これ、辛すぎました…朱音さんは朱音さんで大切な娘を亡くして余裕がなかったのは重々承知なんですけど、今までずっと側にいて水李と海ちゃんを支えてきたのは津野くんなのに…。他人だから、外野だから、家族じゃないから、って津野くんが自衛するかのように、海ちゃんと距離を置こうとするのは、これがきっかけだったのではないでしょうか。

ゆき子「初めて大和と会う時、夏置いて一人で行ったの。大和が7歳の時。」
弥生「はい。」
ゆき子「全然口利いてくれなかった。拒絶って感じ。そうやって始まったの。最初からずっと今みたいな訳じゃないよ。水李ちゃんに嫉妬するでしょ?」
弥生「フフッ…。嫉妬というか…。」
ゆき子「私はしたなぁ。死んじゃってるのずるいって思った。言っちゃいけないことだけど、今の弥生ちゃんになら言えるな。」
弥生「うらやましいです。」
ゆき子「うん。」
弥生「一人で大変だったと思うけど、病気も。」
ゆき子「うん。」
弥生「なのに…。何か知るたびにうらやましいって思うんです。奇麗な思い出がいっぱいでいいなぁって。そう思う自分が嫌になります。」
ゆき子「うん。分かる。分かるけど…。私は大丈夫だった。夏がいるから。弥生ちゃんのこと心配してるのは、そういうこと。全然私と同じ立場じゃないよ。すがる人いないんだもん。この先ずーっと辛くなると思う。」

「海のはじまり」第七話

月岡家を訪れて、夏の母親のゆき子さんと話す弥生さん。弥生さん、実の母親と距離がある分、恋人の家族とこうやって話せる仲っていうのはちょっと安心ではありますよね。自分には夏がいたけど、弥生さんにはいないから、心配というゆき子さん。そうですよね。すがる人がいないって、辛い。孤独を感じる。でもそのことをせめて、ゆき子さんが分かってくれているというのは、弥生さんにとってのささやかな希望な気がします。

夏「疲れた?」
海「ううん…。」
夏「あげる。」
海「ネックレス?」
夏「水李。」
海「ママ?」
夏「少しもらった。お墓入れる前に。」
海「この中?」
夏「うん。」
海「ママちっちゃい。」
夏「引っかけないようにね。」
海「うん。」
夏「うん。」

「海のはじまり」第七話

寝そべって畳を引っかく海ちゃんの元にやって来る夏くん。水李の遺骨を入れたネックレスを、海ちゃんにプレゼントします。臨海学校や受験、心細い時に小さなケースに入れた亡くなったお母さんの遺骨をお守り的に同行させていると言った大和くん。その大和くんの言葉を参考に、海ちゃんに出来ることを考えたんですね。素敵です。ずっと身につけられるネックレスにしたのが、またいいですね。海ちゃんにとって、大切なお守りになると思います。

夏「津野さん葬式の後1回も水李のとこ来なくて。」
弥生「気遣ってたのかな?」
夏「受け入れるのに時間かかっただけって。ずっと近くにいたから。」
弥生「そっか…。そうだよね。」
夏「うらやましかった。何も知らなかったから。よく知ってるから余計に辛いって、うらやましかった。自分が悲しいと思ってることなんて、大したことない気がして。」
弥生「大丈夫だよ。月岡くんには海ちゃんがいるから。」
夏「うん。」

「海のはじまり」第七話

海ちゃん、夏くん、弥生さんの三人で水李のお墓参り。そこで、一人でお墓参りに来ていた津野くんに会います。知らなかったこと、悲しいのに自分より悲しい人がいて悲しめなかったからうらやましかった、という夏くん。たしかに、自分より辛い人がいると思うと自分は辛くなる資格がないって思っちゃって、別の辛さを感じることってありますよね。そして、その気持ちを吐露される弥生さんの辛さよ…弥生さんの月岡くんには海ちゃんがいるから、って、ゆき子さんが私には夏がいるからって言ってたからですよね…。

津野「何でそんな一生懸命っていうか必死なんですか?」
弥生「母親になりたいからです。」
津野「立派ですね。すごいですよね、そういう女の人の子どもへの覚悟っていうか。」
弥生「性別関係あります?何で子どもの話になると途端に父親より母親が期待されるんですか?」
津野「すみません。イメージで物言っただけなので。」
弥生「父性ってあんま使わないけど、母性って皆気軽に使いますよね。無償の愛みたいな。そんな母親ばっかりじゃないのに。」

水李「津野さん何かお薦めあります?」
津野「でも南雲さんが選んだものがいいと思うよ?母性の話だし。」
水李「母性?」
津野「うん。母の日の展示でしょ?」
水李「えっ…何ですか母性って。」
津野「うん?何って?」
水李「無償の愛とかですか?」
津野「うん、言葉にするなら。えっ…ごめん、気に障ったなら。」
水李「子どもを愛せない母親なんていっぱいいるのに、母の性って…それが無償の愛って…。あっ…引いてます?」
津野「そのとおりだなって。」

弥生「美しく一言でまとめたい時に都合のいい言葉なんでしょうね。母性って。すみません。引いてます?」
津野「真逆の人選んでるの何か腹立ってたんですけど、ちょっと似てるんですね。それはそれで腹立ちますね。」
弥生「似てないと思いますけど。」
津野「知らないじゃないですか。知らない人のこと分かんないでしょ。」
弥生「まぁ…。」
津野「昨日月岡さんから電話きて、水李の墓参り来てください、水李も会いたがってると思いますって。あの人水李水李うるさいですよね。」
弥生「はい。」
津野「海ちゃんが連絡先知ってるので、何かあれば連絡ください。」
弥生「いやいや…。」
津野「南雲さんみたいに一人で決めないでください。じゃあ…僕チャリあっちに置いてるんで。」
弥生「はい。」

「海のはじまり」第七話

バスで帰るという海ちゃん夏くんと別れて、駅に一緒に向かう弥生さんと津野くん。母性と無償の愛の話になって、水李と津野くんの回想シーン。弥生さんの言葉に水李を重ね合わせて、似ているところを発見してしまった津野くん。それで弥生さんに心開いたんですかね。あの人水李水李ってうるさいですよね、ってこの二人でしか中々共有できない本音を言っているの、良かったです。何かあれば連絡ください、一人で決めないでくださいっていうのも。今まで夏くんもそうですけど、弥生さんにも心閉ざしていたように見えた津野くんが、一気に弥生さんに心を開いたように見えて、弥生さんに味方が増えた気がして嬉しかったです。過去の水李がそうだったように、近すぎる人よりちょっと距離のある他人の方が頼れたりするものですからね。

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来週は、夏くんが実の父親に会いに行くのですね。俺だって悲しいのに、って本音をぶつけるみたいですね。新しい登場人物が出てきたことによって、また見方が変わりそうでどうなるのか期待です。

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