課題解決とバーベキュー ~緊急事態に酒愛を⑤
薄給の若手社員にとってBBQは、安い会費で酒を飲み、親睦を深められる手軽なイベントだった。休日に屋外飲みというのも、一週間のリセットとして良い気晴らしになる。僕ら同期入社組は割と仲が良く、近隣のキャンプ地や河原で、よくBBQを行っていた。
職場では見ることのない、仲間の「実は…」的な能力が発見できたりもする、おもしろい機会である。キャンプ場の情報に詳しいのとか、謎のコネクションを持っていて車の手配をしてくれるヤツや、意外にも運転が得意な女子。料理が得意で燻製作ったりするのとか、企画しおり制作担当、遊び道具担当、音楽のセレクトが得意なやつなど、結構バランス良く揃っていたりするもんだ。
僕なんかは目だって得意分野が無いので、片づけ班として専念する。だが、BBQに関しては、意外にも地味で低スペック系のほうが、皆に喜ばれたりするのだ。
他に貢献できないタイプの人には、宴が終わってから黙々とゴミ拾いを行うことをおすすめする。
今日もシメの焼きそばを腹に納めた後、ゴミ拾いと片付けをして散会になった。
大自然のフィトンチッドと動物性たんぱく質をたらふく吸収し、リフレッシュした休日明けの月曜朝は気分がよい。
「おはよーございまーす」
恥ずかしいほどウキウキ感が隠せない。
サクライさんが少し怪訝そうな顔つきで僕を捉えると「お??」と返事をしてきた。
「あれ?今朝、朝礼ないんですかね…?」
「お前、昨日BBQ行ったよな?」
「楽しかったですよ。サクライさんも次回参加します?」
「…昨日のメンバーさぁ…全員腹痛で…」
「…???」
火の通りの悪い食材を食べたことが原因で、僕を除くメンバー全員が休みだった。
僕は同じものを、同様に、むしろ多めに食していた。
当然のことだが、暫くの間、僕の、色々な、ありもしない噂が流されていた。
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