楽しいもんは楽しいそりゃそうだ~緊急事態に酒愛を⑦
昭和平成時代には「アルコールハラスメント」なんていう言葉は存在しなかった。社会人になったら飲めなきゃ失格!飲みニケーション重要!飲めば鍛えられる!などという情報リテラシーのない旧時代に育まれたオジサンたちの中には、根拠のない上からの指示によって、インパールさながらの不毛どころか命も危うい日々を過ごした人も少なくないはずだ。そういうおポンチな時代があったのだよ若者よ。社会科の教科書に書いといて欲しいな偉い人。
トクちゃんは酒を飲まない。というか一滴も飲めない体質だ。だが、飲み会には参加したがる。僕らのような人でなしの酔っ払いからしてみると、シラフの人が一緒の宴などは、恥ずかしくて申し訳なくて恐縮しまくりなのだが、トクちゃんはそれを感じさせない人だ。「僕は飲めません」と清々しく宣言するし、酒が苦手なことに劣等感を抱いていない。会費も払ってくれるし、場の雰囲気にもついてきてくれる。飲んだ翌日でも飲み会の時の話題には触れないし、そこで知り得た情報などは口外しないことから、仲間からは全幅の信頼を置かれていた。
一度だけ、なんで飲めないのに来んの?と聞いたことがあるが、それが意外と真面目な答えで驚いた。
「飲めても面白くないヤツもいるじゃん。だったら酒が飲めても飲めなくても関係ないんじゃないかなと思って。酒が飲めないってだけで、人が嫌いな訳ではないから、そこは活かしていけたらいいかなと思って参加している。まあ一緒にいると楽しいからという事が大前提だけどね。」
短所の是正よりも長所の進展を目指している。凄いヤツだと思った。
その証拠にトクちゃんは、宴会の主導権を握るまでになっていた。それまで以上によく喋るようになったし、新しい話題も盛りだくさんで、みんなを楽しませる人物に成長していった。
そして今日の彼のカバンの中には、一対のマラカスが入っていることを僕は知っている。
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