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決して安泰な業界ではない:葬儀業界の今後の課題①

葬儀業界は「今後2040年頃まで死亡人口が増え業界が安泰する」

私が葬儀業界に飛び込んだ2004年の時点で、既にこのような話を葬儀業界内外より、話を聞くことがありました。

確かに日本は高齢人口が増えることで、死亡人口も増加し、望む望まないに関わらず「何らかの形で必ずお葬式の件数は増加をしていきます」

一方葬儀件数は業界全体として増えますが、「お葬式に掛ける費用(葬儀費用・葬儀規模)」が今後特に増えるわけではなく、既存の葬儀社は「今までの葬儀社経営からの脱却」しなければならなくなっています。

今後、葬儀業界全体としては件数は増えるが、葬儀単価は下がるまたは横ばいというのが、現状の葬儀業界です。

葬儀費用が下落していくのは「当たり前」

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葬儀社が特に危惧をしているのは「葬儀単価の下落」です。

当たり前ですが、葬儀社の売上の大半は「葬儀に関する売上」だからです。

葬儀費用は今から20年以上前、平均葬儀単価は200万円を超えていると言われておりました。

しかし現在ではインターネットなどで集客を行う「葬儀相談窓口:葬儀ポータルサイト」が多く存在し、200万円を超えていた昔ながらの葬儀社の価格帯より、明らかに「低価格」で葬儀費用案内を行う時代になりました。

私は2004年に葬儀業界に入り、その中で実際にご遺族と向き合い、葬儀費用についての打ち合わせも行って参りました。

当時は家族葬という考えはまだまだ少なく、葬儀には近所や喪主等の会社関係者が通夜または葬儀に参列をすることは、都市部でも当たり前でしたので、比較的どのご家庭でも、ある程度(200万円近い)の葬儀費用を掛けてくださる見込みがありました。

200万円以上の葬儀費用が当たり前であったこの時代背景は、

①当時、葬儀は「日常生活では考えない」「縁起が悪い」と考える方がまだまだ多かった

②葬儀に関する情報が少なく、情報を得ることが困難だった
→インターネットで開示している葬儀社の情報が少ない。
または葬儀社のホームページが存在しない。直接葬儀社へ電話、訪問を行うしか手段がなかったため、調べるための敷居が高かった背景があります。

③近所の人と「似たような葬儀」を行えば良いとご遺族・ご親戚が考えていた。
→情報が少ない20年以上前は、親戚や近所の方のご不幸より葬儀の情報を得ていた。
→地方や都市部の一部でも、葬儀の事柄でも町会が機能しており、遺族の意思より町会の葬儀の仕方を優先。
→葬儀に対する情報、何をすれば良いのか、何を故人にしてあげたら良いかの「事前の考え」がご遺族が考えていないため「他人が行っていた内容の葬儀に合わせることが多かった」

④故人の子ども・兄弟姉妹の数が多かった。
→故人の子ども・故人の兄弟姉妹の人数が現在と比べ多いため、親族の香典なども集まりやすい状態となり、葬儀費用に充てることが出来た。
※家族葬の方が香典が少ない分、葬儀代の支払いが高くなってしまった事例もあります。
葬儀費用を多く負担をしてくれる「人数」が多かったため、比較的葬儀費用も出しやすかったと考えています。
しかし、現在では子どもは1人や2人、または子どもがいない方も多くなっています。

葬儀代金を負担してくれる子ども・故人の兄弟姉妹の人数が昔より少なくなり、葬儀費用に大きなお金が掛けられないのは必然です。

葬儀社は葬儀単価が下がることを嘆いていても仕方がない

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各葬儀社や葬儀ポータルサイトが、インターネットで葬儀価格を掲載し、葬儀に関する情報を発信することが当たり前になり、消費者(ご遺族・ご家族)は、より葬儀費用や葬儀内容について、関心を持つ時代になりました。

葬儀ポータルサイトの出現は、従来の高すぎた葬儀価格を落ち着かせる要因になったのかもしれません。

しかし葬儀ポータルサイトが存在しなくても、葬儀単価の下落は抑えられなかったと思います。

元々先述の要因が社会情勢の変化で、葬儀に一般家庭で200万円以上の費用を掛けられる家庭が少なくなるだろうということは、十分に予想ができました。

既存葬儀社の傾向

現在「地元で葬儀会館を展開する地元葬儀社」も葬儀価格を積極的に開示し、葬儀価格についてもポータルサイトを運営する葬儀窓口の会社と、価格面で大きな差が無くなってきています。

20年以上前のお葬式から、現在のお葬式事情は
①家族・親戚の構成人数が減り、
②独居の高齢者や長寿の高齢者が増え、
③近所付き合いが従来より少なくなる以上、
「葬儀単価の下落は必然です」

各葬儀社は、何十何百と会館を展開する大手葬儀社から、中小の葬儀社に関係なく、「葬儀費用以外でも収益を得て、経費を抑制する方法」を本気で考えなければならなくなりました。

今後の日本のお葬式はどうなるのか

式場使用料

今後の日本のお葬式は、社会構造に合わせて変化をしていくことになります。これは今に始まったことではなく、葬儀は時代とともに変化をしてきました。

家族葬・火葬のみの葬儀増加

→日本は世界有数の長寿大国です。しかし、寿命は確かに昔と比べ延びていますが「健康寿命」が延びている訳ではありません。
長寿になるほど「身近な関わる人」が減っていくため、その方のお葬式が起こる際は、基本的には「家族葬などの小規模なお葬式」が更に増えていきます。

また子どもがいない高齢者も増えるため、その場合、親戚のどなたかが葬儀を行ってくれるとは思います。
しかし故人との関係性が薄いため、火葬のみのお葬式が今以上に増えると思われます。

今後も小型の葬儀会館が増える

既に駅前等に大型の葬儀会館を建設する動きは無くなり、家族葬などの小型の葬儀が増えるということは、小規模の葬儀会館を建設していく流れが、トレンドとしてこれからも続きそうです。
特に地方都市を中心にこの流れは更に進んでいくと思われます。
コンビニサイズの葬儀会館が注目されますが、今後はコンビニサイズより「もっと小型の葬儀会館」が増えるのではないでしょうか。

しかし、東京23区や大阪市中心部などの都心部では、葬儀会館を建設できる土地はほぼなく、また不動産価値も高すぎるため、従来通り
「火葬場内にある葬儀場」
「区営の葬儀場(斎場)」
「寺院にある葬儀場(斎場)」などが引き続き利用され、利用者数が集中する形になり、今まで以上に混雑をする状態になると思われます。

葬儀は変わらないとよく言われますが、社会情勢や個々の考えに合わせて、葬儀の在り方も当然変わっていくものであると、私は思います。


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