髪を切る
チビコがアルパカ模様の赤いセーターとピンクのもこもこショートパンツと、そしてピンクの水中メガネでイカしたオシャレしている朝(笑)
「ママちゃん、そろそろ髪を切るんじゃないの?」
と言われる。
「あっ、そうなのよ。もっさりして来たからお願いしていい?」
今年の春からずっと、私の髪はチビコ氏が担当してくれているのである。『チビちゃんにも切らせて〜っ!』と身悶えして迫って来たのが始まりだ。ちょっと怖かったんだけれども、まあ私の髪なんて誰も見てないし、異様に穴が空くほど見てるのはこのオチビただ1人だもんな(笑)と思い、それにこういうのはもう絶っ対っに、切りたいわけだから!
ここを切ってね、と私が毛束を持つ。わかった、と集中するオチビの魂が迫って来る。
ジョキッ、ザリザリッッッジョキッジョキ!
耳元で聞いた事の無いすんごい音。怖えぇ〜っ。スリルあり過ぎ!
こんなむちゃくちゃなのに、私はチビコに切ってもらったボブヘアが人生で初めて心からしっくり来たんだから、運命ってこういうものなんだな。と思わずにいられなかった。
何かの系統に当てはめられるんじゃなくて、ただ工作のように私の形に切ってくれたのが本当に嬉しかったのだ。
憑き物が落ちるようで、景気づけにもよかった。
「わお!!今回は大胆に行ったね!かっこいい、チビコありがとう。」
今回は内側が刈り上げ風のボブになり、耳まわりがアザラシみたいでちょっとお気に入り。
あら、髪切ったの〜?と外で誰かに言われると
「チビちゃんが切ってあげたよ!」
と胸を張ったオチビがズイズイと出張ってやって来る。
ほんとに〜!?と驚かれ、疑うのかと言わんばかりに睨むオチビに笑いを噛み殺し、
「本当なんです、切ってもらってます〜」
と言うとチビが私の腕をぎゅうぎゅう引っ張り、耳打ちした。
『とってもじょうずな、うでききです、そのうえお金は1円ですが、1円もなくてもいいですよ。早くて、やさしくて、たのしくて、すてきになるんです…って、言って!!』
言えないよぉ!(笑)
刈り上げたとこが冷えるので、モコモコ過ぎて御蔵入りしてた黒いニットベレー帽をひっぱり出した。冬の寒い朝のベランダにポツンと干し、それから一人でニヤニヤと、帽子の内側に小さなポケットを縫い付けた。チビコを驚かすキャンディを入れるためのポケットだ。
先日実家に行った時、いろんなお菓子があったから『帽子ポケット』に入るお菓子あるかな?とあれこれ試していたら、義姉のyちゃんが不思議そうにやって来た。
「いやあw、チビにウケるから帽子の中に飴とか入れてるのよ〜。」
と照れながら言ったら凄く喜んでくれて、しかしいきなり『はっ』と真顔になり、エプロンのポケットに手を突っ込み
『これは?』
って、完璧にジャストサイズの“きんつば”をくれた。電車でチビがどれほど喜んだか、みんなに見せたかったなあ(笑)