本望
お昼をすませ、山の上の駐車場でsちゃんとお茶。お気に入りのグミの木の下は今日もいい風が吹いていた。
極小の木影をめがけて、sちゃんは青くてちっちゃい愛車「ハヤブサ」を頭から突っ込んで駐車する。
2人でドアを思いっきり開け放ち、降りて後部座席のドアも開けに行って、仕上げに真後ろのバックドアを高々と全開にしたら、海から吹いてくる巨大な風がボーンッ!っと車のを通り抜けてヒャッホーッ!!!
シートを下げて足を伸ばす。
天久聖一の「ご自愛くださいTシャツ」を着こなしてるsちゃんは、恋する惑星のフェイウォンの髪をちょっとだけ伸ばしたっていう感じで360°似ている。その耳元に、ルビーが入ったオマーンの金のピアスが揺れているのを見ていると、遠い外国で信じられない位好みのセレクトショップに出会ったみたいにドキドキ・ワクワクしてもっともっと見ていたくなる。
sちゃんが、お友達の美容師さんからもらったという素晴らしい雑誌をたんまり持ってきてくれたので超大喜びし、おのおの雑誌を選び、ペラペラ眺めポツポツお喋り。
なんとなしにページを捲っていたら突然、息が止まって胸が高鳴ったので慌ててページを戻す。
「なんだ。今なにがあった?鼻血が出そうに特等可愛い、胸揺さぶられる、なにか見た。なにかを見たんだけど。」
そう言いながらページを探ると、それは古着の民族ワンピースのようだ。よーく見たが、その服自体が特に好きなわけじゃない。
それでクレジットを読んだら、そのワンピースはフリーダ・カーロの遺品で、写真を撮ったのは石内都さんだ。ということがわかった。
「フリーダかあ。。。。。私、そういえばそっくりさんしか知らなかったわ。。」
としみじみ言ったらsちゃんがカクッとずっこけた(笑)
『愛の精度』
フリーダの遺品の服の衝撃を言葉にしようとしたらものすごく感覚のピントがブレて驚いた。。。精度の高いものを見ると自分の粗悪さがわかって、そこに取り組まざるを得なくなる。大変だぞ、ほんとに直視するか?と、数十秒ごとに自動ロックしてズラされるみたいに。
いや、たった一目でここまで引っ張ってもらえたんだから、大変で本望さ!(笑)
この幸せな小さな車に、凄い精度の愛の破片が届いたような奇跡と、いつかのBAZARとsちゃんと、そして石内都さんとフリーダさんに、とても感謝しました。
「プリプリ」
そんなわけでママが心ここにあらずだった夕方。諦めて1人紙芝居を作っていたチビコがブツブツ言いながらお話を書いていたので、聞き耳を立てた。
「…そして、チビちゃんはママの膝でスヤスヤ、プリプリと
寝て、帰るつもりです。
そして、いえに帰ったら、おいしいものをお腹いっぱい食べ、ふくふくします。」
と言っていたので、キュ〜ンとした。